マウントゴックスとは、2009年に当初トレーディングカード(マジック・ザ・ギャザリング)の交換所として設立されたが(社名はMagic The Gatheringの頭文字MTGに由来)、2010年に暗号資産(仮想通貨)事業に転換して以来、一時は世界で取引量1位を誇った日本のビットコイン交換所です。
交換所なので暗号資産(仮想通貨)同士の取引を行っていたわけではありませんが、ビットコインを円・ドル・ユーロで購入でき、世界中に12万7千人のユーザーを持っていました。
2013年4月には世界のビットコイン取引量の70%を扱っていたこの交換所ですが、2014年には破産に至っています。マウントゴックスになにがあったのか、そしてその影響がどのようなものであったか見ていきましょう。
2014年2月7日、マウントゴックスはビットコインの払い戻しを停止し、のちにマウントゴックスが所持していた顧客のビットコイン75万BTC(当時の価格で470億円相当)と預り金28億円、自社のビットコイン10万BTCが消失したことが判明しました。
このビットコイン消失事件がいわゆる「マウントゴックス事件」です。顧客への払い戻しのために巨額の負債におわれた結果、2014年2月にマウントゴックスは東京地裁に民事再生の申請をしました。しかし、申請は棄却され2014年4月から破産手続きが始まり、翌年には親会社のティバンも破産しています。
ビットコインの払い戻しは2013年ごろから遅延があったようで、その頃からビットコインが盗まれていることに気が付いていたにもかかわらず、マウントゴックスは操業を続けていたのではないかと懸念されています。CEOのマルク・カルプレスは2014年2月23日に辞任していたことものちにわかっています。
この事件をきっかけにあるべき資産がなくなることを「(マウント)ゴックスする」などと表現するまでになりました。
では、いったいなぜこんなことが起きてしまったのでしょうか?
当初この消失事件の原因は、ハッカーによりマウントゴックス内の顧客ウォレットの残高が書き換えられ、本来より多くの払い戻しを行っていたことにあるとされていましたが、次第に元CEOのマルク・カルプレスにあるとの説が有力になってきました。
たしかに外部からのハッキングにより一部は流出したようですが、大部分は外部攻撃の痕跡がなく内部犯行である可能性が高く、さらに内部者の話によればそれが可能だったのはカルプレスだけだったそうです。
カルプレスはマウントゴックス内の自分のウォレットの残高を書き換え会社の資金を横領したとみられていて、2014年8月に逮捕されました。本人は容疑を否認しています。
カルプレスが無罪を主張する中、2017年7月26日に真犯人とされるアレクサンダー・ヴィニクがギリシャで逮捕されました。
マウントゴックスで盗まれたビットコインの大多数が世界初の取引所とされているブルガリアの取引所BTC-eにあるようで、逮捕の数日前からBTC-eがシステムを中止していることもありヴィニクはBTC-eの代表ではないかと噂されています。
ヴィニクはマウントゴックスの管理ウォレットの秘密鍵をハッキングにより盗み出し自分のウォレットに送金を行った模様です。いまだ捜査中であり犯人が確定したわけではないですがヴィニクがなにかしら関係を持っているのは間違いないでしょう。
社長のマルク・カルプレスは自分の口座の残高を改ざんしたとして2015年8月11日に私電磁的記録不正作出・同供用の容疑で逮捕されました。2015年9月には横領罪などで起訴をされ、2017年7月11日には東京地裁で初公判が行われました。
カルプレスは顧客に対して迷惑をかけたことを謝罪している一方で、ビットコインはハッカーに盗まれたものとして無罪を主張しています。判決はまだ出ておらず今後も裁判が開かれる予定ですが、ヴィニクの逮捕が裁判に影響を与えてくる可能性もあります。カルプレスはヴィニクの逮捕が自分の無罪に近づくとして安堵をみせています。
MTGOXのビットコイン消失事件の真犯人は昨日ギリシャで逮捕。やっとこの事件の事実が解明されます。
— Mark Karpeles (@MagicalTux) July 26, 2017
また、逮捕後カルプレスが激やせしたことも大きな話題となっています。
2014年の逮捕時のマルク・カルプレス
2017年初公判時のマルク・カルプレス
Source: らくがき速報
確かにめちゃくちゃ痩せています。ネットでは「イケメンになった」などと騒ぐ声も多いです。
さらに、カルプレスが今後ICOを行いマウントゴックスを再建する旨を自身のブログで発表しています。
2014年7月23日に第一回債権者集会が開かれてから半年に一度ほどのペースで開かれ2017年12月6日現在、通算9回の債権者集会が開かれています。債権者集会の詳しい資料はMtGoxのホームページから見ることができます。
裁判と債権者集会の主な論点は返金額です。マウントゴックスが東京地裁に提出した資料によると、マウントゴックスに残ってる資金は10億円と20万BTCだそうで、当時に比べBTCの価格が大きく上がっているため2017年12月現在で2400憶円ほどの資産となります!
負債額約500億を余裕で返金できる状況になり「満額返金」が行われることが予想されています。このように倒産した企業の資産が高騰することは先例になく裁判所や専門家も対応に困っているようです。この状況に債権者の一部は現金ではなくビットコインによる返金を望んでいますが、今後どのように返金が行われるかは未定です。
マウントゴックス事件は暗号資産(仮想通貨)の信頼性について大きな不安を与えました。
2013年の終わりごろから世界は第一次ビットコインバブルに入っていて11月30日には一時$1149を記録しました。2014年2月のマウントゴックス事件をきっかけに価格は下がり続け4月には$381まで下がりました。そこからは2016年まで伸び悩みを経験することになります。
マウントゴックス事件以後、暗号資産(仮想通貨)利用者の資産保護を目的に2017年4月1日に「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」、通称暗号資産(仮想通貨)法が施行されました。
この法律は既存の資金決済法をもとにしており、暗号資産(仮想通貨)の定義や暗号資産(仮想通貨)交換所の定義・規制がされています。具体的には、交換所は1000万以上の資金を必要としたり、監査や顧客資金の分別管理の義務化がなされています。規制が厳しくなることによってマウントゴックス事件のような惨事を予防し、被害を最小限に留めることができるでしょう!
よくマウントゴックス事件はブロックチェーン上のバグを悪用されたものだという勘違いがありますが、そんなことはありません!
マウントゴックス事件は資産の管理の仕方に問題があったもので、ビットコインのシステム自体にはなにも問題はなかったのです。この事件をきっかけに暗号資産(仮想通貨)は安全性が低いのではないかと誤解を生んだため日本では暗号資産(仮想通貨)の普及が遅れてしまっています。
資産をどこに預けるか、どのように管理するかを利用者が考えればこのような事件は防げたかもしれません。コインパートナーでは自分の資産はウォレットで管理することをお勧めします。
「ビットコインを運用したいけど、ウォレットってどれを選べばいいんだろう・・・」そんな悩みを解決するため、ビットコインの保管・運用に必要なウォレットをコインパートナーが徹底的に比較・紹介します!
いかがでしょうか?マウントゴックス事件は暗号資産(仮想通貨)史に残る大事件であり、いまだにその影響は残っています。日本で暗号資産(仮想通貨)のイメージが悪く普及が進んでいないのもそのせいだという説もあります。
このような被害にあわないためにも漠然と流行に乗り暗号資産(仮想通貨)を買うのではなく暗号資産(仮想通貨)について正しく理解をしメリットやリスクについてしっかり考えることが何よりも大事です。
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著者: CoinPartner 編集部 CoinPartner