評価基準 | 評価(20段階) |
流動性/市場要因 | 14点 |
ブロックチェーンの性能 | 17点 |
将来性 | 16点 |
開発力 | 17点 |
スキーム | 18点 |
合計 | 82点 |
SNXの価格は、執筆時現在1SNX=640円です(2022年2月時点)。
今後価格の伸び代はどのくらいあるのでしょうか?
各専門メディアが公開しているSNXの2022年~価格予想は以下の通りです。
仮想通貨SNXの
2022年~価格予想まとめ
これらの予想は、過去のSNX価格データからAIが算出したものや、専門のアナリストが立てた予想となっています。
どのメディアも上昇目線の予想をしています。特にWalletinvestorは一年以内に2倍上昇するという興味深い予想を立てています。
予想は必ず当たることを保証するものではありませんので、上記の予想を参考にしつつも、最終的な投資判断はご自分で下すようにしましょう。
シンセティックス(Synthetix)は、イーサリアム上に構築された分散型デリバティブ商品(合成資産)を生成するためのプロトコルです。
合成資産とは、仮想通貨はもちろん、法定通貨(円やドル)・コモディティ(石油や金)・株式といったそれぞれの資産の価格と連動したトークンのことです。ブロックチェーン上で作成されるため、24時間365日取引できるだけでなく、本来直接取引できなかった資産とも疑似的に取引できる仕組みが構築されます。
ユーザーはシンセティックスの独自トークンSNXを担保に預け入れる(ステーキングする)ことで合成資産を発行できます。合成資産を取引する際には独自トークンであるSNXが必要になり、支払われたSNXは合成資産の発行者(ステーキングユーザー)に報酬として分配されます。
シンセティックスはブロックチェーン上にてあらゆる既存金融資産を流通させようとしています。
シンセティックスは元々nUSDやnEURといったステーブルコインが流通する「Havven」というプロトコルでした。しかし2018年末にリブランディングを行い、現在の合成資産発行プロトコルに生まれ変わりました。
シンセティックスは既存の金融商品市場に対して大きな影響を与えるポテンシャルがあります。
シンセティックスでは、担保資産であるSNXと原資産価格の元データさえ引っ張ってくることができれば、どんなものでも合成資産として取り扱うことが可能です。 仮想通貨と既存の金融商品が直接トレードできるようになれば、これまで流動性が少なかったために取引が成立しにくかった市場を活性化させるでしょう。
また分散型プロジェクトであるため、中央集権取引所(CEX)へのサードパーティリスクがない点も大きな特徴です。
シンセティックスは2018年ごろに発足したプロジェクトです。一見爆発的な伸びは見られないものの、ビジョンを実現するために必要な機能を着実にリリースしており、開発力にはとても期待ができます。
シンセティックスの創業者はBlueshyftというデジタル決済会社を商業した経歴をもつケイン・ワーウィック氏という人物です。
元々はワーウィック氏率いる少数精鋭チームによって開発されていましたが、現在は開発コミュニティがDAO(自立分散型組織)化されています。
ユーザーは流動性プールにSNXを担保として預け入れることで合成資産を発行します。シンセティックス上で発行された合成資産はシンセティックスアセット(synthetic assets)と呼ばれます。
似たプロジェクトとしては、ステーブルコインを生成するMakerDAOがあります。
MakerDAOは、ETHやUSDCといったすでに市場から大きな価値が認められている資産を担保として採用しています。それに対してシンセスティックアセットの発行に必要な担保資産は、独自トークンであるSNXのみです。
ETHやUSDCなどと比べると通貨自体の信頼性が低いため、シンセティックスではよりたくさんの担保が必要になります。MakerDAOの担保率が約150%なのに対して、シンセティックスの担保率は約800%と非常に高い水準です。
たとえば1,000ドル分のsUSDを発行するためには、8,000ドル分のSNXを預け入れる必要があるということになります。
合成資産の取引にはSynthetix Exchange(別名:kwenta)という専用の取引所を利用します。
合成資産を取引する際には、イーサリアムのガス代とは別にSynthetix feeという手数料がかかります。 Synthetix feeは通常0.03%です。
支払われたSynthetix feeは、ステーカー(合成資産発行のためにSNXを預けている人)に報酬として分配されます。
シンセティックスは既存の金融市場に新たな流動性を形成します。
既存の金融市場が抱える問題点として、マイナーな銘柄の流動性が低いことがありました。たとえば新興国の法定通貨がその代表例です。マイナーな通貨は取引している人が少ないため取引相手がなかなか見つからず、見つかったとしても、希望価格と取引成立価格の間に大きな乖離が発生しやすいといった問題を抱えていました。
シンセティックスはブロックチェーンを用いて既存の金融市場と仮想通貨市場の流動性を接続することで、この問題を改善します。
具体例でいうと、
といったペアで取引できるようになるイメージです。
シンセティックスには他にも、GoogleやAppleのような企業の株式と連動したトークンも発行されており、同プラットフォーム上であればこれら全ての銘柄同士の取引が可能です。
このように既存の金融市場にある一需要がシンセティックスにある程度流れ込む可能性は大いにあると考えられます。
ただしシンセティックスを利用する際は、合成資産は原資産そのものではなく、原資産と同じ値動きをしているだけのトークンを用いることで擬似的に取引しているという点には注意が必要です。
ミラープロトコルはシンセティックスと同様、合成資産を発行し取引するためのプロトコルです。ミラープロトコルはTerraチェーン上に構築されています。
シンセティックスとの主な違いは以下の通りです↓
シンセティックス | ミラープロトコル | |
担保資産 | SNX | UST,LUNA,MIR その他ラップされたトークン |
担保率 | 約800% | 200~250% |
ブロックチェーン | イーサリアム | Terra |
TVL (2021年7月7日時点) |
1.28B | 1.98B |
合成アセットの 取引量 |
44.67M | 29.34M |
金利収入を得るときに、価格変動の少ないコインを担保にしたいという需要はとても大きいです。その観点で見ると、ステーブルコインを担保に採用しているミラープロトコルの方が、預け先としては適していると見ることができます。
実際に合成アセットの取引量はシンセティックスの方が多いのに対して、TVL(トータルロックバリュー)ではミラープロトコルの方が高い水準にあります。
セラムはsolanaチェーンに構築された分散型取引所(DEX)であり、近い将来、イーサリアムエコシステムと接続して合成資産を取り扱う計画があります。 セラムとsolanaチェーンはどちらも海外仮想通貨取引所のFTXを中心として開発されています。
FTXはすでに世界中の仮想通貨投資家たちに周知されている大人気の取引所です。BTC先物取引量では世界ランキング第4位に輝いていており(2021年7月末時点)、全体の取引量やユーザー数でもシンセティックスを大きく上回ります。
このようにFTXはすでに、仮想通貨界隈のデリバティブ取引所というポジションにおいて大きな知名度を得ています。今後セラムにて合成資産の取り扱いが開始されれば、それを聞きつけた多くの投資家たちがセラムに流れ込むことは容易に想像できるでしょう。
現状シンセティックスが人気である理由は、数年前から時間をかけて形成してきた流動性(先行者利益)に依存している部分が大きいと考えられます。そのため膨大な流動性が裏に控えるセラムの存在は脅威となる可能性があるでしょう。
シンセティックスへの新機能搭載/取り扱い銘柄の増加のような、ニュースでSNXの価格が上昇する可能性は考えられるでしょう。
また直近ではレイヤー2であるoptimismが導入される予定があるため、高速&低コストでの取引が実現されれば、利用者が増え、SNX価格に好影響をもたらすかもしれません。
価格が下がる主なタイミングとしては、
が考えられます。
また株式を取り扱うためには専用のライセンスが必要です。いくら擬似的とはいえ、株式と同じ値動きをするトークンを扱うわけですから、万が一規制当局に有価証券だと判断されてしまえば、取り扱いが厳しくなってしまうでしょう。
2021年7月末にはUniswapが規制懸念を理由に、シンセティックスが提供していた合成資産へのアクセスを制限しました。今回はUNI・SNXともに大きな価格変動は見られませんでしたが、今後ある程度規模が大きくなった段階で規制が入れば、インパクトはさらに大きくなると予想されます。
以上が、シンセティックス(Synthetix)と仮想通貨SNXについての解説でした。
筆者は、シンセティックスの現状の人気は先行者利益によるところが大きいと考えており、システムとしてはまだ地盤が固まりきっていない段階だと捉えています。しかしプロジェクトやSNXトークンへの信頼性がより強固になっていけば、やがて確固たる地位を築く可能性もあるだろうと見ています。
(ここに記載された見解は著者のものであり、必ずしもコインパートナーの見解を反映するものではありません。すべての投資にはリスクが伴うため、意思決定の際には独自に調査を実施する必要があります。)