地政学リスクが、7月に入って戻り歩調にあったビットコイン(BTC)相場に冷や水を浴びせました。米国とイランの軍事的な緊張が再燃してリスク回避の売りが広がり、BTCは7月9日朝の時点で6万2239ドルと、前日比-2.24%の反落となっています。直近の戻り高値だった6万4700ドル台から水準を切り下げました。
原油の急騰を伴う今回の下げは、これまで相場を動かしてきた材料とは異なる外部からのショックが主導し、同じ日に公表されたFOMC議事要旨による金利面の逆風も重なりました。
値動きの振り返り

BTC/USDT 30分足チャート
直近24時間の高値は6万3761ドル、安値は6万1544ドルでした。米国とイランを巡る報道が伝わると売りが優勢となり、BTCは6万1544ドルまで下押しする場面がありました。7月上旬の反発では一時6万4700ドルまで戻していただけに、今回の下落はその上げ幅を削る格好となっています。
市場心理も一気に慎重へ傾きました。恐怖・貪欲指数は前日の27(Fear)から20(Extreme Fear)へと悪化しており、地政学ショックが投資家の警戒感を再び強めたことがうかがえます。数日かけて改善してきた投資家心理が、一つのヘッドラインで振り出しに戻った形です。
相場を動かした背景
米イランの軍事的緊張の再燃と原油急騰
今回の下落の震源となったのは、米国とイランの軍事的な緊張の再燃です。米軍は、商船3隻への攻撃に対する報復として、火曜日にイランへの攻撃に踏み切りました。トランプ大統領はトルコで開かれたNATO会合で、両国の停戦は「終了した」と述べ、イランを「今夜また強く叩く」ことになるだろうと警告しました。これに対しイラン側は、原油輸送の要衝であるホルムズ海峡の封鎖をちらつかせています。
供給不安を背景に原油価格は急騰し、ブレント原油は7%を超える上昇で、一時1バレル80ドルと6月22日以来の高値に乗せました。リスク資産全体が圧迫されるなか、BTCもこの流れに巻き込まれました。
意見が二分したFOMC議事要旨と金利上昇
下落には、金融政策面の要因も重なりました。本日未明に公表されたFOMC議事要旨は、新議長ウォッシュ氏の下で初めてのものです。その内容は、政策の先行きを巡る不確実性が高く、金利を巡る議論はほぼ二分していたことを示しました。
多くの参加者が、状況次第では利上げが必要になり得るシナリオに言及した一方で、その多くは、労働市場が安定すれば据え置きや利下げが視野に入るシナリオにも触れています。インフレはなお高止まりしているとの認識も共有されました。
市場が受け止めたのは、早期の利下げに明確なゴーサインが出なかったという点です。原油高によるインフレ再燃への警戒も加わり、米10年債利回りは4.585%へ上昇しました。金利の高止まり観測は、利回りを生まないビットコインのような投機的資産には重しとなりやすく、地政学リスクによる売りに拍車をかける形となりました。
ビットコイン(BTC)テクニカル分析
日足チャート

今回の下落で、価格は日足のMA20(6万1899ドル)付近まで押し戻されました。反発局面ではこのMA20を上回って推移していただけに、ここを終値で維持できるかどうかが、戻り基調を保てるかの最初の関門になります。上方のMA50(6万5990ドル)をはじめ長期の移動平均線はなお遠く、中長期の地合いは依然として回復の途上です。MA20を明確に割り込むと、次は6万ドルの節目が意識されやすくなります。
4時間足チャート

より短い4時間足では、価格がMA20(6万3079ドル)とMA200(6万2524ドル)を割り込み、上昇の勢いが失われつつあります。現在はMA50(6万2064ドル)とMA100(6万1500ドル)が下支えとなっていますが、この帯を割ると調整が深まりやすくなります。戻りを試すうえでは、まず6万2500〜6万3000ドルを回復できるかが目安です。
1時間足チャート

1時間足では戻り売りが優勢です。価格はMA50(6万2985ドル)とMA100(6万3005ドル)を下回っており、6万3000ドル手前で上値を抑えられやすい状態です。直近のサポートは24時間安値の6万1544ドルと、4時間足のMA100が位置する6万1500ドルです。ここを割り込むと、下値模索の動きが強まりやすくなります。
デリバティブ動向
OI・清算動向
下げの中身をみると、パニック的な投げ売りとは様子が異なります。未決済建玉(OI)は直近24時間で約9万9539BTCから約10万550BTCへとほぼ横ばいで、価格が約2%下げたわりに建玉は大きく減っていません。
強制ロスカットの連鎖というより、整然とした調整の範囲にとどまっているとみられます。資金調達率はBinanceで+0.007%と小幅プラスで、ポジションに過度な傾きはありません。
注目清算ライン

注意したいのは、個人のポジションの偏りです。全体の建玉口座比率は1.79(ロング64.2%/ショート35.8%)で、この下げ局面でむしろ個人はロングを増やしています。押し目買いの動きですが、裏を返せば下値には買い建てが積み上がっているということです。
6万1500〜6万1900ドルの支持帯を割り込むと、これらのロングの手仕舞いを巻き込んで6万ドルへ向かいやすくなります。反対に上値は、6万3000ドルを回復できればショートの買い戻しが入りやすくなります。
ETF動向
需給の下支えとして注目されるのが、現物ETFのフローです。今回の下落を伝える報道でも、米上場の現物BTC ETFへの資金流入は続いており、直近までの流出を反転させて今月の回復を支えたことが確認されました。
地政学リスクと金利上昇による売りに対して、この実需の買いがどこまで下値を支えるかが、当面の相場の底堅さを左右します。米SECが月内に初の暗号資産規則案「Reg Crypto」を提案する可能性も、中期的な支援材料として並走しています。
本日のデイトレ材料
本日の米経済指標は限られており、21時30分の新規失業保険申請件数や23時の中古住宅販売が中心です。22時にはFRBのウィリアムズ総裁の発言も予定されており、議事要旨を受けた金利観の手がかりとして注目されます。
ただ、当面の主役はイランとホルムズ海峡を巡る地政学のヘッドラインと、それに連動する原油価格です。緊張が一段と高まれば原油高・金利上昇を通じてリスク資産への逆風となり、逆に沈静化に向かえば戻りの余地が出てきます。あわせて、下値を支えてきたETFの資金流入が続くかどうかも確認したいところです。
値動きの目線としては、まず6万1500〜6万1900ドルの支持帯を守れているかが起点になります。これを維持できれば、6万3000ドル、さらに24時間高値の6万3761ドルや6万4000ドルが戻りの目標です。反対にこの支持帯を割り込むと、増えた個人ロングの手仕舞いを伴って6万ドルが視野に入ります。
まとめ
今回のビットコインは、米国とイランの軍事的緊張という外部ショックに、早期利下げ期待を後退させたFOMC議事要旨と金利上昇が重なる二重の逆風を受けて反落し、7月に入って続いてきた戻りがいったん一服しました。
その一方で、現物ETFへの資金流入が続いているという内側の強さも同時に確認されています。相場は今、地政学リスクと金利の売り圧力に対して、機関投資家の買いがどこまで対抗できるかを試す局面にあります。
目先は6万1500〜6万1900ドルの支持帯を守れるかどうかで、方向感を大きく左右するのは、経済指標よりもイラン情勢と原油の展開です。ヘッドラインから目が離せない一日となりそうです。
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