ブロックチェーンという技術は、2008年サトシナカモトという謎の数学者の論文を元にビットコインと共に誕生しました。
誕生からすでに10年が経過する暗号資産(仮想通貨)とブロックチェーンは、2017年にバブルが発生し、世間から大きな注目を浴びるようになりました。
特に暗号資産(仮想通貨)の技術の根幹となるブロックチェーンは注目を集めており、その特性から暗号資産(仮想通貨)以外の活用法の研究が日々行われています。
昨今では、ブロックチェーンは相性がいいとされる金融分野のみならず、非金融分野でも取り入れられるようになって来ています。
この記事では、ブロックチェーンが暗号資産(仮想通貨)以外でも注目される理由や実際のビジネスサイドでの活用例などを紹介していきます。
ブロックチェーンとはビットコインをはじめとする暗号資産(仮想通貨)の根幹をなす技術です。
よくブロックチェーン=ビットコインかのように誤解する人がいますが、あくまでブロックチェーンは「公開台帳を分散して管理する技術」であり。ビットコインはその技術を使用しているに過ぎません。
取引のデータ (ex.AさんがBさんに1BTC送った、C社からD社に100台の車を送った)を「トランザクション」と呼び、複数のトランザクションを集めたものを「ブロック」と呼びます。
このブロックが連なるようにチャーンで結ばれていることから「ブロックチェーン」と呼ばれています。
ブロックチェーンは、理論上改ざんが不可能になっており、安全性・透明性・信頼性がとても高くなっています。
このブロックチェーンを活用すれば、安価な管理システムを構築することが出来るため様々な業界で期待されています。
今回は、物流業界に関するブロックチェーンの影響等について解説していきます。
誕生から約10年、インターネットに次ぐ技術革新「インターネット2.0」ともブロックチェーンは呼ばれています。
「改ざんに極めて強く、公開されているため透明性が高い、システムの構築が安価」というブロックチェーンは何故スタートしてから10年程経つ今日、暗号資産(仮想通貨)以外のビジネスサイドで注目を集めて来ているのでしょうか。
その理由は簡単に3つに集約できるかと思います。
2018年にFacebookの約5000万人のユーザーデータの流出や、Googleの50万人超のユーザーデータが外部からアクセス可能であったことの隠蔽など、多くのインターネットユーザーはITテック大手による莫大なデータ独占に疑問を抱えつつありました。
そんな中、それらの企業にデータが恣意的にシェアされたり覗かれてしまわぬように、ユーザー達自らデータを管理したいという欲求・希望がブロックチェーンに向いています。
また、AIなどの分析技術の進歩によって、AIに分析させるためのビッグデータを人々は探しています。そこで数あるインターネットサービス企業にデータを独占されることなく、全員でデータをシェアできるようなプラットフォームとしてブロックチェーンは考えられています。
ブロックチェーンが開発された当時はブロックチェーンを扱える技術者が少ない状況でした。
ですが、開発から約10年経った今日では、ブロックチェーンエンジニアが増加して来ています。これによって具体的なブロックチェーンの特長を活かしたサービスの検討が可能になり、それにつれブロックチェーンの可能性に対する期待が高まって来ています。
以上のこれらの3つの理由からブロックチェーンは、ビジネスサイドでの活用に注目を集めていると考えられます。
フィンテック(Fintech)とは、Finance(金融)とTechnology(技術)を組み合わせた造語であり、金融サービスと情報技術が連携した様々な動きを総称してこう呼ばれます。
金融サービスの普及に遅れをとっていた途上国や新興国においてもスマートフォンを利用した金融サービスが急速に広がりつつあり、金融領域における格差をなくすフィンテックは金融の民主化とも呼ばれています。
そしてこのフィンテック領域の活用事例として代表的であるのがXRPで馴染みのあるリップルです。
従来の海外送金には為替手数料に加えて経由する金融機関への手数料や、様々な事務も生じるためにコストがかかる上に時間もかかってしまうのが現状でした。
しかしリップルではInterledger Protocolと呼ばれるブロックチェーン技術を活用することで銀行を経由せずにユーザー同士での送金を可能にし、海外送金を低コストで素早い安全なものにしました。
以下はアフリカで浸透しつつあるモネロの記事です。
ブロックチェーンは以上に紹介した様々な強みを生かし、金融領域に留まらない広がりを見せ、例に挙げられるのが美術分野です。
ITとは無縁に思える美術分野ですが、ブロックチェーンを応用してアート市場に新しいプラットフォームの構築を試みているスタートアップ企業がスタートバーン株式会社です。
美術作品は売買取引の追跡が難しく来歴が不明になるケースが多い上に、作品証明書自体も紙媒体での発行が多いため改ざんのリスクが非常に高いのが現状でした。
そこでスタートバーンはブロックチェーン上に美術作品の証明書を発行するアートブロックチェーンネットワークを構築することで証明書の改ざんや紛失を防ぎました。
加えて作品が売買されるたびに作者へのマージン設定を可能にしたことでアーティストの利益保護にもつながっています。
スマートコントラクトとは一言でいえば契約の自動化です。
自動化させることから実行の際に仲介する管理者の存在が不要になり様々な事務を減少させるため、決済期間の短縮やコストの削減につながります。
そしてブロックチェーン上でのプログラムとして行われることで全ての契約記録の参照が可能となり自動的に履行されるため改ざんの防止につながり、信頼性の向上に貢献しています。
しかしスマートコントラクトにも課題がいくつか存在します。
まず第一にプログラミングによる自動化により、契約締結後の変更が難しい点です。
第二に、プログラミングという特性上バグが発生する可能性があり、この脆弱性がハッカーの標的になり得ます。
実際にスマートコントラクトの欠陥を悪用し発生したTheDAO事件が有名です。
依然課題が残るスマートコントラクトですが、様々な企業が導入を視野に入れているため今後は研究や法整備が進み更に普及することが予想されます。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
ブロックチェーンビジネス活用事例9選
世界一のスーパーであるアメリカのウォルマートは、ブロックチェーン技術を「スマート・パッケージ」という配送システムに利用しようと2018年3月に特許を出願しました。
「スマートパッケージ」では、荷物の現在地、商品の状態や置かれている環境など詳細な情報がブロックチェーンを介して追跡可能となります。
この配送システムにブロックチェーンが用いられる理由は、荷物内の商品の状態を保護するためです。
配送では生産から小売店そして顧客の手に渡るまで、管理者が幾度となく変わります。ブロックチェーンを導入することで「管理者による不正を防ぐ」ことができるようになります。
また、そのほかにもウォルマートは食品の安全性・透明性を担保するために、2018年10月にIBMと提携し「IBM FOOD TRUST」を構築しました。
保険会社大手のAIGはIBMと提携し国際保険にブロックチェーンを導入しました。
国によって保険に関わる異なった規則や支払い条件など多くの業務が存在し、多国籍な保険契約を結ぶ際の大きな障害となっていました。
しかしブロックチェーンを応用し契約を一元管理することで、業務の大幅な効率化に成功しました。
そして取引ログもブロックチェーン上にすべて記録され遡ることができるため、保険商品の信頼性向上にも貢献しています。
株式会社SONYはブロックチェーンを応用したデジタルコンテンツの権利情報処理を行うシステムを開発したと発表しました。
このシステムは著作物に関わる権利情報処理に特化しており、データの作成日時を証明や、改ざんが困難な形で情報を記録を可能にしたりなどブロックチェーンの特長を生かした機能を備えています。
このシステムで電子データの生成と同時に本システムを呼び出すことにより、従来証明や登録が困難であった著作物に関わる権利発生の証明を自動的に実現することも可能です。
今後教育に加え、音楽や映画、電子書籍など幅広い分野での活用を検討されています。
2016年にドバイ政府は、「2020年までに政府の公文書をブロックチェーンを活用したシステムに移行する」発表しました。
ドバイ政府は元々ブロックチェーンに注力しており、この発表の前にもGlobal Blockchain Councilを設立し、「ダイヤモンド取引の管理」「電子遺言書」を取り組んでいるようです。
行政の効率化を目的として、中東一の都市がブロックチェーンを行政に活用することで今後様々な政府等でブロックチェーンが使われるかもしれません。
国連は、世界に存在する11億人もの身分証明・IDを持たない人美に法的な身分証明やIDを付与することを目標に「ID2020」ろうプロジェクトを進めています。
ID2020の創業メンバーの一員である国際的コンサルティングファームのアクセンチュアは、IDシステムの施策をブロックチェーンと生体認証システムを利用して開発しました。
2030年までに安全で永続性のあるデジタルIDを普及させることを目標として活動をしています。
自動車部品シェア世界第2位のデンソー(DENSO)は、車載するデータをブロックチェーン上に記帳することでセキュリティを確保しようとしています。
ブロックチェーン上に車の状態や周囲の状況などのデータを記録します。もし自動運転の車が事故に巻き込まれた場合、ブロックチェーン上に記録されたデータから法的に正当な主張ができるようになり、持ち主とメーカーの両方を守ることができます。
また自動運転の実用化に向けて議論となる「車がハッキングに遭う可能性」に対して、ブロックチェーンがこの議論に対する答えの一つとなりそうです。
また、セキュリティ以外にも、車の正当な価値の担保もブロックチェーンは担います。
これまでは中古車の売買時に、走行距離の改ざんがなどが行われていたが、ブロックチェーンを利用することでそのような不正は防ぐことができるようになります。
ドイツの電力大手VATTENFALLはブロックチェーン技術を利用した電力取引の実用化を試みています。
現在オランダには住宅だけでも800万個以上のソーラーパネルが存在し、総じて1.6ギガワットの電力が発電されています。
しかしこれらの電力は一世帯当たりの発電量が少ないため、風力や太陽光で発電されるグリーン電力と認定されず火力や原子力で発電されるグレー電力に10%ほど分類されているのが現状です。
その背景にはグリーン電力生産者として認証されるには多くのコストがかかることが挙げられます。
そこでブロックチェーン上にグリーン電力生産者の証明書を自動的に発行管理することでコストを抑え、グリーン電力による発電総量の可視化に繋げようとしています。
国際海運大手FedEXは競合他社と協力し運送業界全体に展開可能なブロックチェーン構想を打ち出しています。
製薬業界大手Pfizerは新薬の開発に関わるデータ管理にブロックチェーンの活用を検討しています。
新薬の試験期間とコスト削減は、特にデータ管理に依拠していると言われており、従来治験参加者を選ぶ際に用いる患者データは個々の製薬会社に断片的に記録されていました。
その為患者データへのアクセスが限定され、研究に適確な患者を見つけて採用することは困難でした。
そこでブロックチェーン上に患者データを登録し、被験者を探している製薬会社がデータを照会、必要な条件を満たす被験者を採用できるようにすることで、医師と被験者の情報共有の円滑化に貢献すると考えられています。
ブロックチェーンが暗号資産(仮想通貨)以外のビジネスサイドで注目される理由や、実際に活用されている例を紹介しました。
ブロックチェーンの持つ特性は、紹介した分野・業種以外にも様々なものに活かせます。
未だ発展途上ですが、これらのビジネスがもし実現し成功すれば、またブロックチェーンの可能性や認知が広がると思います。
将来的に、私たちが当たり前に使うサービスの中にブロックチェーンが活用されている、という日が来るかもしれません。