米財務省がAnthropic(アンソロピック)のAIモデル「Mythos(ミトス)」へのアクセスを求め、金融システムの脆弱性を洗い出す取り組みに乗り出しました。
財務省の技術チームは、同モデルを使って銀行や決済を支えるシステムの弱点を事前に見つける方針です。生成AIを業務効率化ではなく、金融インフラの防御に直接使う動きが米政府レベルで鮮明になりました。
Mythosは、Anthropicが広く一般公開していない高性能モデルです。報道では、OSやブラウザのゼロデイ脆弱性を発見できる水準の能力を持つとされ、財務省はその探索能力を防御目的で活用したい考えです。
財務省の最高情報責任者(CIO)であるSam Corcos氏は、サイバーセキュリティ担当チームにMythosの内容を説明し、強力なAIがもたらす脅威への備えを進めるよう指示しました。狙いは、攻撃が起きてから対処するのではなく、攻撃者より先に欠陥を見つける体制づくりです。
金融システムでは、ひとつの脆弱性が送金、証券取引、清算といった複数の機能に連鎖しやすいです。政府が先端AIを使って弱点を探す構図は、サイバー防衛が個別企業の課題から、金融安定そのものの課題へ移っていることを示しています。
米財務省とFRB、Mythos巡り大手銀CEOと緊急会合
4月には、財務省と米連邦準備制度理事会(FRB)のJerome Powell議長が、CitigroupやGoldman Sachsなどウォール街の大手銀行CEOと緊急会合を開き、Mythosをめぐるサイバーリスクを協議しました。AIモデルの能力そのものが政策当局と大手銀行の共通議題になった点は異例です。
この会合では、AIが金融機関の防御力を高める手段になる一方、同じ技術が攻撃側に回った場合の影響も意識されたとみられます。銀行システムは相互接続が強く、一社の問題が市場全体の混乱につながりかねません。財務省が自らアクセスを求めたのは、民間任せでは間に合わないという危機感の表れでもあります。
Scott Bessent財務長官は4月15日、Mythosを中国とのAI競争で米国が先行するための革新的な一歩と位置付けました。サイバー防御の話にとどまらず、先端AIを国家競争力の一部として扱う姿勢も明確になっています。
暗号資産の入出金や償還にも影響懸念
AnthropicはMythosを広く開放しておらず、限られた相手と防御協力を進めています。Project Glasswingと呼ばれる枠組みでは、Google、Apple、Microsoftなどと連携し、約1億ドル規模の防御体制づくりを進めているとされます。
一般公開モデルであれば利用者は広がりますが、同時に悪用リスクも高まります。Mythosを限定提供にとどめる判断は、強力な脆弱性発見能力を持つAIを、まず防御側の手に置くという設計に近いです。財務省の要請は、その限定的な利用先に金融当局が加わろうとしていることを意味します。
暗号資産(仮想通貨)市場にとっても無関係ではありません。銀行、決済、クラウド基盤のどこかで障害や侵害が起きれば、暗号資産の入出金、ステーブルコインの償還、取引所の法定通貨レールにも影響が及びます。
参考元:bloomberg
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