記事の概要

  • 暗号資産(仮想通貨)メディアCCNはブルガリア政府が暗号資産(仮想通貨)取引所に関して調査をしていると報道。課税制度の体系化が目的であると考えられる。
  • ブルガリア政府の調査に基づいて、「暗号資産(仮想通貨)と税金」に関する現状と課題を3点にまとめた。

 ブルガリア政府は最近暗号資産(仮想通貨)取引所を調査しており、暗号資産(仮想通貨)トレーダーへの課税システムの体系化を目的としている。

そして、今回の調査の結果は日本の現状にも関連し得るものとなった。

調査の結果、暗号資産(仮想通貨)への課税に関する現状と問題点は以下の3点にまとめられた。

課題1:仮想通貨のボラティリティの高さ

ブルガリア政府機関で税徴収を主に担当する歳入庁の見解では、暗号資産(仮想通貨)が他の投資商品と最も異なるのは「ボラティリティの高さ」にあるという。

暗号資産(仮想通貨)は未だ黎明期をさまよっており、一日の価格変動率は5~15%にも及ぶ。現にビットコインは年末の二か月で-44%もの価格下落を起こしており、その変動率は他の投資商品と比べても遥かに大きい。

それ故、トレーダーが現金化しないまま暗号資産(仮想通貨)を保持していた場合、年度末の決済時には取引当時の価格と大きく異なり、予想の範囲外の納税額になってしまうリスクがあることを指摘している。

このようなリスクがある中、ボラタリティに対する規制案がないことが問題となっているようだ。この状況は現在の日本にもあてはまっており、世界的にボラタリティ対策法案の作成は急務である。

課題2:仮想通貨の匿名性

ブルガリア規制当局が次に恐れているのは暗号資産(仮想通貨)取引の匿名性が高い点だ。

暗号資産(仮想通貨)取引の情報は理論上ブロックチェーン上に記載されているが、個人の取引アドレスは独立して存在しているため「だれ」が「どのような」取引をしているのかは分からない点で匿名性を保っているという特性がある。

この特徴をブルガリア歳入庁は問題視しており、「暗号資産(仮想通貨)取引のトレーサビリティが低いため、税金申告も簡単に逃れることが出来る」と結論付けている。

しかし、本質的にはこの考えは誤りがあることに留意したい。ビットコインやイーサリアムなどの主要通貨はみな個人レベルでの取引情報にアクセスできる「パブリックブロックチェーン」を採用している。

ZCashなど確かに匿名性の高い通貨もあるが、市場に広く流通するような主要通貨に関しては匿名性に関する心配は必要ないだろう。

具体的には既存の暗号資産(仮想通貨)規制法案をAMLやKYCシステムに統合することで問題の解決を図ることが出来ると考えられる。

課題3:民間企業との親和性

上記二つは暗号資産(仮想通貨)のシステム上の問題点であったが、最後の一つは実用化のために重大な要素である。

ブルガリア政府は調査の結果、暗号資産(仮想通貨)取引による課税を「利益の10%」とする方針でいるが、これ日本やアメリカと比べると低い税率となっている。(日本の場合は雑所得に含まれ最大45%計上する)

税率が低いと政府の歳入額が減ってしまうが、民間企業との親和性を考えると効果的な策と言えるかもしれない。

政府機関が暗号資産(仮想通貨)取引の管理を目的として短期間て大量の情報の公開を一般企業に求めてしまうと、膨大なコストがかかる問題が生じてしまう。

例えば、2017年に歳入庁は暗号資産(仮想通貨)取引所に取引情報の公開を要求しているが、返答するために100万ドル以上の費用を要していた。

当時の状況についてCEOのBrian Armstrong氏は以下のように語っている。

(歳入庁からの)不当な要求に応じるために10万~100万ドルもの費用が掛かりそうだ。この費用は新たなプロダクトの開発や新規雇用の採用など、より有意義に使うことのできるものであるにも関わらずだ。歳入庁からの過重なアプローチは今後の市場発展を阻害している。

上記の例から分かるように、暗号資産(仮想通貨)に関して政府の一元管理は現実的ではないだろう。

実際に運営するのは民間企業であるため、健全な管理には国と民間企業の協力が欠かせないものであると考えられる。