SFD(Swap For Difference)という言葉を聞いたことがありますか?
ビットコインFXではよく耳にしますが、ルールが変更されたこともあり複雑で分かりにくいという声も多いようです。
しかし、SFDの仕組みを知らないと大損してしまうことがあります。
逆にSFDを正しく理解すれば、うまく利用して儲けることも可能です。
この記事では、一見難しいSFDの仕組みからルール変更に至る流れまで徹底解説します!
「SFD」は、ビットコイン現物とFXの価格乖離を抑制するための制度です。
暗号資産(仮想通貨)の国内取引所ビットフライヤーでFX取引のできるツール「ビットフライヤーライトニング」内で2018年2月に導入されました。
ビットフライヤーライトニングはFXツールの「Lightning FX」と先物取引の「Futures」に分かれますが、今回SFDが導入されたのは「Lightning FX」です。
SFDの仕組みを理解する前に、この制度が導入された経緯をたどってみましょう。
ビットフライヤーでビットコインを取引するには現物 (BTC/JPY)とFX(BTC-FX/JPY)の2つの方法があります。
(現物とFXの違いは分かるよ!という方は読み飛ばしていただいて大丈夫です。)
現物取引では、文字通りビットコインを実際に購入・販売します。
よって持っている資金の範囲内でしか購入できず、持っているビットコインの分しか売ることはできません。
FXは信用取引(証拠金取引)の一形態であり、第三者から資金を借りて取引を行います。
FXの大きな特徴としてはレバレッジがあり、少ない資本金で大きな取引ができます。
また現物取引と大きく異なる点としては、売りから入ることができます。
現物取引ではまずビットコインを買わなくてはなりませんが、FXでは先にビットコインを借りてそれを売却し、後で買い戻すということができます。
これらのことからFXではチャートの動きが現物取引よりも大きくなる傾向があり、ハイリスクハイリターンの取引方法です。
さて、本題に戻ります。
2018年12月17日、ビットフライヤーライトニングでは現物価格219万円に対してFX価格が285万円となりました。
これは価格乖離30.0%という異常値で、相場が不安定になる危険性がきわめて高い状態になりました。
これに対しビットフライヤーは価格乖離を抑制するための制度導入を検討することを発表し、同月27日には詳細が発表されました。
要するに、価格の乖離を拡大させる取引には罰金を課して、縮小させる取引にはボーナスをあげるよ!ということです。
この仕組みについては次の項目で詳しく解説していきます。
このシステムによって現物とFXの価格乖離を縮小させることがビットフライヤーの狙いでした。
制度導入を検討するという発表から約1ヶ月が経過した2018年1月16日、ビットフライヤーはSFD(Swap For Difference)を導入すると発表しました。
【重要】Lightning 現物(BTC/JPY)と Lightning FX の価格乖離の縮小を目的とした「SFD」導入のお知らせ
SFDは、価格乖離を拡大する方向に取引を行った場合は罰金のような形で徴収され、縮小する方向に取引を行うとボーナスとして付与されます。
また、SFDの計算方法は以下のようになります。
SFD(日本円) = 取引数量 × Lightning FX 取引価格 × SFD比率
(ここからは旧ルールの説明になるので、新ルールだけ知りたいという方は読み飛ばしていただいて大丈夫です。)
SFD比率は価格乖離により次のように決定されます。
価格乖離 | SFD比率 |
---|---|
10%以上15%未満 | 0.5% |
15%以上20%未満 | 1.0% |
20%以上 | 3.0% |
例えば、現物価格が80万円でFX価格が92万円のとき、価格乖離は15%です。
このときFXにおいてAさんが92万円で1BTCを買い、Bさんが同じく92万円で1BTCを売る場合について考えます。
価格乖離は15%なのでSFD比率は1.0%となり、これらの数値を先ほどの計算式に当てはめると
SFD = 1BTC × 92万円 × 1.0% = 9200円となります。
この場合、乖離を縮小したい=FX価格を下げたいということなので、買う=価格を上げる=乖離を拡大する方向の取引を行ったAさんからは罰金として9200円のSFDが徴収され、売る=価格を下げる=乖離を縮小する方向の取引を行ったBさんにはボーナスとして9200円のSFDが付与されます。
この仕組みにより、Lightning FXにおける現物とFXの価格乖離は縮小し、相場は安定するはずでした。
実際に導入から1ヶ月間は乖離率が10%以内に収まっており、SFDシステムは機能していたようです。
しかし2018年2月18日の朝7時ごろ、SFDのシステムを揺るがす事件が起こります。
2018年2月18日の朝7時ごろ、深夜から早朝にかけて9.5%だった乖離率が突然の価格急上昇により10%を突破しました。
SFDが当初の目的通りに機能すれば、買い=ショートすれば乖離を縮小する方向の取引となりSFDが付与されるため、ボーナス狙いで売りが増え、価格は下落するはずでした。
しかしSFDが徴収されるにも関わらず大口による買いが継続し、価格の上昇は止まりませんでした。
さらにSFDシステムの隙をついた売買により、乖離率も拡大を続けました。
そのメカニズムは次のようになっています。
その後価格が上昇して乖離率が10%を越えた時点で売れば、乖離率を縮小する方向の取引となるためボーナスが与えられ、取引利益とSFD付与で二重に美味しい思いができます。
しかしその後価格が上昇しかつ乖離率が10%以上であるときに売れば、今度は乖離率を縮小する方向の取引となるため0.5%のボーナスが与えられます。
このとき買ったとき徴収されたSFDと売ったときに得たSFDが相殺されプラマイゼロになりますが、取引利益があるためトータルではプラスになります。
また、売った時点で乖離率が15%以上であればSFD比率は1.0%に上がるため(前述のSFD比率の表参照)、買うときに徴収されたSFDを上回るボーナスを回収できさらに利益はプラスになります。
以上より、乖離率10%未満の場合も10%以上の場合もとりあえず買い→価格上昇すれば売りを繰り返せば利益が出ることが判明してしまい、ビットコインのFX価格は1時間で約10万円も上昇し、現物価格との乖離率は一時15%以上を記録するという異常事態に陥ってしまいました。
逆にショート(売り)をかけていた人たちは価格上昇とSFDで二重のダメージを受け、ロスカットが続出するという大荒れの相場となりました。
※ロスカット…大きな損失出た場合、それ以上損失が拡大しないように強制的に決済する(取引を終了させる)制度
この異常事態に対しネット上ではSFDシステムへの不満・非難の声が続出しました。
上げ相場でSFDが発動した場合、先ほど説明した「隙」を利用して儲けることが可能なので、SFDを発動させるため大口が価格操作をするようになったのです。
乖離率が10%や15%を越えるとSFD比率が上がるため、その付近で乖離が拡大する=価格が上がる方向に取引をするとSFD分まで儲けることができます。
つまり9%や14%付近に達したとき、10%や15%を目指して乖離を拡大させる買い注文が多く入るため、SFD導入前よりも荒れた相場になってしまった、ということです。
このようにSFD制度がLightning FXの相場、さらにはビットコイン全体の相場を大きく動かすようになったため、ビットフライヤーの動向が注目されるようになりました。
大荒れの相場やネット上での不評の声を受け、ビットフライヤーは2018年2月27日にSFD制度を一部変更することを発表しました。
一連のSFDに関するビットフライヤーの発表はネット上で「SFD砲」(乖離砲)と揶揄され、ツイート後に相場が激しく動くなど大きな影響を与えました。
(ちなみにビットフライヤーCEOの加納裕三氏のTwitterも「加納砲」と呼ばれ、投資家たちに注目されています。)
2018年3月17日、SFD制度の一部改定が発表されました。
変更点は以下のようになりました。赤色が従来のルールと異なる部分です。
約定の種類 | 新規注文 | 決済注文 |
---|---|---|
価格乖離を拡大する方向 | SFD徴収 | SFD徴収 |
価格乖離を縮小する方向 | SFD付与 | SFDなし |
価格乖離 | SFD比率 |
---|---|
5%以上10%未満 | なし→0.25% |
10%以上15%未満 | 0.50% |
15%以上20%未満 | 1,00% |
20%以上 | 3.00%→2.00% |
従来のルールでは0~10%の乖離率ではSFDは適用されませんでしたが、変更後は5%以上 10%未満でもSFDが適用されます。
新規注文・決済注文という言葉が出てきましたが、これはFXにおける用語です。
FXでは買いと売りどちらからでも取引を始めることができるため、取引の「始め」と「終わり」を明確にしておく必要があります。
買いから始めた場合は買いが新規注文、売りが決済注文として扱われます。逆に売りから始めた場合は売りが新規注文、買いが決済注文となります。
従来のルールでは新規注文でも決済注文でもSFDが適用されていましたが、今回の変更では価格乖離を縮小する場合、決済注文でのSFDボーナスが付与されなくなりました。
これにより、従来のルールの「隙」をついて儲ける方法(=SFDボーナスを目的とした意図的な買い、価格操作)が使えなくなりました。
ビットコイン現物とFXの価格乖離を縮小させるために導入されたSFDですが、逆に相場に波乱を巻き起こす結果となってしまいました。
今後もルール変更が発表される可能性があり、ビットフライヤーのみならず他の取引所の相場にも影響を与えうるので、しばらくはビットフライヤー公式の発表に注目が必要です。