金融庁が暗号資産・ステーブルコインの仲介業を規制対象に、2026年6月施行へ
金融庁は12月16日、2025年6月に成立した改正資金決済法の施行に向けて、政令・内閣府令案を公表しました。2026年1月19日までパブリックコメントを募集し、2026年6月頃の施行を予定しています。今回の改正で最も注目を集めているのが、これまで規制の狭間にあった「電子決済手段・暗号資産サービス仲介業」の創設でしょう。
新設される仲介業は、自ら取引を行わずに利用者と交換業者を媒介する事業者が対象となります。具体的には、ステーブルコイン対応のウォレットアプリ、取引所の比較サイト、Web3ゲーム内のトークンスワップ機能などが該当する可能性があります。これまで単なる広告として扱われてきたアフィリエイトモデルも、積極的な勧誘実態があれば規制対象になる見通しです。
参入要件は既存の暗号資産交換業と比べて大幅に緩和されており、資本金1,000万円以上で登録できます。顧客資産を預からない(Non-Custodial)前提のため、コールドウォレット運用体制などの負担も軽減されます。ただし、金融商品仲介業と同様の「所属制」が導入され、仲介業者は大手取引所などの「所属業者」と契約を結ぶ必要があります。利用者に損害が生じた場合、原則として所属業者が賠償責任を負う仕組みになっています。
もう一つの焦点がステーブルコインの裏付け資産運用の解禁です。現行規制では信託財産を全額銀行預金で保管することが義務付けられていましたが、新規制では発行残高の50%まで国債や定期預金での運用が認められます。残存期間3ヶ月以内の国債が対象で、外貨建てステーブルコインの場合は当該通貨の国債に限定される形です。
この規制緩和によって、事業者は運用益を得られるようになります。例えば100億円規模の米ドル建てステーブルコインを発行する場合、50億円を米国短期国債(年利4%と仮定)で運用すれば年間約2億円の収益が見込める計算です。TetherやCircleといった海外勢が運用益で巨額の利益を上げる中、日本のステーブルコイン発行者にとっては待望の環境整備と言えるでしょう。三菱UFJ信託銀行のProgmatやJPYCなど、国内勢の動きが加速する可能性は高いと見られています。
海外メディアThe Blockは、今回の改正を日本が「Web3ハブ」を目指す国家戦略の一環として報じています。欧州のMiCA規則や米国のステーブルコイン法案と方向性は似ていますが、日本独自の「所属制」による重層的なガバナンス構造が特徴的です。規制コストを社会全体で最適配分しながら、イノベーションのスピードを維持する意図が読み取れる内容になっています。
2026年は、日本の暗号資産市場が投機の場から実需の場へと脱皮する転換点となるかもしれません。事業者にとっては、新たなルールを単なるコンプライアンスコストではなく、信頼を梃子にした競争優位を築く機会として捉える視点が求められるでしょう。