現在(2021年8月24日)、ビットコインの価格は5万ドルで価格を推移させるなど、4月付近の盛り上がりからすると暗号資産の価格はだいぶ落ち着いているように感じます。そんな暗号資産は今後、再び輝きを取り戻すことはあるのでしょうか?

数多く存在する日本の暗号資産取引所の中でも、第一線で活躍し、ローラを広告塔に起用していることでお馴染みのDMM Bitcoinの代表を務める田口社長に暗号資産の価格が上昇するシナリオについて語ってもらいました。

田口社長から、暗号資産の本質的な価値や、現状の暗号資産の評価も含めて総合的に暗号資産の今後と可能性について学んでいきましょう!

暗号資産の価値は価格が表示されていることに依拠している

今回は取材をお受けしていただきありがとうございます。
早速なのですが、暗号資産の価値ってどんなところにあると思いますか?

まずは大前提として、FSA(金融庁)のホームページであったり、いろんな会社さんのホームページを見てもらえれば分かるんだけど、暗号資産は法定通貨ではありませんって書いてあるんだよね。
暗号資産は法定通貨ではないって前提で法律はできているんですよ。

確かに書いてありますね。


DMM Bitcoinの公式HPより抜粋

暗号資産を法定通貨だと認めてしまうと、今までの法律体系のすべてのロジックが崩れてしまいます。例えば、法定通貨は強制通用力というのを持っていて、支払いを拒めないという特徴があるけど、価格変動が大きい暗号資産での支払いを拒めないってちょっと現実的じゃないよね。
では、現時点で本質的に暗号資産の価値って何に依拠していると思う?

人々が価値があると考える共同幻想だと思います。

それも正解だと思う。でももっと根本的なところでは、価格が表示されているからだよね。
価格が表示されているっていうのは、その価格で売買ができるってことになる。
つまり、法定通貨との交換が妨げられていないってこと。

なるほど...

これは暗号通貨のいわゆるジレンマなんだけど、暗号資産は時価総額と流動性が大きく拡大し、法定通貨の役割を担っていくという話が一方であるじゃない?

暗号資産が世界の決済手段になるって話ですね。

だけど、暗号資産の価値を支えているのは、法定通貨との交換ができるってところなんだよね。
だから価値の保存ができる。法定通貨と交換ができなくなってしまったら、価格の表示ができなくなってしまうよね。

中国は元ベースでビットコイン価格を表示することができなくなった

もし暗号資産が法定通貨との交換ができなくなってしまったら、本当にみんな暗号資産に対して価値はあるのかと思えるのかな?

ビットコインだけ持っていても、法定通貨に交換することができなければ信じることは難しそうです...

だよね。思えるとしたら本物だけど、大多数の人は価値があると思えないはずだよね。
中国のニュースによって価格が下落したのは、中国は法定通貨との交換をあらゆる面で禁止したから。
今まではOTC取引をなんとなく認めていたけど、今回によって金融機関であったり金融機関のネットワークに対して、暗号資産の流通に関してサービスを提供することは禁止したよね。

禁止しましたね。

これによって中国元を暗号資産に変更する手段がほぼ絶たれたんだよね。
つまり、中国元ベースでビットコインの価格を表示することができなくなったわけよ。

そういうロジックだったんですね。

それがもし、米ドルで同じようなことが起こったら?その時の日本政府の対応は?
ビットコインの価格がまだまだ上昇するって言えるんですかね?

言えないと思います...

と、言いましたが、実は、法定通貨と暗号資産を交換することを通じて不正な取引が行われないよう定めているグローバルな機関があるんです。
FATF(金融活動作業部会)っていうんだけど、だからこそ、FATFのルールには従う必要があるんですよね。

暗号資産は価値の保存手段の1つに

新型コロナウイルスの影響でCash is king(キャッシュは王様)っていう状態ができて、昨年の2,3月にぶわーっと全アセットクラスが下落したじゃないですか。

ありましたね。ビットコインだけではなく、金融市場全体で大きく下がっていました。


(TradingviewのBTCUSDTチャート4時間足。2020年2,3月付近。ビットコインも大きな下落を記録している)

これに対して、価格回復が一番早かったのは実を言うと暗号資産なんです。
株よりも早くて、金とかのコモディティよりも上にアウトパフォーマンスするという形で価格が上昇したっていう側面があるんですよね。

暗号資産が一番最初に価格を復帰させた!?

暗号資産が他のアセットクラスに先んじて価格を戻したってことは、これまで懐疑的だった人も含めて暗号資産は価値の保存手段として一定の役割が担えるっていう認知はある程度広まったんじゃないかなっては僕たちは把握しています。

価値の保存手段としてビットコインが一躍注目を浴びるようになったんですね。

これはつまり、株や不動産、債券や金などのコモディティなど既存のアセットクラスの中に暗号資産が新たに追加されるってことなんだよね。
価値を保存していく先として、どこが有望かを判断する選択肢の一つに暗号資産は加えられたかなって思うし、暗号資産がアセットクラスであるっていう地位は相当程度固まったんじゃないかなって僕は見ています。

FATFのルールに従うと市場の正常化に近づく

さらに、今後暗号資産の価値を高めていくには、機関投資家が参入してくれるかって観点が一番重要なんだよね。

先日も多くのアメリカの企業が暗号資産市場に参入したことで価格が上昇しましたね!

もちろん、暗号資産の利便性であったりユーティリティ性とかも本質的には重要なんだけれども、投資資産という側面で話すのなら、暗号資産を主たる投資手段にしておらず、株とか国債とかコモディティとかを主たる投資対象にしているような機関投資家が少しでもポートフォリオに組み込むって判断をしてもらえるのかが一番重要だね。

機関投資家にとっては少額でも、業界にとっては大きなお金ですよね。

そのためには市場の正常化が絶対に必要だし、FATFの規制にまじめに取り組む必要がある
FATFは国際的なルールをガイドラインで定めていて、各国はそれに従っている状態です。FATFのルールに従っていないと、国際金融ネットワークから外れてしまうんだよね。

FATFのルールが絶対なんですね。

FATFのルールによって、お客さんにとっては今後海外の取引業者に送金ができなくなったりとか、使いにくいと思われる部分もあるかもしれないけど、市場が正常化されないと機関投資家は安心してポートフォリオに暗号資産を組み込むことはできないよね。

今後価格を上昇させていくためには必要なことなんですね。

機関投資家は30年とか50年の単位で投資してくるからさ、国債とかに投資しているお金が流れてくるだけで価格的なインパクトは大きいんだよね。暗号資産の市場規模はせいぜい200兆、今だと100兆ぐらいしかなくて、まだそんなに大きくないからさ。
まじめ腐ってて嫌だなって見えちゃうかもしれないけど、今回の価格上昇もアメリカの機関投資家が投資したんだよってことをしっかり理解してもらって、機関投資家のお金をいかに暗号資産に流していけるかを意識していく一年になるんじゃないかなって思います。

暗号資産は価値の保存手段として認められつつあるのだから、FATFのルールをきちんと守って機関投資家からも投資してもらえるようにしよう

田口社長の主張は上記の言葉に尽きると思います。

僕も今回の対談を通じて、FATFのルールを理解できていない部分があると感じたので、これを機に正しく理解しようと思います!

そんな、僕と同じように法律面を通じてFATFのルールをしっかり勉強したいと思った方に向けて、第2弾の記事では「FATFのルールを基にした暗号資産の税制上の仕組みと課題」について田口社長に解説してもらっています!

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