​EUが発行するレポートでは法定デジタル通貨(CBDC)は驚異的な能力があるために、より安定した金融システムを構築する可能性があると結論付けています。同レポートではさらに、規制が厳しい国での暗号資産(仮想通貨)利用が行われるようになっている事実を認識し始めていますが、同時に暗号資産(仮想通貨)市場でのボラタリティーが大きいことに対する危険性も指摘しています。

EUの報告書ではCBDCの評価とリスク調査を行う

ECONコミュニティの要望によりEUが作成した報告書によると、EUは暗号資産(仮想通貨)とCBDCがもたらす危険性利益についての詳細な分析を行なったようです。この報告書ではCBDCが機能するためには現行の準備預金制度を改善する必要があり、それが成功した暁にはより安定した金融システムが出来上がる可能性があると結論付けていますが、同時に様々なリスクが伴うということにも言及しています。

EUが作成した同報告書では​暗号資産(仮想通貨)市場におけるボラティリティの問題を提起していますが、CBDCの導入により取引ペアが増加したり、ユーザーが暗号資産(仮想通貨)をホールドするのではなく使うようになる可能性があると認めています。しかしこの件に関連してオーストラリア準備銀行(RBA)の支払い政策の代表を務めるTony Richards​博士がコメントを残しており、ビットコインはボラタリティーを含めた様々な理由によってオーストラリアでは成功しないと主張しています。

同氏は「法定通貨-暗号資産(仮想通貨)ペア取引量は徐々に増加しており、これによっては個々の暗号資産(仮想通貨)の価値の連動が自然となくなっていくようになる可能性があります。その結果、ビットコインのボラタリティーが小さくなって暗号資産(仮想通貨)の価値は上がらなくなってしまうでしょう。」と述べています。さらに法定通貨-暗号資産(仮想通貨)ペア取引によって金融システムが不安定になる可能性があることも示唆しており、暗号資産(仮想通貨)市場のボラタリティー問題の余波が法定通貨市場にも及ぶことで「関与する全てのアクターに悪影響を及ぼす」と主張しています。そして銀行が株式や債券などの金融商品と暗号資産(仮想通貨)を繋げて暗号資産(仮想通貨)ETF(上場投資信託)のようなサービスを始めると、リンクしたもの全てものの価値も同様に変動する可能性があるとの指摘をしています。


ビットコインは市民を救うために使われる

EUの発行した報告書では、中国とベネズエラの人々を支援するために使われている暗号資産(仮想通貨)に関して2つの重要な問題を提起しており、暗号資産(仮想通貨)は市民を救うために使われると主張しています。中国において暗号資産(仮想通貨)は厳しい資本規制を避けるために使われてきたと言われていましたが、現在は国内で全面的な取り締まりを行なっていることが懸念材料です。また、ベネズエラは元来国内の基軸通貨が機能不全に悩まされており、暗号資産(仮想通貨)は日用品の購入などの簡単な支払いをするのに役立つと期待されています。そのため、同国政府は米国の制裁回避も兼ねて独自の暗号資産(仮想通貨)「ペトロ」をローンチしました。しかし、現状石油のバレルに価値を裏付けされた同通貨が正常に機能すると断言はできない状態にあります。

さらに同報告書では多くのホワイトペーパーは著しく情報が不足して運営元の基本情報がないことに批判的な姿勢であり、規制情報やICOに適用される法律が不足していることについて言及しています。このことについてはヨーロッパ当局に様々なタイプのICOに適用できる法律や規制の制定を要求を提案しています。そして「最近ICOが普及していますが、その多くは従来のデューデリジェンスには通用しない非常に疑わしいものになっています。」と述べており、ICOに関しては慎重な姿勢を見せています。

コインパートナーの見解

韓国やイギリスなどの中央銀行が発行を検討しているCBDCについて、EUの意見を示したニュースです。CBDCの導入によって従来不可能な中央銀行と個人間での取引ができるようになることが期待されています。報告書の内容から考慮するに、EUは一貫してCBDCに関しては肯定的な姿勢であり、導入に向けて問題点の提起・改善点の提案を行なっている印象を受けます。特にEU圏内では他の国際取引と比べても流動性が高いため、試験的に暗号資産(仮想通貨)を導入するモデルケースとしても有用なのではないかと考えられます。そのためCBDC導入のテストモデルとなると世界全般でも実用可能性が高まるのではないでしょうか。