国際通貨基金(IMF)は4月2日、論文「Tokenized Finance」を公表し、トークン化を金融システムの「構造的転換」と位置づけました。取引の高速化や新たな決済設計が進む一方、規制が追いつかなければ金融不安定を増幅しかねないと警告しています。
各国中央銀行に対しては、安全な決済手段への紐付けから24時間365日対応の流動性・危機管理まで、5本柱の政策ロードマップを示しました。
トビアス・エイドリアンIMF金融資本市場局長は、トークン化が単なる効率化ではなく、決済や流動性管理、リスク移転の仕組みそのものを組み替える変化だと示しました。論文ではトークン化が大きな構造変化であり、その行方を決めるのは技術ではなく、政策の選択だとしています。
暗号資産(仮想通貨)市場で語られがちなトークン化は、現実資産をブロックチェーン上で扱う技術として注目されてきました。今回のIMF文書は、その議論を一段引き上げ、金融市場の配管そのものが置き換わる論点を正面から扱った点に特徴があります。
論文は、トークン化マネーを3つに分類しました。
商業銀行預金をトークン化したもの、規制対象のステーブルコイン、中央銀行間や金融機関向けに使うホールセール型CBDCです。あわせて、民間が発行主体となりつつ中央銀行の資産で裏付ける「合成CBDC」も選択肢として示し、民間の革新を認めながらも中央銀行の厳格な監督が不可欠だとしました。
金融トークン化へ5本柱提言
政策提言の中核は5本柱です。第1に、決済を「安全マネー」に結びつけることです。中央銀行マネーや十分に保全された資産を基盤に据えなければ、トークン化された取引が増えるほど信用不安が連鎖しやすくなります。
第2に求めたのは、「同じリスクには同じ規制」を徹底することです。見た目が新しくても、預金に近い機能を持つ商品や決済手段には、既存金融と整合的な規制を適用する必要があるとしました。技術の形式だけで規制の外に置けば、リスクは監督の隙間にたまりやすくなります。
第3は法的な明確化です。トークンの所有権、決済の最終性、破綻時の扱いが曖昧なままでは、平時の利便性が高くても有事に権利関係が崩れます。金融市場では、取引が成立した瞬間よりも、問題が起きた時に誰の資産かを確定できるかが重要になります。
第4は相互運用性の確保です。発行体やチェーンごとに仕組みが分断されれば、資金移動は速くなっても市場全体はつながりにくくなります。IMF公式Xも、政策ロードマップとして安全マネーへのアンカー、一貫した国際基準、法的明確性、相互運用性、流動性・危機対応の更新を要点として示しました。
第5は、流動性供給と危機管理の見直しです。トークン化市場は24時間365日で動く設計になりやすく、従来の営業時間ベースの監督や流動性支援では間に合わない場面が出ます。中央銀行には、常時稼働する市場に合わせたオペレーションや緊急対応の再設計が求められるとしました。
IMF、金融トークン化の不安定化警戒
IMFが強く警戒するのは、トークン化が効率化と同時に不安の伝播速度も高める点です。論文は、取引の高速化、機能の集中化、システムの分断が重なると、ショックが金融システム全体に広がりやすくなると指摘しました。
技術面のリスクも小さくありません。アルゴリズムの不具合や価格参照データの障害が起きれば、自動執行を前提にした市場では混乱が一気に広がる可能性があります。
国境をまたぐ取引では、どの当局がどこまで監督し、トラブル時に誰が責任を負うのかというガバナンスも定まりきっていません。
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