トランプ米大統領は6月22日、連邦政府システムに耐量子暗号への移行を義務付ける大統領令「EO 14409」に署名しました。高価値資産と高影響システムは、鍵確立を2030年12月31日までに、デジタル署名を2031年12月31日までに、NIST承認の耐量子暗号へ切り替える必要があります。対象は政府システムですが、楕円曲線暗号に依存するビットコインなど暗号資産(仮想通貨)の安全性にも視線が向き始めました。
大統領令の対象は、連邦政府が保有・運用する高価値資産と高影響システムです。国家安全保障システムはこの枠組みから除かれますが、それ以外の重要システムには明確な移行期限が設定されました。
期限は二段階です。通信相手と安全に鍵を共有する「鍵確立」は2030年末まで、電子文書やソフトウェア更新の真正性を支える「デジタル署名」は2031年末までに、NISTが承認した耐量子暗号へ移行しなければなりません。
移行の司令塔は行政管理予算局(OMB)と国家サイバー長官室です。技術面ではNISTとCISAがガイダンスを担います。政策判断と実装支援を分けて進める構図が明確になったことで、耐量子暗号への移行は研究段階ではなく、実務の工程表に入ったことを示しました。
NISTはすでに耐量子暗号の標準化を進めており、FIPS 203、FIPS 204、FIPS 205といった標準群が整備されています。今回の大統領令は、それらの標準を政府調達やシステム更新の現場で使う期限を切った形です。暗号方式の見直しが「必要かどうか」の議論から、「いつまでに終えるか」へ移った意味は小さくありません。
今回の大統領令は、暗号資産事業者や民間ブロックチェーンに直接の法的義務を課すものではありません。もっとも、米政府が重要システムについて古典暗号の使用期限を事実上区切ったことで、民間にも無視しにくいシグナルが出た形です。政府向けシステムを扱う事業者や、長期保管を前提とするウォレット、カストディ、インフラ事業者では、耐量子対応の優先順位が上がる可能性があります。
参考元:whitehouse公式
画像:shutterstock
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