2025年12月17日、米連邦準備制度理事会(FRB)が2023年に導入した暗号資産に対する規制方針を撤回し、金融機関のデジタル資産活動に関する新たな政策声明を発表しました。この決定により、預金保険に加入していない州法銀行が、従来は事実上禁止されていたステーブルコイン発行やデジタル資産カストディ業務への参入が可能になります。
今回の政策転換は、2025年7月に成立した「米国ステーブルコインのための国家イノベーションの指導および確立法(GENIUS法)」を受けたものです。新政策では「異なる活動、異なるリスクには、異なる規制が適用されるべき」という相互性の原則を採用し、預金保険基金にリスクをもたらさない無保険銀行と、被保険銀行を明確に区別しています。
理事会の採決では、マイケル・バー理事が「規制のアービトラージを助長し、金融安定性を脅かす」として反対票を投じました。一方、ミシェル・ボウマン金融監督担当副議長は「責任あるイノベーションを促進するために不可欠」と擁護し、理事会内部でも意見が割れる形になりました。
「封じ込め」から「統合」への方針転換
2023年の政策声明は、FTXの破綻とシルバーゲート銀行など暗号資産に友好的な銀行の混乱を受けて導入されました。すべての州加盟銀行に対し「国法銀行に許可された活動に限定される」という厳格な制限を課していたため、事実上パブリックブロックチェーン関連活動は連邦監督下の銀行システムから締め出されていたわけです。
しかし新政策では、ワイオミング州の特別目的預託機関(SPDI)のような無保険銀行が、100%の準備金維持などの条件を満たせば、連邦準備制度内で暗号資産業務を展開できる制度的経路が確立されました。FRBはケースバイケースで申請を審査し、リスク管理能力、金融安定性への影響、消費者保護の観点から評価を行うとしています。
最も注目されるのは、長年マスターアカウント取得を巡ってFRBと法廷闘争を続けてきたカストディア銀行への影響でしょう。同行のCEOケイトリン・ロング氏は、この変更により無保険銀行が新規活動の承認を求める道が開かれたと指摘しています。ただし、活動の承認とFRBとの直接決済に必要なマスターアカウントへのアクセスは別問題として残されており、訴訟は現在も継続中です。
業界全体で進む規制緩和の動き
今回のFRBの決定は、トランプ政権下で進む規制緩和の一環と位置づけられます。12月12日には通貨監督庁(OCC)がCircleやPaxosを含む5社に国法信託銀行チャーターの条件付き承認を付与しました。連邦預金保険公社(FDIC)も12月16日、被保険預託取扱機関の子会社によるステーブルコイン発行のための規則案を承認しています。
FRBが同日発表した調査レポート「ステーブルコイン時代の銀行」では、ステーブルコインが銀行システムから預金を流出させるリスクと、海外需要が国内銀行の預金を増加させる可能性の両面が指摘されています。発行者が準備金をどこで保有するかが、金融システム全体への影響を左右する鍵になりそうです。
果たしてこの規制転換は、米国の金融システムに真のイノベーションをもたらすのでしょうか。それとも新たなリスクの温床となるのか。2026年7月のGENIUS法実施規則発行期限に向け、各規制当局の対応から目が離せません。
参考元:FRB公式資料