「ファイナリティ」とはもともと決済システムに関連する金融業界の用語でしたが、今ではビットコインやブロックチェーンを理解する上で絶対に理解しておきたい言葉となっています。
この記事を読めば、本来の「ファイナリティ」の意味からビットコインやブロックチェーンにおける意味までしっかり理解することができます。
ファイナリティとは、とても簡単に表現すれば、
「決済が完了した状態」
を指します。
ここでは、より深く「ファイナリティ」について理解して頂きたいので、日本銀行による定義と、実際の決済におけるファイナリティを説明していきます!
「ファイナリティ」は「ファイナリティのある決済」という形で使われることが多いです。その意味は日本銀行のサイトでは「それによって期待通りの金額が確実に手に入るような決済」であると説明されています。
具体的には、以下の2点を満たす決済が「ファイナリティのある決済」であると日銀は述べています。
と言われても、なんだかよくわからないですよね。
これから、実際の決済手段におけるファイナリティを説明します!具体例で理解していきましょう!
ここでは身近な2つのパターン、すなわち「現金による決済」と「銀行振込による決済」について、どこにファイナリティがあるのか、説明していきます。
まずは現金による決済を考えます。
AさんがBさんに手渡しで10000円支払うとします。
BさんがAさんから10000円札を受け取ります。
Bさんは受け取った10000円札が偽札ではないか確認します。
Bさんの確認をもって、「ファイナリティのある決済」となります。
次に銀行振込による決済を考えます。
今度は、AさんがBさんに手渡しではなく銀行振込で10000円支払うとします。
Aさんの口座残高から10000円が引かれ、Bさんの口座残高が10000円増えます。
まだファイナリティは得られていません。
データ上では決済が完了したように見えますが、もしかしたらAさんの銀行が10000円を持ち逃げしてしまうというリスクがあるからです。
Aさんの銀行からBさんの銀行に10000円の資金が移動し、Bさんの銀行が手元に10000円が届いたことを確認します。
Bさんの銀行の確認をもって、「ファイナリティのある決済」となります。
ここでもう一度「ファイナリティ」の定義に戻ると、
「ファイナリティ」=「決済が完了した状態」
「ファイナリティのある決済」=「それによって期待通りの金額が確実に手に入るような決済」
ですが、わざわざ「確定」や「確実に」と説明されている理由がわかると思います。
「ファイナリティ」という概念をしっかり理解したところで、いよいよブロックチェーン技術におけるファイナリティについても考えていきましょう!
暗号資産(仮想通貨)のファイナリティはブロックチェーンの型、すなわちパブリック型とプライべート型によって微妙に異なります。
ここでは、2種類のブロックチェーンにおけるファイナリティを比較します!
パブリックチェーンを使った代表的な暗号資産(仮想通貨)はやはりビットコインです。
ビットコイン決済の場合のファイナリティはどこにあるのでしょうか。
ここでも、具体例を用いて考えてみましょう。
AさんがBさんに1BTCを支払うとします。この取引を以後、「A⇒B」とします。
日本ブロックチェーン協会の定義によれば、ブロックチェーンは「時間の経過とともにその時点の合意が覆る確率が0へ収束するプロトコル」であるとしています。
ビットコインで決済した場合、その取引記録ははブロックチェーン上に記録されていきます。その取引記録が改ざんされてしまうリスクは時間がたつにつれ「確率的」に限りなく0に近づいていきますが、完全に0になることはありません。
ブロックチェーンのファイナリティはコンセンサスアルゴリズムによって異なるのですが、ビットコインが採用するPoW(プルーフ・オブ・ワーク)の場合、「Aさん⇒Bさん」の取引が記録されたブロックに、新たに6個のブロックが承認されてはじめて決済が完了したとみなす場合が多いです。6回のブロック承認の後では決済が覆る可能性が相当低くなるからです。しかしこれは決まりではなく、慣習に過ぎませんから、「厳密にはビットコインにファイナリティはない!」という意見もあります。
また、パブリックブロックチェーンにおいては仮想貨幣の価値が上昇すればマイニング参加者が増え、取引記録を改ざんする(ハッキングする)コストも上がります。そうすれば不正を働くよりも善意のマイナーとして参加した方が得なので、ファイナリティの確率も上がると思われます。
現金による決済のファイナリティの説明で「BさんがAさんから受け取った10000円札が偽札でないか確認する」という過程がありました。
実際に日常生活の中で買い物をするときで、お札や貨幣が本物であるかどうかを毎回確認している人は少ないと思います。
また、最近ではビットコイン決済が可能なお店も増えてきました。
つまり、100%のファイナリティを得ていないのに私たちは決済をしていると言えます。
しかし、ビジネスシーンにおいてはファイナリティは重要です。
金融機関での決済システムにブロックチェーンを導入する場合、「確率的なファイナリティ」は受け入れられにくいでしょう。
ビットコインに代表されるパブリックブロックチェーンのファイナリティは「確率的」ですが、プライベートブロックチェーンを用いれば「確定的」なファイナリティを実現できます!
ブロックチェーンの種類について気になる方は以下の2つの記事もチェックしてみてください!
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確定的なファイナリティを実現しているブロックチェーンのうち代表的なものは以下の3つです。
プライベートブロックチェーン | 合意形成アルゴリズム |
---|---|
Hyperledger Fabric v0.6 | PBFT |
Hyperledger Fabric v1.0 | PBFTの拡張版 |
Hyperledger Iroha | PBFTの延長にある「スメラギ」 |
※Hyperledgerとは2015年12月にLinux Foundationによって開始された企業向けのオープンソースのブロックチェーンプラットフォームで、Hyperledger FabricやHyperledger Irohaはそのプロジェクトの一部です。
※PBFTとはPractical Byzantine Fault Toleranceの略称です。ネットワーク上での正しい合意形成を問う「ビザンチン将軍問題」を解決し、P2Pネットワークを正常に稼働させることのできる合意形成アルゴリズムです。
ビザンチン将軍問題についてはコインパートナーのこちらの記事をご覧ください!
暗号資産(仮想通貨)について調べていると「ビザンチン将軍問題」という言葉を聞くけど、どういう意味かさっぱりわからない。そんな方も多いのではないでしょうか?一見何の関係もなさそうなただの歴史用語のようですが、具体的な暗号資産(仮想通貨)との関係性を知っておきたいですよね。そこで!今回ビザンチン将軍問題とはどのような問題のことなのかコインパートナーがわかりやすく解説します!また、そもそもの名前の由来やブロックチェーンとの関係についても詳しく説明します。これを読んでビザンチン将軍問題を完全に理解しましょう!目次ビザンチン将軍問題とはビザンツ帝国における合意形成問題ブロックチェーンとビザンチン将軍問題の関係ビットコインのコンセンサスアルゴリズムビザンチン将軍問題まとめビザンチン将軍問題とはビザンチン将軍問題(Byzantine Generals Problem)暗号資産(仮想通貨)について調べていると、「ビザンチン将軍問題」という単語をしばしば見かけるかもしれません。ビザンチン将軍問題とだけ聞くと暗号資産(仮想通貨)とはなんの関係もなさそうですが、実はブロックチェーンとビザンチン将軍問題には深い関わりがあるのです。誤解を恐れずに簡単に言うと、ビザンチン将軍問題とは「複数人で合意形成を図る際、その一部の不正や不具合が生じ得る時に、全体での正しい合意形成ができなくなる可能性がある」という問題です。ビザンチン障害(Byzantine Failure)ビザンチン障害(またはビザンチン故障)とは、ビザンチン将軍問題が原因となって起きた不具合のことを言います。分散型のネットワークにおいて合意形成を図るためには、このビザンチン障害が起きないようにする必要があります。ビザンチン・フォールトトレラント性(Byzantine Fault Tolerance)ビザンチン・フォールトトレラント性とカタカナにするとわかりにくいですが、これは「Byzantine Fault
不特定多数のノードが参加するパブリックブロックチェーンとは異なり、特定複数のノードが通信して合意形成します。
リーダーノードが一定のタイミングでブロックを生成するので、ブロックが分岐することはなく、合意形成が覆ることはありません。
これがファイナリティが「確定的」である理由です。
マイニングを必要としないので、比較的高速な認証処理が可能だというメリットがあります。
一方で、一般的にノード数が増えるほど合意形成の処理が重くなってしまうというデメリットがあります。
繰り返しますが、ファイナリティとは「決済が完了した状態」を意味します。
それがビットコインの場合では「確率的」であり、パブリックブロックチェーン上では「確定的」にすることもできるということです。
パブリックブロックチェーン技術を検討する際は、「確率的な合意形成か、確定的な合意形成かのトレードオフ」を考慮してみるのが一つのポイントになるのではないでしょうか。
ファイナリティを理解することは、金融・経済分野だけでなく、暗号資産(仮想通貨)を理解するために欠かせません!