こちらの文章は先日M&Aでグループ会社となったBeat Holdings Limited社CEOの松田元氏によるコラムとなっています。
今後は松田氏と議論を重ねながら仮想通貨に関する見通しについて、定期的に連載していく予定です。また、松田氏はnoteによる解説も行っているので、是非そちらもご覧ください。
ビットコインを中心に完全復活したように見える仮想通貨は、「ドル安」と「DeFi」によってその勢いを殺しかねない、というところが今回のコラムの中核です。
ビットコインは、本日1日に120万円をブレイクすることに成功しており、ビットコインにつられその他アルトコインの価格も上昇を続けています。
また、金・銀にも断続的に買いが入っており、今年の3月から金融市場の動きに引きずられることの多かった仮想通貨市場に、明るい兆しが見えてきています。
しかし、これほど絶好調な仮想通貨でも「ドル安」と「DeFi」によってその可能性を潰されてしまうかもしれません。
本コラムでは、「ドル安」と「DeFi」が時限爆弾たる理由を紹介していきます。
ドル安については、GDPの発表などを経て米国にリスクオフの動きが強まり、米長期金利が低下傾向にあります。
米金利は米ドルの先行指標なので、ドル安・円高の動きが続いております。この流れに沿って、リスクオフ資産である金、そしてビットコインが買われています。
今年の3月頃本稿で指摘した、金融市場の下落に釣られてビットコインが下がった事象に、ようやく終わりが告げられたのだと認識しています。
DeFiについては、第2のICOバブルといってもいいくらい、暗号通貨市場で盛り上がっている事象です。
復習も兼ねて、DeFiの定義や意義を下記します。DeFiとは、Decentralized Financeの略で、日本語でいうと分散型金融です。
全ての取引がブロックチェーン技術により透明化されており、DeFiのプラットフォームにトークンを預け入れると、プラットフォームが選定したトークンの価格差でスプレットがもらえたり、融資先から定期金利がもらえたりします。
その取引は全て透明性が高く、誰もがアドレスから取引を確認できます。
そして、その金利を原資に更に新たな金融派生商品に投資したりできます。
DeFiプラットフォームのユーザーは、そのトークンベースで借り入れを行い、レバレッジをかけてトークンの投資を行うことができます。
例えば、トークンを空売りする場合、BTCやETHなど流動性の高いトークンであれば市場で取引できますが、流動性の低いマニアックなアルトコインでは、空売りの難易度が高いのが一般的です。
そんなときにDeFiを使って、例えばアルトコインをデポジット(ロック)したユーザーの相対取引としてアルトコインを借りてくることで、実質的な空売りを行うことができ、アルトコイン市場の流動性を上げることができます(これはあくまでユースケースの一例です)。
DeFiの注目度は暗号通貨市場でも図抜けて高く、預け入れ総額が33億ドルを突破、DeFiトークンが上場したら100倍、1,000倍といった非常識な値段がつくこともあります。
第二のICOバブルと言われる所以ですね。
このDeFiが、アルトコインの買いも誘発していることは間違いありません。
昨年と異なり、今年の暗号通貨バブルはビットコインだけでなくアルトコインもしっかり上げています。その理由はシンプルで、DeFiがETHの実需を創ったからです。
DeFiという具体的なユースケースは、年利2.7%程度の安定的な金利を生み出してくれるため、ドル→BTC→ETH→DeFiトークンへと換金ニーズが高まります。
結果、ビットも買いが入り、ましてや米金利が低下傾向にあり、ドル安であれば、尚更その動きは強まるでしょう。
ただ一つ、実際に小職もDeFiを触ってみて感じたのは、2つの甚大なリスクです。これは、恐らく暗号通貨市場にとって相当な時限爆弾になるため、タイミングを見定めてアルトコインに思いっきりショートを振りたい衝動に駆られます。リスクは以下の2つです。
1.ETHのガス代が高すぎてスプレッド負けする
2.スプレッド負けしたDeFiに融資した原資の維持率は誰がリスクアセスするのか
まず「ETHのガス代が高すぎてスプレッド負けする」ですが、DeFiで投資先を振り分けるには当然トランザクションが発生します。このGas代が馬鹿にならない。
毎回数百円、数千円取られていたら、いくら年利2%以上が固く出せるとはいえ、スプレッド負けしてしまいます。
取引手数料が廉価しない限りこのスキームはどこかで破綻する気がしますし、トランザクションごとにGas代がかかるETHの限界をどうしても感じてしまいます。
やはり、スマートコントラクトが書き込める、もっと取引手数料が軽いパブリックチェーンの登場が待たれます。
また、「スプレッド負けしたDeFiに融資した原資の維持率は誰がリスクアセスするのか」ですが、レバをかけてUSDTを買うといったシンプルなトランザクションならいいのですが、アルトコインのよくわからないCDOめいたデリバティブに投資した場合、そもそも自分がどのアルトコイン建てで何に投資しているのかわけがわからなくなります。
もちろん全ての取引がブロックチェーン技術によって担保されている以上、詐欺的な商品というのはないのでしょうが、信用取引のように例えば維持率が30%を切ったら追証が必要、などのプログラムは書き込まれているはずです。
例えばアルトコイン市場に何らかのクラッシュが発生したとき、一斉に預け入れているデポジットトークンがロスカットとともに没収されたらどうなるでしょうか。
現行のDeFiでは、こうしたクレジットリスクが非常に高いと感じます。いわゆるリーマンショックの暗号通貨版ですね。
10トークンDeFiにデポジットして、20トークン借りて、30トークンで謎のアルトコインを買って定期金利をもらって、その定期金利を受け取る債権をまたブロックチェーン技術で分散販売して、となると、どこにリスクが存在するかわからなくなります。
恐らく、今回のビットコインはテクニカル的に重要な壁を破っていますし、ドル安の追い風もあるので、かなり上がると思います。
20,000ドル超えどころの高値を抜いたら、倍返しで45,000ドルくらいまでは伸びそうです。
ですが、ETHを始めとするアルトコインについては、DeFiバブル崩壊のリスクが近い将来待っていますので、その点は注意をしたほうが良さそうです。
BTC・ETHを買ってDeFiのバブルにしっかりと乗り、スプレッドが異常に高くなるなど危険な前兆が出てくれば、思いっきりショートに振ると面白いかもしれません(ただし、DeFiが破綻するとショートの担保に預けたトークンがなくなりそうですので、そこにはご注意ください)。
我々も、DeFiの動向にはかなり注視しており、米中の一流企業の取り組みについて、技術研究を始めています。コインパートナー内で様々な情報発信も予定しています。色々と仮想通貨も盛り上がりそうな今夏に向けて、仕掛けてまいります。8月もしっかりと結果を残してまいりますので、皆様どうぞ宜しくお願いいたします。
松田氏について
Beat holdings limited(9399)CEO。早稲田大学商学部卒。実業家としての経験を活かし、複数の上場企業における投資銀行/バリューアップ業務を豊富に経験。2016年衆議院予算委員会における中央公聴会にて、最年少公述人として日銀の金融政策に関する意見を述べる。
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著者: CoinPartner 編集部 CoinPartner