8月に入り急激な成長を見せたNFT市場。CryptoPunksやBored Ape Yacht Clubをはじめとして様々なNFTの人気に火がつきました。

しかし9月に入ると8月の盛り上がりもあまり見られなくなっており、「NFTバブルは終了してしまったのか?」とお考えの方も多いかと思います。

本レポートでは、8月~9月までのNFT市場動向を分析し、NFTバブルは果たして終了してしまったのかどうかについて考察していきます。

記事終盤では、今からNFTを購入するのは危険なのかについても触れていますので、ぜひ最後までご覧ください。

8月、OpenSeaを中心としてNFT取引量が急増

グーグル検索動向「NFT」

(Googleトレンドより引用:「nft」検索動向チャート)

NFTへの注目度は2021年3月ごろから徐々に高まり始めました。しかし当時はNFTの取引自体が活発になっていたわけではありませんでした。

取引が増え始めたのは5月~6月ごろのことで、その頃はイーサリアム最古のNFTシリーズと言われているCryptoPunksや、猿のイラストが特徴的なBored Ape Yacht Club(BAYC)などが注目されていました。

CryptoPunks OpenSeaより

(OpenSeaより:CryptoPunksのNFT一覧)

Bored Ape Yacht Club OpenSeaより

(OpenSeaより:Bored Ape Yacht ClubのNFT一覧)

その後はこれらのような主要NFTをコピーする動きが広まっていき、8月に入り、OpenSeaを中心として取引量が急増したというのがこれまでのNFT市場の大まかな流れになります。

NFTバブルはまだ継続しているのか?

9月も後半に差しかかりましたが、8月ほどの熱気を感じてない方も多いかと思います。SNS上では「NFTバブル終了」という声も。

果たしてNFTバブルは本当に終了したのでしょうか?ここからは実際のデータをもとに分析していきます。

NFT市場全体全体の熱気は8月末がピーク

opensea取引量 2021年4月〜9月データ

(引用元:https://dune.xyz/PierreYves_Gendron/opensea---metrics)

こちらのグラフは4月〜9月半ばまでのOpenSeaの取引量を表しています。

8月に入ってから取引量が急増し、同月半ば〜終盤にかけて凄まじい伸びを見せました。この部分の伸びを最近では「第一次NFTバブル」と呼ぶ声が浸透してきています。

実はこの第一次NFTバブル、イーサリアムエコシステム全体で大規模な送金詰まりを引き起こすほど凄まじいものでした。

特にOpenSeaの取引量はイーサリアム上のプラットフォームの中でも飛び抜けて高い数字を記録しています。

イーサリアム バーンされたETHの量とその分布

(引用元:https://ultrasound.money/、CoinPartner作成)

上記の画像はイーサリアム上でバーン(焼却)されたガスが、どのような市場・取引で用いられたものなのかを表しています。 データ期間は8月5日〜9月16日のものです。

まず一目見てOpenSeaの数値が桁違いであることが分かると思います。数ある分散型取引所(DEX)の中で現状トップのポジションであるUniswapや、基軸通貨としてもっとも普及しているテザー(USDT)とも大きく差をつけています。OpenSeaにおけるNFT取引は、イーサリアムエコシステム全体から見ても桁違いの規模だったということです。

 

ただ一口にNFTといっても、いくつかの分野に細分化できる点には注意が必要です。大きく盛り上がった分野もあれば、そこまで注目されていない分野もあるので、いま注目されている「NFT」とはどこの分野のことなのかを把握しておきましょう。

今回はその中でも特に注目度の高い「アート分野」「コレクタブル分野」「ゲーム分野」の動向をそれぞれ振り返ってみます。

(各分野のデータはhttps://nonfungible.com/market/historyより引用しています。)

NFTアート市場

まずNFTアート市場の代表的なプロジェクトとしては、Art BlocksSuperRareのようなNFTアートプラットフォームが該当します。

先ほど触れたCryptoPunksやBAYCなどは、この後紹介するNFTコレクタブル市場に含まれています。

NFTアート 取引量チャート

(販売数チャート:6月~9月)

NFTアート 取引金額チャート

(販売金額チャート:6月~9月)

NFTアート市場は8月の上旬に取引量が急増しました。しかしこの段階ではまだ取引金額自体はそこまで大きくなく、本格的に膨れ上がったのは8月半ばに入ってからでした。

9月に入ってからは取引量・取引金額ともに低下しており、盛り上がりは一旦落ち着いているようです。

NFTコレクタブル市場

NFTコレクタブル市場には、CryptoPunksやBAYCなどが該当します。

NFTコレクティブ 取引量チャート

(販売数チャート:6月~9月)

NFTコレクティブ 取引金額チャート

(販売金額チャート:6月~9月)

コレクタブル分野の取引量に関しては8月に入る前からある程度増加傾向にあり、8月下旬にその盛り上がりがピークに達しています。

8月はCryptoPunksやBAYCなどのコピー作品が主要マーケットへ大量に流通しており、それが結果的にオリジナルであるCryptoPunksやBAYCへの注目を集める一因となったと考えられます。

コレクタブル市場も9月現在は以前の盛り上がりはあまり見られなくなっています。

NFTゲーム市場

NFTゲーム市場には、ブロックチェーンベースのアクションゲームであるAxie InfinityGods Unchainedなどが該当します。

また今回データを引用しているNonFungibleでは、Tha SandboxのようなVR要素の強いブロックチェーンゲームは「メタバース」という別のジャンルとして分類されており、ゲームには含まれていません。

NFTゲーム 取引量チャート

(販売数チャート:6月~9月)

NFTゲーム 取引金額チャート

(販売金額チャート:6月~9月)

NFTゲーム市場は、アート・コレクタブルと比較すると目立った盛り上がりはありませんでした。

データを見てみると、8月終盤にかけて取引量/取引金額ともに鋭い山ができてはいるものの、他2つの市場と比べると8月はそこまで大きく盛り上がっていなかったことが分かります。

ブロックチェーンゲームはプレイするためにある程度高いリテラシーが必要になるため、他2つの分野と比べると新規参入者が参入しづらい状況だったのではないかと考えられます。

今からNFTに手を出すのは危険か?

ここからは上記の分析を踏まえて「バブルは果たして終了しているのか?」に対する見解を述べていきます。

また現状を踏まえた上で、NFT市場の今後についても解説していきます。

8月の過熱感はいったん落ち着いてきている

結論から述べますと、NFT市場全体で8月の過熱感はある程度落ち着いてきていると見ていますが、NFT業界の未来は長期的にポジティブだと考えています。

NFT全体の取引量は9月に入り減少したとはいえ、いまだ8月前半の水準を維持しています。バブルが弾けたというよりは、加熱しすぎた相場がいったん落ち着いてきている段階だと捉えられます。

しかし9月入ってからETHの価格が下落傾向にあり、その影響もあってか、NFT取引量の下落にも追い討ちがかかっているようです。

NFT取引量 2021年8月~9月チャート

こちらは記事冒頭でも登場したOpenSeaの取引量グラフです。

(引用元:https://dune.xyz/PierreYves_Gendron/opensea---metrics、該当部分が見やすいよう拡大しております)

イーサリアム(ETH) 2021年9月チャート

こちらは9月のETHチャートです。

NFT取引量の推移は、ETH価格が下落した際に相関が見られます。

現在取引されているほとんどのNFTはイーサリアム上で流通しています。つまりイーサリアムは現状NFT市場へのゲートウェイの役割を果たしていると言うことができ、NFTを実際に購入するためにはETHが必要になるということです。

そんな基軸通貨であるETHがいま下落トレンド真っ只中となっているため、新規参入者がETHを調達しづらく、NFT市場にも少なからず影響が出ているのではないかと考えられます。

長期的に見てNFT市場はポジティブ

Google検索ボリューム「NFT」

上記の画像は、Google検索全体で「NFT」という単語がどれだけ検索されているかを表しています。

8月半ば〜終盤にかけて大きく増加している点はOpenSeaの取引量チャートと類似しています。一方で9月に入ってからの動きを見てみると、減少傾向ではあるものの、8月半ばごろの高水準を現在でも維持していることが分かります。

NFT取引量・ETH価格ともにマイナス傾向ではあるものの、NFTに対する人々の注目度はまだ下がっていないということです。

Adam byGMO

(Adam byGMO公式サイト)

またGMOインターネットや楽天をはじめとした有名企業が続々とNFTのマーケットプレイスを立ち上げ始めている点にも注目です。

これまでNFTを取引するためには、ETH(仮想通貨)とメタマスク(ウォレット)を用意しなければならないケースが主流だったため、仮想通貨に対するリテラシーが最低限必要とされてきました。

しかしGMOインターネットや楽天のNFTマーケットプレイスでは、口座振込やクレジットカード決済に対応する動きが見られています。すでにAdam byGMOでは、NFTを日本円で購入することが可能です。NFTへの参入障壁が下がっていくことで、さらなる新規層の流入が今後予想されるでしょう。

生き残るNFTと淘汰されるNFT

現状、ただの画像データに高い価格がつけられている事例をよく目にします。NFTの価格は多くの場合、購入希望者によるオークション形式によって決定されるため、そのものの価値は彼らのみぞ知るところではあります。

しかし8月に入り目を見張るスピードで取引量が増加したことを踏まえると、本質的な価値の上に、短期的な熱狂感により生じた価値が上乗せされてしまっている可能性は否めません。今後この価値を維持していくためには、その資産の有用性が多くの人に定着していかなければ困難だといえるでしょう。

今後生き残る可能性の高いNFTを見分ける際は、

  • NFTそのものの資産性は高そうか
  • 保有する以外に使い道が用意されているか

の2点に注目してみてください。

例えば有名アーティストの作品や既存アートをNFT化したもの、高いユーティリティ性をもつゲーム内アイテム、歴史的価値の強い資産、などは比較的価値が認められやすい部類なのではないかと筆者は考えています。

今後さらに拡大する可能性のあるNFT市場ですが、購入/投資する際には以上の観点をもち慎重に判断することをオススメします。