分散型金融(DeFi)で運用を自動化する「ボールト」が、利回りの高さを競う段階から、リスク管理そのものを製品価値とする段階に入りました。SentoraのリサーチVP、Juan Manuel Pellicer氏は、リスク管理こそが製品であり、利回りはその結果にすぎないとの見方を示しています。
担保や流動性、レバレッジ、執行経路までを動的に判断する設計が広がりつつあり、DeFiの運用体験は「高いAPYを探す場」から「損失を抑えながら資産を預ける場」へと重心を移し始めています。
ボールトは賢いウォレットから能動的な金融商品へ
ボールトは、ユーザーが暗号資産(仮想通貨)を預けると、あらかじめ定められたルールに沿って運用先の選定や再配分を行う仕組みです。初期のボールトは、複雑な運用手順を自動化することが主な役割でした。
足元では、その位置付けが変わっています。Pellicer氏は、ボールトは単なる「賢いウォレット」ではなく、「能動的な金融商品」へ進化していると整理しました。どの担保を使うか、どの程度の流動性を確保するか、レバレッジをどこまで許容するか、どの経路で取引を執行するかまでを一体で判断する設計が次世代モデルの特徴です。
この変化の意味は小さくありません。これまでのDeFiでは、年率利回りを示すAPYの数字が前面に出やすく、運用の裏側にあるリスクは見えにくいままでした。新しいボールトは、利回りを生み出す前提条件として、価格変動、流動性の薄さ、清算リスク、執行時の不利な価格といった複数の要素を管理対象に組み込みます。
預けた資産を事業者が保管する中央集権型サービスと異なり、DeFiボールトの多くはノンカストディアル型です。資産の管理ルールがスマートコントラクト上で公開され、条件に応じた動きがプログラムで処理されるため、運用方針を後から見直しやすい構造があります。利回りの高さだけでなく、どのような条件で守りを固めるのかが比較対象になり始めた格好です。
AIと人間の判断を組み合わせたハイブリッドモデル
次世代ボールトを支える要素として、AIを使ったキュレーション層の導入も進んでいます。数千にのぼる動的な入力情報を監視し、市場の脆弱化を検出したり、ストレスシナリオをシミュレーションしたりする仕組みです。
運用の世界でいえば、単に最も高い利回りの場所へ資金を移すのではなく、「その利回りがどの程度の不安定さを伴うのか」を先回りして測る役割に近いです。急な流動性低下や担保価値の変動、特定プロトコルへの資金集中といった兆候を捉え、配分や保護ルールに反映させることで、収益機会と損失回避の両立を図ります。
Pellicer氏は、AIと人間の判断を組み合わせたハイブリッドモデルが有力だと示しました。AIは監視や検知、シミュレーションに強みを持つ一方、最終的な設計思想や例外対応では人の判断が残る構図です。完全自動運転というより、計器飛行を高度化しながら操縦士が監督する形に近い運用モデルです。
参考元:dlnews
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