英上院は6月3日、報告書「Stablecoins: waiting for regulation」を公表し、イングランド銀行(BoE)が検討するポンド建てステーブルコイン規制が厳しすぎれば、市場が立ち上がる前に商業的な成立を損なう恐れがあると警告しました。
個人保有額に2万ポンドの上限を設ける案や、準備資産の運用を強く制限する設計が、発行体の採算性や利用拡大を妨げるとしています。英国でなお初期段階にあるポンド建てステーブルコイン市場をどう育てるかが、規制の設計そのものに問われる形になりました。
報告書は、BoEと金融行為監督機構(FCA)が進めるステーブルコイン規制の方向性そのものには賛成しつつ、一部の具体策については再考を求めました。とくに問題視したのは、利用が広がる前の段階で個人保有額に一律の上限を課す考え方です。
委員会は、2万ポンドの保有上限案のような事前制限を導入すれば、ポンド建てステーブルコインの需要形成を妨げ、発行体や関連事業者が事業として成立しにくくなると指摘しました。市場がまだ小さい段階で利用量を先回りして抑え込めば、決済手段としてのネットワーク効果が育たず、利用者も事業者も集まりにくくなります。
準備資産の扱いも論点になりました。報告書では、準備資産に対して非金利の性格を強く求める設計や、中央銀行預金への配分を厚く求める枠組みが、発行体の収益源を細らせる可能性に触れています。複数の報道では、準備資産の40%を中央銀行預金で保有する案などが言及されており、こうした要件が重なれば、発行体は安全性を確保できても、事業として続ける余地が狭まりかねません。
ステーブルコインは、法定通貨と連動する価格安定性が強みです。ただ、利用者が増えるには、発行体が十分な流動性と運営コストを賄えることが前提になります。安全性を高める規制が、そのまま採算性を失わせる設計になれば、制度は整っても実際のサービスが育たないというねじれが起きます。
英国の遅れを埋めるための段階的な規制設計
報告書は、英国がステーブルコイン規制の明確化で米国やEUに後れを取っているとも指摘しました。法的な枠組みが見えにくい状態が続けば、開発や投資の判断が先送りされ、ポンド建てステーブルコインの立ち上がり自体が鈍るという見立てです。
そのうえで委員会は、事前に厳しい上限を固定するのではなく、市場の成長や利用状況を継続的に監視し、金融安定へのリスクが現実化した段階で必要な制限を課すべきだと提言しました。規制をまったく緩めるべきだという主張ではなく、初期市場に対しては比例的で、段階的な設計が必要だという立場です。
今回の報告書が示したのは、ポンド建てステーブルコインを「安全だから使われる仕組み」にするだけでは不十分だという点です。利用者が増え、発行体が継続でき、決済インフラとして機能する水準まで育つ余地がなければ、制度はあっても市場は空洞化します。報告書は、そうした状態を「irrelevance(無関係化)」につながりかねないと警告しました。
報告書「Stablecoins: waiting for regulation」は英議会の公開ページで全文が確認できます。6月3日付の委員会公表文とあわせ、英国のステーブルコイン政策が安全性と商業性のどこで均衡を取るのかを示す資料になっています。
参考元:coindesk
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