12月10日に開催されたFOMCは、予想通り25ベーシスポイントの利下げを実施し、政策金利を3.50%〜3.75%へ引き下げました。ただ、この決定は市場に想定外の波紋を広げています。2019年以来となる9対3という異例の反対票が記録され、FRB内部の深刻な意見対立が表面化しました。
2026年は「利下げ1回のみ」市場予想を裏切る
特に市場を動揺させたのが、FRBが示した2026年の政策見通しです。ドットチャートによれば、2026年末の政策金利中央値は3.4%とされ、今後1年間でわずか1回の利下げしか見込んでいないことが明らかになりました。市場が期待していた「複数回の追加利下げ」という楽観シナリオは完全に否定された形になります。
パウエル議長は記者会見で、現在の金利水準が「中立水準に近い」と発言しました。これ以上の利下げペースが鈍化することを強く示唆した発言といえます。さらに、トランプ次期政権が導入を予定する関税については、インフレへの影響は「一回限りの物価水準のシフト」にとどまるとの見解を示しましたが、グールズビー・シカゴ連銀総裁ら利下げに反対した委員らは賃金・物価スパイラルのリスクを警戒しているとみられます。
株高の裏で失速するビットコイン
市場の反応は株式と暗号資産で明暗が分かれました。S&P500は利下げと2026年のGDP成長率上方修正(1.8%→2.3%)を好感し史上最高値近辺まで上昇した一方、ビットコインは92,500ドル付近で失速しています。利下げという追い風があったにもかかわらず、上値の重い展開が続いているのが現状です。
この背景には、ビットコイン市場特有の構造的な問題があります。オンチェーン分析によれば、現在の価格は短期保有者のコストベース(約102,700ドル)を約10%下回っており、直近の強気相場で参入した投資家の多くが含み損を抱えている状態です。価格が10万ドルに近づくたびに、損失を取り戻そうとする「やれやれ売り」が上値を押さえ込む展開になっています。
オンチェーンデータが示す警戒シグナル
FRBが「2026年は利下げ1回のみ」という姿勢を示したことで、市場が期待していた「流動性相場の再来」というシナリオが後退しました。ビットコインの投資妙味が、FRBのインフレ抑制姿勢により当面は薄れる形になったといえます。
オプション市場でも警戒感が強まっており、90,000ドル割れを警戒したプット需要が急増しています。実現損失は日次5億5,500万ドルに達し、2022年のFTX破綻時以来の水準まで膨らんでいる状況です。今後、ビットコインが構造的な脆弱性を脱するには、短期保有者のコストベースである102,700ドルを明確に上抜ける必要があります。それまでは81,300ドル(市場全体の平均取得コスト)をサポート、102,700ドルをレジスタンスとするレンジ相場が続く可能性が高そうです。
投資家としては、表面的な「利下げ」というヘッドラインに惑わされず、FRBの真意とオンチェーン上の需給構造を冷静に見極める必要がありそうです。
参考元:CNBC