「プラズマって何?」「プラズマってどんな仕組みで動いているの?」

このような疑問を皆さんお持ちだと思います。プラズマはイーサリアムがスケーラビリティ問題を解決するためのサイドチェーン技術です。どのブロックチェーンもスケーラビリティ問題を解決するための手段を講じていますが、プラズマはその中でも画期的な技術の一つで注目を浴びています!

非常に有用な一方で、プラズマは理解するのが非常に難しい技術です。一歩一歩理解しましょう。また、プラズマにどのような欠陥があり、どのような対策が講じられているかも解説します。

まずは、問題の根幹であるスケーラビリティ問題を解説し、そこからプラズマについて解説します。

この記事を読んで分かること

  • スケーラビリティ問題とは
  • プラズマの仕組み
  • プラズマの欠陥と解決策

スケーラビリティ問題

スケーラビリティ問題とは、「ネットワークにおいてある一定数以上の接続数があった時、極端に処理速度が落ちる」問題の事です。この問題はブロックチェーンに限った問題ではなく、現在のあらゆるネットワークが必然的に抱える問題です。

この問題に対する解決策としていくつか考えることができます。一つ目は、サーバーの台数を増やすこと。ただ単純に処理できる量を上げる方法です。あと、サーバーの処理速度自体を上げることも一つの手法として考えられます。

さて、イーサリアムブロックチェーンもこの問題を抱えています。その原因は何でしょうか?

スケーラビリティ問題の原因

​原因は単純で、イーサリアムを利用するユーザーが極端に増えたことが一因です。イーサリアムのアドレス数は現在下図のようになっています。

​2017年5月から、アドレス数は右肩上がりです。現在は世界中に約4000万アドレスあります。このアドレス増加に伴い、処理するトランザクションの数も当然に増えます。以下、そのチャートです。

​2018年1月にピークを迎え、現在は約60万トランザクションです。ピーク時に比べればまだ低い値ですが、それでも2017年時と比べると倍以上の数値を維持しています。

解決法の例

​ビットコインを例にあげましょう。

ビットコインは、スケーラビリティ問題を解決するための手段を2つ挙げていました。

一つ目は、ブロックの容量自体を上げることです。こうすることで、一つのブロックに多くのトランザクションを入れることができるようになり、処理速度は上がります。この解決策をとったのが、ビットコインキャッシュという暗号資産(仮想通貨)です。ビットコインからハードフォークして生まれたコインです。ビットコインキャッシュについて詳しく知りたい方は以下のリンクをクリックしてください

 二つ目は、ブロックの中に多くのトランザクションを入れるようにすることです。具体的にはSegwitという技術を使うことで、署名の部分だけをブロックとは別の領域に保存し、ブロックの中に保存するトランザクションのデータ量を小さくします。すると、ブロックの中により多くのトランザクションが入るようになり、処理速度は上がります。Segwitについて詳しく知りたい方は以下のリンクをクリックしてください。

目次Segwit(セグウィット)とは? Segwitの仕組みとトランザクションとの関係 ハードフォークとソフトフォークの違いSegwitはどんな暗号資産(仮想通貨)に導入されたの?Segwitのメリットデメリット SegwitとSegwit2xの違いSegwitとライトニングネットワークの関係って? まとめ ​ Segwit(セグウィット)とは? ​ Segwitとは segwitとは、Segregated Witnessの略で、ブロックチェーン上に記録されるトランザクション(取引)のサイズを圧縮することで、1ブロックあたりに記録できるトランザクションの量を増やすことを指します。 これにより、トランザクションの滞りを抑制し、取引を速やかに処理することが期待できます。 これから、segwit、トランザクションについて説明します。 Segwitの仕組みとトランザクションとの関係 ​ トランザクションとは トランザクションとは、簡単に説明すると、通貨の送り手が受取手に対していくら通貨を送金したかという取引のことを指します。 ビットコインにおいて、ブロックチェーン上では、送信元が送信先に対して何BTCを送金したかという記録になり、送信元が送金したBTCと送信先が受け取ったBTCには差があります。その差が手数料であり、トランザクションを承認するマイナーの報酬として扱われます。 スケーラビリティ問題とは ビットコインにおいて、スケーラビイティ問題は切っても切り離せない問題です。ビットコインに用いられているブロックチェーンの1ブロックあたりの容量は1MBと制限されています。これは1MB以上の容量を持つ記録は組み込めず排除されることやたくさんの取引が短い期間に行われ、そのトランザクションの総容量が1MBを超えた場合にトランザクションの承認に遅れが出る、つまり、送金に時間がかかってしまうということが起きます。さらに、トランザクションの処理が滞ると、トランザクションを優先的に承認してもらおうと手数料を多く払う人が出てきて、結果的に送金の手数料が高くなってしまうということが起きます。このように、1ブロックあたりの容量が制限されていることによって起こる問題がスケーラビリティ問題となります。

 さてこれはオンチェーンにおける解決策と言って、ブロックチェーン自体に何か細工をして問題を解決しようとする手法です。オフチェーンと言って、ブロックチェーンに直接トランザクションを保存しないような解決方法もあります。

それは、ライトニングネットワークというビットコインのセカンドレイヤー技術です。すべてのトランザクションをブロックに保存するわけではなく、トランザクションの最初と最後だけををブロックに記述します。そのためブロックチェーンに載せるデータ量が必要最小限に抑えられます。ライトニングネットワークについて詳しく知りたい方は以下のリンクをクリックしてください。

目次ライトニングネットワークとは?ライトニングネットワークの仕組みライトニングネットワークのメリットライトニングネットワークの懸念点・問題点ライトニングネットワークに関するQ&Aライトニングネットワークまとめ ライトニングネットワークとは? ​ ​ ライトニングネットワークとは、オフチェーン上でトランザクションをまとめてからブロックチェーン上に効率化されたトランザクションだけを送ることで、マイクロペイメントを可能にした技術です。ライトニングネットワークの導入には、Segwitの導入が必須なので、ビットコインにSegwitが実装されたことによってライトニングネットワークの実現性が高まったと話題になりました。手数料、スケーラビリティなどたくさんの問題を持ったビットコイン、モナコイン、ライトコインなどの弱点を解決する可能性を秘めた技術です。 まずはマイクロペイメントについて知ろう! マイクロペイメントとは、少額単位での支払いを可能にする送金システムのことです。一円以下での支払いが出来るので、デジタルコンテンツに対する支払いなどに向いています。例えば、動画視聴に対して1秒に0.1円といった支払いです。今の法定通貨でこれをやろうとすると、どうしてもクレジットカードで支払わなければならず、クレジットカードの手数料が5~10円程かかってしまうので秒単位での支払いをするには手数料がばかになりません。暗号資産(仮想通貨)を用いることでより少ない手数料でマイクロペイメントを行うことができますが、ビットコインでもまだ問題があります。 それは、細かい額のトランザクションを作るときにやはりマイナーフィーがかかってしまうので結局手数料がかかってしまうことと、送金に10分かかることです。 マイクロペイメントに関して詳しく知りたい方はこちらの記事を読んで下さい!!! マイクロペイメントとは?ビットコインや暗号資産(仮想通貨)の可能性を解説マイクロペイメントとは、少額の決済が可能になるサービスです。今まで少額の決済をするのに手数料が決済価格よりも大きいなど、現実的ではありませんでした。今後暗号資産(仮想通貨)を使って可能になる可能性があるマイクロペイメントの仕組みや将来性を解説します!続きを読む ですが、そんな問題を解決する技術が存在して、それをペイメントチャネルといいます。

 ビットコインは以上のようにして、スケーラビリティ問題に対処しています。

さて、イーサリアムではどうでしょうか?イーサリアムが提示した解決策こそプラズマ(Plasma)です!

プラズマ(Plasma)とは?

2017年8月、​イーサリアムの創立者であるヴィタリック・ブテリン氏と、ライトニングネットワークの共同開発者であるジョセフ・ポーン氏がプラズマという技術を提唱しました。

プラズマのホワイトペーパーからの引用です。

Plasma is a way to do scalable computation on the blockchain with the structure of creating economic incentives to autonomously and persistently operate the chain without active state transition management by the contract creator. ​ (Plasma: Scalable Autonomous Smart Countracts, Plasmaから引用)

直訳します。「プラズマは、コントラクト作成者による積極的な状態移行管理なしに、自律的に永続的にチェーンを操作する経済的インセンティブを作る構造をつかってブロックチェーン上でスケーラブルなコンピュテーションを実現する方法である。」

抽象的すぎてよく分かりません。図をつかってみていきましょう。

ルートチェーンにいくつかのプラズマコントラクトが結びついています。DEX(分散型取引所)やプライベートブロックチェーン、ソーシャルネットワークやマイクロペイメントなど目的は様々です。つまりざわざトランザクションをルートチェーン上で作成する必要がなく、独自のチェーンを作成しそれをルートチェーンに接続することができるということです。

これから、プラズマのホワイトペーパーを逐次参照します。ホワイトペーパ全体を見たい方は以下のリンクをクリックしてください。プラズマのホワイトペーパーはこちら

詳しく見ていきましょう。

プラズマ(Plasma)の仕組み

​プラズマの中で重要なことは以下の5点です。以下引用です。

Plasma is composed of five key components: An incentive layer for persistently computing contracts in an economically efficient manner, structure for arranging child chains in a tree format to maximize low-cost efficiency and net-settlement of transactions, a MapReduce computing framework for constructing fraud proofs of state transitions within these nested chains to be compatible with the tree structure while reframing the state transitions to be highly scalable, a consensus mechanism which is dependent upon the root blockchain which attempts to replicate the results of the Nakamoto[6] consensus incentives, and a bitmap-UTXO commitment structure for ensuring accurate state transitions off the root blockchain while minimizing mass-exit costs.​ (Plasma: Scalable Autonomous Smart Contracts, Plasmaより引用)
  1. 経済的に効率のいい方法で永続的にコントラクトを処理するためのインセンティブレイヤー
  2. 低コスト効率性と差金決済を最大化するために子チェーンをツリー状に組み立てるための構造
  3. MapReduce(状態移行のfraud proofsを構成するためのフレームワーク)
  4. ナカモトコンセンサスを真似た、ルートチェーンに依存するコンセンサスメカニズム
  5. ​UTXOを用いた正確な状態移行管理

​MapReduceとFraud Proofはプラズマを理解するうえで非常に重要です。あとで詳しく解説します。

具体的な話に戻します。再び図を参照します。

​この図はプラズマチェーンが、ルートチェーンに接続している様子を図に表したものです。ルートチェーンとはもともと存在するブロックチェーンで、例として挙げるならば、イーサリアムなどがあげられます。ここでプラズマチェーンの最新ブロックはブロック#3です。このブロックにアリスが1ETH所持しているという情報が入っています。

その情報が間違っていないことの合意が取れた時点でその情報は正当なものと認められます。そして、プラズマブロックのブロックヘッダーがルートチェーンに送信されます。ブロックヘッダーはブロックの情報の要約です。この構造は通常のブロックチェーンと全く同じです。最大の特徴は、ブロックチェーンの中にブロックチェーンが入っているような入れ子構造となっていることです。

これからプラズマの特徴の3番目のMapReduceについて説明します。プラズマのコンセプトはブロックチェーンの構造自体をMapReduce形式にすることで、この機能は非常に重要です。

​MapReduceとは

​以下、MapReduceを表した図です。

​Mapは、非常に簡単に説明すると、子チェーンは親チェーンの命令に従うということです。ルートチェーンに一番近い、第一階層のチェーンから第二階層のチェーンに命令が出されます。そして、第二階層も同様に第三階層のチェーンに命令を送ります。

ここで、挙げられている例は、まず第一階層は第二階層にとある本を渡し、その本の文字数を数えさせます。そして、第二階層は第三階層に分析する章を第三階層に送ります。

Reduceは、その逆で子チェーンから親チェーンに分析結果を送ります。分析の証明として、マークル木をとおして生まれたブロックハッシュを親チェーンに送ります。親チェーンは子チェーンから送られた情報(例だとワードリスト)を自身の親へと送ります。

攻撃に対する対処方法

どんなネットワークにも必ず悪いことをする人間はいます。そこで、彼らの不正をどう防ぐのかを解説します。ここで重要になるのが、Fraud Proofです。以下、その図です。

​このプラズマチェーンの最新ブロックは、ブロック#4です。このブロックが詐欺ブロックだったとしましょう。例えば、周りに隠れて生成されたブロックだったり、不正な取引をその中に持っていたりということです。この不正の証明がFraud Proofです。

この不正を暴く方法はいくつかあります。一つは、ある取引において送金者が本当に支払う金額を持っているかを確認することです。これはUTXOというものを見ることで確認することができます。この証明をProof of Spendabilityと言います。UTXOについて詳しく知りたい方は、以下のリンクをクリックしてください。

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 他にも、取引においてちゃんと署名がなされていて、支払者が本当にそのお金を支払う権利を持っているかを確認することも方法の一つとして考えることができます。

さて、不正の証明がなされたとしましょう。以下その図です。

​アリスさんがブロック#4のFraud Proofをルートチェーンに送ったとしましょう。すると、ルートチェーンの命令によりブロック#4が無効になります。プラズマブロックは巻き戻され、ブロック#3が最新ブロックとなります。

ブロック#4の作成者はペナルティを受け、そのペナルティ分のお金は密告者であるアリスにわたります。

この設計によって、不正なブロックの作成を防いでいます。

プラズマ(Plasma)の今後

プラズマは確かに魅力的な技術だと思います。しかし、プラズマにもいくつか問題があります。

プラズマチェーン内の取引の正当性を検証するためには、プラズマチェーンをすべて同期する必要があります。しかし、そのブロック同期には大変な容量が必要になります。ビットコインでフルノードに簡単になれないことと同じです。

そこで、イーサリアムの設立者であるヴィタリック氏は、2018年3月プラズマの進化版ともいえるプラズマキャッシュ(Plasma Cash)を発表しました。

プラズマキャッシュでは、プラズマコインというコインが作られ、そのコインにはIDがついています。すると、わざわざプラズマチェーンを同期する必要なしに、取引の追跡をすることができるのです。

まとめ

​何度も言いますが、スケーラビリティ問題はインターネットが始まって以来の問題です。ブロックチェーンにもそれは当てはまり、プラズマはイーサリアムが提示した解決策の一つです。

プラズマはまだ未完成の技術ですが、しかしこれが実現すれば相当量のトランザクションが処理できるようになります。プラズマの今後は、プラズマキャッシュに期待しましょう!