第3四半期の仮想通貨市場はどの通貨も強気な動きとなり、全マーケットで+36.3%の上昇率となっています。
エルサルバドルのBTC法定通貨法の施行や、ETHがアップデートによってバーン機能が付いたことなど、相場全体を盛り上げる話題に富んでいた相場でした。
またNFTの第2次バブルや、NFTの新興勢力台頭なども相場を後押ししていたのも印象的です。
Q3四半期のビットコインは2021年の仮想通貨バブル崩壊後、約4ヶ月弱続いたレンジ相場を上に抜け、一時は52,000ドルの高値を記録しました。
しかし、バブル時の高値水準まで上昇できずに反落すると、バブル後の高値ラインである40,000ドル付近まで下落しました。
Q3上昇幅 | 28.68% |
最安値 | 29,278ドル |
最高値 | 52,920ドル |
最大レンジ幅 | 23,642ドル |
93% of Bitcoin's supply hasn't moved in at least a month.
— Will Clemente (@WClementeIII) September 12, 2021
This is an all-time high. Just another metric showing how bullish supply dynamics are. pic.twitter.com/Rx6TuVkdYW
Q3四半期のビットコインですが、1ヶ月以内に取引された量は市場全体のわずか7%にとどまっています。
今まで長期保有者が売りに走ったのは、コロナショック時と2021年の仮想通貨バブル崩壊時で、それ以降は長期保有傾向が過去最大の水準まで上昇。
現在は93%のビットコインが市場へ出回ることなく、保管されています。
(参照:Will Clemente氏Twitter投稿より)
Q3の初め底値圏での推移が続いていた時の仮想通貨取引所の預金残高は2.58M手前と高い水準となっていましたが、Q3後半にかけて大きく減少し現在は2.4Mを下回っていることがわかります。
$BTC supply on exchanges is about to break its previous low.
— Ki Young Ju 주기영 (@ki_young_ju) September 10, 2021
Hope to see another sell-side liquidity crisis on #Bitcoin.
Live Chart 👇https://t.co/blydpKpykt pic.twitter.com/zCrq9o5YFT
仮想通貨取引所から資金が抜けていることに関して、Crypto QuantのCEO Ki Young Ju氏はTwitterでポジティブな見解を示しています。
仮想通貨取引所の預金残高(出典:CryptQuant)
以上2つのデータから市場に出回っているビットコインの量は減少傾向にあることがわかりました。
市場に出回るビットコインの量が減ると価格のボラティリティが大きくなりますが、取引所から資金が抜けている状態は価格上昇の観点から見るとプラス要素になると考えられています。
(TradingviewBTCUSDT日足チャート)
チャート右側に出ているオレンジ(買い)と青色(売り)の棒グラフはその価格帯での出来高を表しています。
ビットコインは30,000ドルから40,000ドルの間での取引量が全体で一番大きくなっていることがわかります。
今後の値動きでビットコインが急落した際も長期保有者はビットコインを保有し続けることが予想されます。
一つ目安となるのが、マイクロストラテジーのビットコイン平均取得単価でしょう。
マイクロストラテジーのビットコイン平均取得単価は現時点で約27,700ドルです。同ライン付近は市場参加者に大きく意識されるラインとなるでしょう。
Q3のイーサリアムはDeFiやNFT取引での取引の増加から、一時はビットコインを超えるパフォーマンスを発揮し4,000ドルの大台にも到達しています。
しかしQ3後半になると金融市場全体が不安定な状態になったこともあり下落。その後はレンジ相場を形成する展開となっています。
Q3上昇率 | 42.17% |
最安値 | 1,706ドル |
最高値 | 4,027ドル |
レンジ幅 | 2,321ドル |
Q3四半期のイーサリアム上昇の要因の一つとして考えられるのが、大型アップデート「ロンドン」の実装です。
実はイーサリアムには発行上限はありません。そのためインフレになりやすい通貨ではありますが、ロンドンが実装されたことによりイーサリアムにデフレ性を持たせる仕組みができ価格が上がりやすい環境となりました。
ロンドンでは今までトランザクション手数料の報酬としてマイナーに支払われていたものがBurn(焼却)されるようになったため、市場に流通するETHの量が減少し結果上昇への圧力が強まります。
実際にロンドン実装後イーサリアムは+25%の大幅上昇を記録しています。
Q3四半期前半にかけてイーサリアムのアクティブアドレス数は過去最大まで増加しました。
アクティブアドレスの増加はイーサリアムを使用する量の増加を意味します。実際にQ3四半期ではNFTが話題となりましたが、特に世界最大のNFTマーケットプレイスOpenSeaでのイーサリアムの使用量が激増しています。
イーサリアムアクティブアドレス数(参考:https://studio.glassnode.com/)
Q3四半期前半仮想通貨バブル崩壊後ガス代は落ち着きましたが、Q3四半期後半NFTの新規参入者が激増したタイミングでガス代も大きく高騰しています。
イーサリアムガス代の推移(出典:gasnow.org)
イーサリアムの手数料の高騰問題を解決するためにはLayer2の開発が重要となってくるでしょう。
実際にOpenSeaではイーサリアムのインフラ問題に対し、Polygonに対応しました。
は2019年のBinanceでのIEOで6億円の資金調達に成功しており、イーサリアムのスケーラビリティを解決するプロジェクトとして大きな期待が寄せられます。
OpenSeaを筆頭にPolygonに対応するプラットフォームが増えてきており、今後さらに普及が進みそうです。
世界最大規模のDEXのUniswapの出来高が仮想通貨取引所全体の3位となりました。
UniswapはQ3四半期でUniswapは大手仮想通貨取引所Coinbaseの出来高上回る急成長を遂げました。
Uniswapの24時間あたりの取引量は約4.4億ドル。それに対しCoinbase proの取引量は3.7億ドルとUniswapが20%ほど上回っています。
現在Uniswapを超える出来高を記録している取引所は、BinanceとHuobi Globalの2社のみとなりました。
世界No. 1取引所のBinanceの取引量は24時間で約65億ドルと圧倒的ではありますが、DeFiプラットフォームでの取引量の増加はイーサリアムにとっては好材料となるでしょう。
(参考:Uniswap Moves Billions to Pass Coinbase, Maker in DeFi Metrics)
DeFi市場の時価総額推移(参考:Coingecko)
DeFiの時価総額は5月後半にピークを迎えたあと、急転直下の下落でおよそ半減していました。しかしながら3Q途中から価格を回復させ、一時高値から94.9%も回復させました。
これは"ビットコインの回復率81.5%"や"イーサリアムの回復率92%"よりも高い水準となっています。仮想通貨投資の中心がイーサリアムを軸として、DeFi方面へ流れていることが受けててとれます。
DeFi上のETHロック量推移(出典:DeFi Plus)
以上の画像はDeFiに使われているETHのロック量(ETH建て)を表したグラフです。なんとETHロック量は過去最高を更新しており、DeFi人気は伸び続けているということが分かります。
最高値は更新できなかったものの、DeFiは着実に需要を伸ばし続けており、長期的に見て成長フェーズにいると考えられるでしょう。
では次はどのDeFiが人気なのかをクローズアップしていきます。
【関連ニュース】
イーサリアム783万ETH(約2兆5,000億円)がDeFiによってロック|歴史的な高値が続く
DeFI別TVL比較(参考:DeBank,symmetry)
2Qまでの相場ではバイナンススマートチェーン(BSC)やポリゴンネットワーク(polygon)を中心に伸びたDeFi市場ですが、3Qでは伸び悩みが目立ちました。
BSCが落ち込んでしまった理由は、Binanceが発行するBNBコインに対してSECが調査をするかもしれないという報道をしたからと考えられます。これを受けてBSC上のTVLは一時的に急落。その後も大きく戻すことはありませんでした。
対して取引所FTXが中心に開発を進めるSolanaや、ETH上のプロダクトと互換性の高いAvalancheの人気が高まり、TVL・価格ともに大きく上昇しました。
Solana,Avalancheの分析は、次回の「仮想通貨市場の第3四半期レポート②|3Qの勝ち組銘柄を分析し、次を考える」で詳しく解説していきます。
【関連】
以上のグラフは4月から9月(2Q~3Q)にかけての、OpenseaにおけるNFT取引量です。
ご覧いただいて分かる通り、8月~9月頭にかけてはNFTが活発に取引されていました。一時Amazonマーケットの1/10となる15億ドルの取引高を記録するほど市場は盛り上がっていました。
上記画像はNFT中でも最も知名度の高い「Crypto Punnks」です。赤枠はこの作品の昨年7月~の価格推移を表したもので、2021年3Qに入ってから価格が垂直的にに上昇していることが分かるかと思います。
Crypto Punksが上昇した理由としては、NFTが注目されている中、イーサリアム上で「最も古いNFT」として歴史的価値があると評されたからです。
さらに同作品は1万体に限定されており、今後新しい作品が出ることもないため、価値保存手段としても認識が広がりました。
この作品以外のCryptopunks作品や、Cryptopunks以外のコレクタブルも総じて価格が上昇しております。
(参考:opensea Bored Ape Yocht Club)
上記はNFTコレクタブルで人気シリーズとなっているBAYCの一覧です。こちらも同じくCrypto Punksのように価格上昇をしたのですが、今回注目してほしいのは、同じシリーズの価格です。
シリーズの価格を見てみるとすべての作品が42.5ETH付近で売買されています。これは作品すべてが同じような作風になっていることや、すでに同じ価格帯で取引されていることによって、このような現象が起きています。CryptoPunksにも同様な現象が見られ、作品の価格帯が一定になることはコレクタブル系NFTの特徴といえるでしょう。
またOpenseaの機能である「floor price(最低売出価格)」が表示されることによって、購入者はその時の相場価格を把握することができるようになり、上記の性質をさらに強めているようです。
(引用元:https://ultrasound.money/、CoinPartner作成)
上記はイーサリアム上でバーンされたガスが、どの市場・取引から来ていたかを表すものです。
一目見てOpenSeaの数値が桁違いであることが分かると思います。数ある分散型取引所(DEX)の中で現状トップのポジションであるUniswapや、基軸通貨としてもっとも普及しているテザー(USDT)とも大きく差をつけています。OpenSeaにおけるNFT取引は、イーサリアムエコシステム全体から見ても桁違いの規模だったということです。
(引用元:https://dune.xyz/PierreYves_Gendron/opensea---metrics)
NFT市場の盛り上がりは確かにあったものの、9月に入ってからは取引量は大幅に減少しています。
市場の声としてもバブルは弾けたのではないかと揶揄されています。
確かにNFTの取引量は下がってきてはいます。現状のマーケットはC2Cマーケットがメインですが、実は大企業がこの3Qから参入しており、マーケットの構造が大きく変化しそうになっています。
NFTへ参入している大企業一覧
・LINE NFT:8月24日にリリース発表
・楽天NFT:8月30日に発表。(2022年春リリース)
・GMOインターネット:8月31日よりNFTマーケット「Adam」リリース
・SBIグループ:9月30日NFTマーケットプレイス「nanakusa」を買収
3Qの終わりにかけて、尻込みしてしまったNFT市場ですが、大企業たちは長期的な市場拡大を見込んで参入を決めているようです。バブルは弾けた可能性はありますが、長期的にはまだまだ期待できると考えられます。
(Googleトレンドより引用:「nft」検索動向チャート)
以上はグーグルの検索において「NFT」がどれほど人気があるのかを示したグラフです。取引ボリュームは一気に落ち込みましたが、検索を見るとまだまだ興味を持っている人たちは多くいるようです。
現在はイーサリアム価格が下落トレンドにいるため、上昇トレンドに転じたときには注目している新規参入者たちが改めてNFTを取引する可能性があるでしょう。
NFTの今後の動向をより詳しく知りたい方はこちらの記事を是非ご覧ください。
ここまでは仮想通貨の主なマーケットである「BTC」「ETH」「DeFi」「NFT」について振り返りました。
次回のレポート「仮想通貨市場の第3四半期レポート②|3Qの勝ち組銘柄を分析し、次を考える」では、ここまでの動向を踏まえた上で4Qに注目しているプロジェクトやトークンを紹介していきます!
新たな投資先を考えている方は是非ご覧ください。
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著者: CoinPartner 編集部 CoinPartner