米ステーブルコイン大手サークルのジェレミー・アレールCEOは4月13日、Drift Protocolで発生したハッキングを巡り、盗まれたUSDCのアドレスを凍結しなかった理由について、裁判所命令や法執行機関の指示がない限り対応しない方針だと説明しました。被害額は約2億8,000万〜2億8,500万ドル相当とされます。USDCのような法定通貨連動型トークンで、発行体がどこまで介入すべきかを巡る議論が改めて表面化しました。
アレール氏は韓国での発言で、サークルには「明確に定義された法的責任」があり、法執行機関から直接命令を受けた場合にのみウォレットを凍結できると述べました。技術的に凍結可能であっても、法的根拠なしに資産を止めることはしない立場を示した形です。
凍結できるのに凍結しない判断
今回の発端となったのは、分散型金融プロトコルのDrift Protocolで起きたハッキングです。流出した資金の一部がUSDCだったことから、オンチェーン分析で知られるZachXBTらの間では、サークルが凍結機能を使えば被害資金の移転を抑えられたのではないかとの批判が広がっていました。
USDCは、発行体が特定ウォレットの残高移転を止められる設計を持ちます。この機能は、銀行口座の差し押さえに近い強い介入力を持つ半面、誰の判断で、どの条件なら発動できるのかが曖昧だと、利用者の財産権や予見可能性に直結します。
サークルは、制裁対応や法執行命令、裁判所の要請に基づく場合に限って凍結するポリシーを維持しています。
この姿勢は、被害者保護を優先して即時対応すべきだとする見方とは食い違います。ハッキング直後の数時間は資金追跡と封じ込めが重要になるため、発行体が動かなければ実効性のある対処が難しいという不満が出やすい構図です。
規制遵守と分散性で割れる評価
アレール氏の説明を支持する側は、サークルが規制下で事業を営む企業である以上、法的命令なしに資産を凍結しないのは一貫した対応だとみています。発行体の判断だけで資産を止められる前例を広げれば、ハック対応にとどまらず、政治的圧力や民事紛争にも介入範囲が広がりかねません。
一方で批判する側は、凍結機能を備えたステーブルコインである以上、緊急時に使わないのであれば利用者保護の観点で不十分だとみます。とくにDeFiでは、取引所や銀行のような中央管理者がいないため、発行体の凍結権限が最後の防波堤として期待されやすい事情があります。
この対立は、ステーブルコインの性格そのものを映しています。ブロックチェーン上で24時間動くデジタルドルでありながら、完全に中立な現金ではなく、発行体が法制度の内側で管理責任を負う商品でもあるためです。送金の自由度と、法執行への協力義務が同じ仕組みの中に同居しています。
今回は逆に、法的命令がない段階では動かなかったことで、USDCが「止められる資産」であると同時に、「いつでも止めるわけではない資産」でもあることが鮮明になりました。
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