EU諸国が仮想通貨取引所の規制に合意

2017年12月15日に欧州連合(EU)がマネーロンダリングとテロリストへの資金流入を防ぐためビットコインやその他の暗号資産(仮想通貨)取引所の規制を行うことを決定しました。EUでは2016年ごろから暗号資産(仮想通貨)の匿名性が問題視されてましたが、一部の国の賛同が得られず一年越しの合意となりました。施行は一年半を目安とされています。

この記事ではヨーロッパでの暗号資産(仮想通貨)の現状と、規制の内容・予想される影響について解説していきます!


ヨーロッパの仮想通貨事情

日常に暗号資産(仮想通貨)が普及

ヨーロッパでは北欧を中心に現金支払いを受け付けていない店が存在するほど電子決済が以前から浸透しています。(スウェーデンでは国が子供にデビットカードを発行し元金使用率5%。また硬貨の種類が多く財布が重いためという説もあります。)その流れからヨーロッパでは暗号資産(仮想通貨)がとても受け入れやすいものであったうえ、2013年のキプロス問題や2015年のギリシャの経済破たんを経て暗号資産(仮想通貨)に資産を避難する機運が高まっています。VISA対応の暗号資産(仮想通貨)デビットカードを現状で使える唯一の地域がヨーロッパです。

暗号資産(仮想通貨)最先進国オーストリア

オーストリアは暗号資産(仮想通貨)が最も生活に浸透していることで有名です。2016年から所得税としてビットコインへの課税を始めたほか、首都のウィーンでは世界で初めて暗号資産(仮想通貨)の銀行が誕生し、2017年7月から1800以上の郵便局でビットコインやイーサリアム・ライトコイン・DASHなどの暗号資産(仮想通貨)が販売されています

金融大国スイス

永世中立国であるスイスは法定通貨に関しても匿名性を維持していることから多くの資金が集まる「金融センター」として知られています。一部の自治体で納税をビットコインで行えるほか、多くのビットコインのATMが設置され、スイスの国鉄(SBB)の券売機でビットコインが買える先進的な取り組みをしています。スイスではビットコインATMの管理人に対して資格を必要とする規制はありますが、スイス政府の発表によれば「暗号資産(仮想通貨)は既存のシステムで対応可能な範囲のものであり即座な法規制は必要ない」とされているため大規模な法規制は今後しばらく行われないでしょう。

EU離脱で暗号資産(仮想通貨)が人気のイギリス

イギリスは当初暗号資産(仮想通貨)に対して寛容な国として知られていて、2015年の国内調査によってが犯罪に絡む危険性は低いとし個人に対する規制はありませんでした。年金システムにブロックチェーン技術が導入されることが検討されているほか、一部企業ではビットコインでの給与支払いも実施しています。2016年にEU離脱が決定されてから国内の暗号資産(仮想通貨)人気はさらに拡大しました。近年ではマネーロンダリングの危険性が認知されつつあり、12月のビットコイン暴落に伴い年内に暗号資産(仮想通貨)の取り締まりを強化する予定であることを発表しています。


これまでのEU機構の対応

EUではかねてから暗号資産(仮想通貨)の議論が活発であり、ビットコインに対する課税に関する裁判において2015年10月22日欧州司法裁判所(ECJ)は、「ビットコインは通貨であり取引所においてVAT(日本でいう消費税)の対象外である」との判決を出しています。2016年ごろから法規制案が提案されてきましたが、経済発展が阻害さあれる可能性を考慮しオランダやイギリスなど一部の国が反対していたために可決までに時間がかかっていました。欧州中央銀行(ECB)の総裁マリオ・ドラギが2017年9月26日に開かれたHearing of the Committee on Economic and Monetary Affairsにおいて「ビットコインの禁止や規制は実質的に不可能である」と述べている一方で、ビットコインは支払手段としては未熟でありヨーロッパ圏の基軸通貨はユーロであることを明確にしています。2017年12月11日にオーストリア中央銀行の総裁で欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーでもあるエワルド・ノボトニー氏はマネーロンダリングに利用されるリスクがあるためEUはビットコインを規制対象とするべきであると述べていますが、EUとして実際に規制を行うには至っていませんでした。


金融犯罪と脱税を防止する規制

一年以上議論されようやく可決された今回の規制案でビットコイン取引所とウォレットを発行している会社は顧客の本人確認を行うことが必須になほか、暗号資産(仮想通貨)の取引所やプリペイドカードにおける匿名の取引が制限されます。規制案は今後正式に各国およびEUの立法機関で承認を受け18か月以内に国際法として施行される見込みです。今回の法律をきっかけにマネーロンダリングや悪徳組織の金融犯罪が予防されるほか脱税などの対策にもなりますが、本人確認や金融調査が企業に任されているため完全に公的な措置ではなく不正は残りうるとの意見もあります


コインパートナーの見解

中国などでは暗号資産(仮想通貨)が全面的に規制される中、今回の規制は比較的緩いものでした。こういった緩やかな法規制は暗号資産(仮想通貨)の正当性を高める効果があり前向きな法規制といえると思います。しかし一般的に法規制が行われる直前・直後は混乱により価格が大きく変動することを恐れ暗号資産(仮想通貨)から法定通貨に一時避難する傾向にあります。そのためヨーロッパ圏を中心とした一部の取引所では価格が下がることはありえるので注意は必要ですが、好意的な規制であることとヨーロッパの取引量がそこまで大きなものではないことを加味するとチャートへの影響は比較的小さなものであると予想されます。