こちらの文章は先日M&Aでグループ会社となったBeat Holdings Limited社CEO松田元氏によるコラムとなっています。

今後は松田氏と議論を重ねながら仮想通貨に関する見通しについて、定期的に連載していく予定です。また、松田氏はnoteによる解説も行っているので、是非そちらもご覧ください。

はじめに

先日、ぼんやりとネットを眺めておりましたら、仮想通貨(資産)業界に激震が走りかねないニュースが目に飛び込んでまいりました。

現時点では大して注目されていないようですが、状況によっては仮想通貨市場が根底からひっくり返ることも想定されます。

震源地は、ステーブルコインのキング、“テザー社”です。

本稿の読者様は一定以上の仮想通貨知識、興味がお有りの方が多いとは思いますが、一部、仮想通貨にそこまで詳しくない方のために簡単に用語を解説します。

・ステーブルコイン・・・その名の通り、ステーブル(安定的)なコイン。ボラティリティ(価格変動)のないコインを総称してこう呼ぶ。ペッグ通貨と呼ばれることもある。(1)法定通貨担保型、(2)仮想通貨担保型、(3)無担保型、の三種類がある。
・テザー社・・・ステーブルコインの中で最も有名と言われる、USDTを発行する会社。
・USDT・・・USドルとペアになった、法定通貨担保型のステーブルコイン。極端なボラティリティを嫌う投資家に愛用されるコイン。仮想通貨を法定通貨に大規模両替する際、為替リスクをヘッジするための通貨として使われることが多い。

震源地、テザー社

man in black jacket and blue denim jeans standing in front of bonfire

今回のニュースは、ステーブルコイン界隈で著名なUSDTの発行元であるテザー社に対し、“NY裁判所が財務記録提出命令を出した”というものです。

財務記録命令とは、USDTの担保とされてきた法定通貨(USドル)を、本当にテザー社が保有しているのか、確認するための命令です。

言うまでもなくテザー社の発行するUSDTの価値基準は、その保有するUSドルに連動します。

例えば1USDの保有に対して10トークンを発行できるとすれば、1トークンの価値は0.1USD(約10円)相当で安定します。

石、塔、ケアン、積み上げ石、水、川

仮想通貨のボラティリティがどれだけ激しくなろうとも、USドルの市場価格が極端に変動さえしない限り、USDTはその言葉通り非常に安定したステーブルコインとして取り扱われることになります。

USDTの詳しい発行プロセスは存じ上げませんが、当然発行にあたっては、保有するUSドルの残高と発行時点のトークン数量をバランスさせながら手続きを進めるはずです。

その前提に立つと、現在流通しているUSDTの時価総額の一定割合に相当するUSドルをテザー社が持っていないとおかしい話になります。

なお、現在のUSDTの時価総額ランキングはイーサリアムに迫る世界三位をつけており、その額なんと、“140億ドル(約1.5兆円)”です。

テザー社疑惑

税金、脱税、警察、手錠、詐欺

“テザーが本当にUSドルを持っているのか疑惑”については、2018年頃から、各方面より長らく指摘をされてきました。

中には、テザー社と経営陣がかぶるBitfinexとあわせて、ビットコインの価格操作まで行っているのではないかとの疑惑まで出たのですが、テザー社側は奥歯に物が挟まるような反駁するにとどまっており、ついぞその疑惑が晴れることはありませんでした。

それが今回、NY裁判所から正式に財務記録命令が出たわけです。

architectural photography of trial court interior view

司直の手が、いよいよブラックボックス化されてきたUSDTに迫りつつあります。

万が一にも、テザー社が社会の許容範囲外の割合しかUSドルを保有していなかったら、ステーブルコインの市場は陥落する可能性があります。

勿論、その影響はビットコインにとっても甚大であり、一時的にショック安的な動きになる可能性もありますので注視が必要です。

小職が敬愛する米国インテリジェンスの識者によると、米国の地方裁判所は“不正な司法の温床”とも言われるそうで、NY裁判所はその最たる存在であり、司直として信用に値するレベルにない行政機関だそうです。

とはいえ、一応は法の番人であるNY裁判所から正式に財務記録提出命令が出たわけですから、ここでテザー社がどのような対応をするのか実に興味深く見守っております。

仮想通貨市場に大きなダメージが

ハルマゲドン、災害、破壊、戦争、放棄

冷静に考えても、USDT流通時価総額が1.5兆円規模になっているとすれば、100%の割合でペッグしているとして1.5兆円相当のUSドル、50%の割合(1:2の割合での発行)だとしても7,500億円相当のUSドルを保有していないとおかしいわけです。

つまり、テザー社という一企業がそれだけの財産を保有していれば、如何なる金融機関であれ、残高証明などで協力をしてくれそうな気がします。

ですが、上述したご紹介記事にある通り、提携金融機関の名前が全て黒塗りにされており、その対応方針がどうも解せません。

aerial photography of buildings

ケイマンやBVIなどタックスヘイブンの法人名義で資産を保有しているのかもしれませんが、資産証明をして得をすることはあれ、損をすることはありません。

金融機関名義を開かせない何らかの事情があるのか、あるいは本当に資産を保有していないのか。

後者だとしたら暗号通貨史上に残る一大詐欺事件になりかねず、仮想通貨市場への影響も想像を超える甚大なレベルになってしまいます。

テザー社ビジネスモデル考察

person wearing suit reading business newspaper

これは一部妄想も入った推察ですが、テザー社とBitfinexがニコイチ(二社で一つ)だとすると、恐らくテザー社のビジネスモデルは、以下のようなものであろうと思慮します。

・テザー社・・・USDTの発行体
・Bitfinex・・・USDTの販売体
・収益ポイント・・・USDTをBTCに両替することで発生するキャピタルゲイン(テザー社の利益)、為替手数料(Bitfinex社の利益)、預かり残高の上昇(Bitfinex社の利益)

テザー社が1億円相当USドルを持っていたとして、1億円相当のUSDTを発行したとします。

USDTはBitfinexを通じて市場に流れていきますので、その対価として顧客からBTC・ETH、その他有名アルトコイン(以下、メジャーコイン)がBitfinexに流入します。

テザー社が発行したUSDTがどのような取引名目でBitfinexに提供されているのかは不明ですが、仮に一般的な相対取引でBitfinexがメジャーコインを供与しテザー社からUSDTを受け取っていたとすると、取引フローは以下のとおりです。

1.テザー社は、銀行に1億円を預金する
2.テザー社は、保有する預金残高の範囲内で、USDTを発行する
3.テザー社は、Bitfinexとメジャーコイン決済による相対取引を契約する
4.Bitfinexはテザー社から仕入れた1億円相当のUSDTを市場に流す
5.Bitfinexは流通させたUSDTの対価として1億円相当のメジャーコインを手に入れる
6.Bitfinexはテザー社に対して、メジャーコインを支払い相対取引契約を完結させる

一連の取引は、大きく言えば、USD⇔BTC含むメジャーコインの両替に過ぎず、法定通貨を介在させないという目的からステーブルコインを扱っているに過ぎません。

キャッシュポイントは、前述の通り、メジャーコインのキャピタルゲインと取引手数料であり、この取引だけを見れば対して儲かるようにも思えません。

ですが、この取引フローの1.及び2.、つまりステーブルコイン発行の前提となる、法定通貨担保の存在が実はなかった、となると、テザー社とBitfinexは、濡れ手に粟で、BTCを手に入れ続けることができてしまいます。

USDTを刷れば刷るほどその対価としてBitfinexを経由しBTCが手に入るわけですから、笑いが止まらない商売になります。

幸せです、男、大人、都市、顔、男、アウトドア、人

この疑惑は、前述の通り数年前から多方面で指摘を受けているにも関わらず、精細に欠くテザー社の回答が長らく解せませんでした。

例えば担保として保管する法定通貨の保有割合を変えるならそのとおりに開示すればいいし、理由も明示すればいい。

しかし実際は、急にウェブサイトの表記を削除したりと、極めて稚拙かつ幼稚な対応しかしておりません。

これは完全に邪推ですが、もしかしたら、テザー社のビジネスモデルは、以下のような手順で成立している可能性があります。

1.テザー社は、銀行に1億円を預金する、ということにしておく
2.テザー社は、保有する預金残高の範囲内でUSDTを発行する、ということにしておく
3.テザー社は、Bitfinexとメジャーコイン決済による相対取引を契約する
4.Bitfinexはテザー社から仕入れた1億円相当のUSDTを市場に流す
5.Bitfinexは流通させたUSDTの対価として1億円相当のメジャーコインを手に入れる
6.Bitfinexはテザー社に対して、メジャーコインを支払い相対取引契約を完結させる
7.テザー社は、詐欺にならないよう、市場から吸収したUSDT1億円相当の対価として受け取ったメジャーコインのうち5,000万円相当をUSドルに両替し、1.で明示した銀行口座に送金する

このモデルであれば、空気からUSDTを発行し、Bitfinexを通じてBTCを始めとするメジャーコインを無限に調達することができます。

さらには、最低限の割合でUSドルを保有していれば、為替リスクをヘッジするために第三者に預託している、などの言い訳もいくらでもできます。

但し、銀行口座の取引履歴を全て追跡されてしまうと、USDT発行時点で発行価値相当のUSドルを持っていないことがバレてしまいます。

以上の理由から、金融機関も全て匿名にしており、取引履歴・明細の提出を固く拒否していたのではないでしょうか。

woman in red shirt reading book

この推察が正しいとすれば、テザー社の不可解な対応方針も納得がいきますし、USDTの裏付け資産がないという長年の疑惑に比して高い時価総額が維持されている信用度数にも納得がいきます。

つまり、USDTの裏付け資産は、あったのです。発行時点において存在しなかっただけで。

トランプ大統領とテザー社

トランプ、私たちの大統領、ワックスのダミー

ところで、USDTの裏付け資産の額は、1兆円前後の話になります。数億数十億円の話ではありません。

常識的に考えて、テザー社やBitfinexによほどの後ろ盾となる存在がいない限り、これだけの規模のビッグディールはできません。

長年疑問を抱かれつつも具体的なアクションはなかったUSDTが、この次期、このタイミングで、NY裁判所から財産記録命令が出されたとすると、テザー社やBitfinexの後ろ盾は、まさかの天才トランプ大統領の可能性すらあります(NY裁判所はトランプ大統領の天敵です)。

アメリカの国旗のクローズアップ写真

トランプ大統領がかねてから仮想通貨に造詣が深く、ビットコインの可能性にポジティブであることは一部の業界関係者の間で有名です。

この、テザー社→Bitfinexの取引フローによる壮大な“USドル⇔ビットコインのスワップスキーム”が、トランプ大統領によるFRB対策だとすれば、陰謀論好きな小職としては胸熱すぎて感動してしまいます。

安倍首相の悲願が憲法改正であったように、トランプ大統領の悲願はUSドルを米国民に取り戻すことです。

故にFRB理事会に対しては、これまでのどの大統領よりも厳しく、冷徹に接しています。

やりすぎて暗殺されてしまわないか見ているこちらがドキドキしてしまいますが、米国政府最大の債権者(FRB)に戦うトランプ大統領のその姿は、米国民の支持を集めること請け合いです。

いずれにせよ、水面下で、法定通貨と暗号通貨の大規模な戦は開戦していて、ここに中国側のデジタル人民元やドル建てのデジタル通貨、Libraが参戦してくるわけですから、状況は戦国時代さながら、これだけのパラダイムシフトでお仕事ができる経験は人類史でも貴重極まりなく、今の環境が有り難くて仕方がありません。

最後に

先日ニュースリリースでもご紹介致しましたが、ご仲介者のお力添えもあって、当社の子会社であるコインパートナーでも、仮想通貨対応型デビットカードを発行させて頂くことになりました。

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コインパートナーで発行する暗号型クーポンFAVNを保有していれば、よりハイステイタスなカードを所有する事ができます。

最高峰はブラックカードを予定しています。

Favo tokenを沢山手に入れて頂ければ、Visa対応店舗ならどこでも使えるデビッドカードを保有する事ができます。

初期デザインは上記画像のような形になっていますが、最終的には以下のようなデザインにしようと交渉中です。

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是非これを機会にコインパートナー、コインラーニング(サロン)への登録をお願いできればと存じます。

テザー社の例を取るまでもなく、仮想通貨の事業をしていても、法定通貨の決済領域とは何らかの接点を持つことは大切です。

本来的には仮想通貨だけで完結するエコシステムが望ましいわけですし、その方が店舗もユーザーも手数料を払う必要がないわけですが、浸透に時間がかかる以上は、現存の決済会社様ともしっかりと連携していく必要があります。

ビート社としては引き続き最先端のブロックチェーン技術を徹底的に探求するとともに、世界的にも稀有なユースケースを皆様にご提示し、仮想通貨の革命性をご体験頂けるよう、引き続き尽力をして参ります。

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【連載コラム第9弾】 仮想通貨は嵐の前の異様な静けさに包まれています。 秋のビックイベントに向けて、今は身を潜める時期なのか… 今後も松田氏によるオリジナルコンテンツを配信予定です! 松田氏(@beat9399_crypt)のフォローもお願いします!

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出典:松田元氏の第468回note

松田氏について

Beat holdings limited(9399)CEO。早稲田大学商学部卒。実業家としての経験を活かし、複数の上場企業における投資銀行/バリューアップ業務を豊富に経験。2016年衆議院予算委員会における中央公聴会にて、最年少公述人として日銀の金融政策に関する意見を述べる。