The DAOとは?

The DAOとは、Ethereumのスマートコントラクトを使用して作られた非中央集権の分散型投資ファンドのICOプロジェクトです。The DAOが集めた資金は出資の資金として使われ、その出資先はThe DAOへの出資者によって決定されます。


まずそもそもイーサリアムやスマートコントラクトすらわからないという人は、下記のリンクからコインパートナーのEthereumについての記事を参照ください。

イーサリアム(Ethereum)は、時価総額第2位の暗号資産(仮想通貨)で、ビットコインを超えるほどのポテンシャルを持つかもしれないと言われています。イーサリアムの何が凄いのか、将来性はどのくらいあるのか、実際に買った方が良いのかを解説します!


時価総額第二位の暗号資産(仮想通貨)イーサリアムの最大の特徴であるスマートコントラクトですが、なにがすごいのかわかっていない人も多いかと思います。そのスマートコントラクトを、具体的にできることから将来性まで考察しました。

 

The DAOの仕組み

The DAOを使って出資しようと考えている人は、Ethereum固有の通貨EtherでThe DAOが発行するToken(トークン)を購入します。

Tokenは現実世界でいうところの株券のようなもので、Tokenを購入することによって、出資者はトークン所持数に応じて、「実際に出資するか否か」の投票権を得ます。

そして、このTokenの購入に使われたお金は、出資のための資金に使われる、という寸法です。


逆に、出資を受けたい人は、The DAOに出資を受けてどのような事業を興すのか、また、それに必要な出資額はいくらで、それによってどれくらいThe DAOの収益が期待できるか、というプレゼンを行います。

そして、承認がおりて出資されれば、The DAOはその事業の利益をToken所持者に分配するという仕組みです。

ICO(暗号資産(仮想通貨)資金調達)についてもっと知りたい方はコインパートナーの下の記事を読んでください!

今世界で大注目の新しい資金調達の方法であるICOですが、実際にどうやって行うのか、またどうやって参加するのか、メリットやリスクはなんなのか、わからない方も多いかと思います。そんなICOについて解説してみました。

 

The DAO事件の真相とは?

​このThe DAOは2016年の6月17日に80億円相当のETHが盗まれてしまいましたブロックチェーン技術を応用した自律ファンドとして軌道に乗りつつあり、暗号資産(仮想通貨)ユーザーの中で大きく期待され投資も集まっていただけに、このことは「The DAO事件」という名前で世界中に知られることとなりました。

80億円相当が盗まれた事件の内容

The DAO事件は、イーサリアムのブロックチェーン上に書かれたThe DAOのスマートコントラクトに致命的なバグがあったことが原因​です。

The DAOは上で述べたとおり、出資をするか否かを出資者の投票によって決めていました。投票結果によっては、自分が投資したいと思わない投資対象に対して投資しなければならないとい事態が起きてしまいますが、それを避けるために、スプリットと呼ばれる以下のような仕組みがありました。


①まず、出資するか否かの投票を行う。

②次に、①の結果を受け入れるか否かを出資者一人ひとりが選択する。

③受け入れた場合はThe DAO内にそのまま残る。受け入れなかった場合は、自分の所持Tokenに相当するEtherと、Tokenによって得られるはずの配当(reward token)を持って、The DAOとまったく同じ構造のnew DAOへ27日間避難する。その間移動させた資産をスプリット以外で他に移動させることはできない。


この③のnew DAOへの移動を実行するプログラムにおいて、資産を移動させる要求を短時間に何度も行うと、その要求が全て承認されてしまうというバグがありました。つまり、自分が保有してるのが1DAOだとした時に、投票結果に納得いかないから1DAOスプリットする、というリクエストを短時間で一気に送ると、それが複数回成立してしまうというものです。これが2回成立すると、自分はそもそも1DAOしか持ってないのに2DAO分ゲット出来てしまうことが起こります。

この脆弱性の攻撃によって、DAO内の全資産の約三分の一、8000万ドル(当時のレート)が盗まれてしまった、というのがことの顛末です。

この事件によって、暗号資産(仮想通貨)市場でのEtherとDAO Tokenの価値は急落してしまったわけですが、その後どのように対応したのかを、次で詳しく見ていきましょう。


The DAO事件当時のETH/USDTチャート(2016年6/6~7/7)


The DAO事件へのEthereumの対応策

さて、暗号資産(仮想通貨)市場での価値を大きく落としたEtherですが、Ethereumの対応策は3つありました。それは、「何もしない」「ソフトフォーク」「ハードフォーク」です。

後ろ二つについてはなんのこっちゃという人が多いと思いますので、その辺も含めて解説していきます。


対応策1 「何もしない」

特に対応はせずこれまでのイーサリアムのブロックチェーンを使い続ける、という案です。

そもそも、ソフトフォークやハードフォークをすることで盗まれたイーサを使用不能にしたり取り返したりすると、そもそものブロックチェーンが改ざん不能であるということ前提を覆すことになってしまいます。

なのでこれの良い点は最初プロトコル通り、イーサリアムのシステムの外で起きたことに関してはイーサリアムが関与しないという分散型プラットフォームとしての主張を貫けることです。

悪い点としては、イーサリアムを盗んだ人がものすごい量のイーサリアムを保有し、市場に対して尋常じゃない影響力を持ってしまうということがあります。叩き売りされるとイーサリアムの価値の暴落に繋がりますし、逆に保有されていると、今後イーサリアムがPoS(プルーフオブステーク)に移行する際にも弊害となってしまいます。


対応策2 「ソフトフォーク」

盗まれたイーサリアムを、使用することが不可能になるようなソフトフォークを行うという対応策です。

これはハッキングされてしまったイーサリアムは被害者のイーサリアムは戻ってきませんが、ハッキングした人のイーサリアムが使えなくなるので、今後大規模なハッキングをしようとするインセンティブを減らすことが出来ること、何もしなかったら犯人が市場に対して多大な影響力をもつことが防げるというメリットがあります。

デメリットとしては、特定の人のために仕様変更をするという、非常に中央集権的な行動となってしまうことです。


対応策3 「ソフトフォークの後にハードフォーク」

まず犯人のもとに渡ったイーサリアムを「対応策2」を使って、まず使用不可能して、その後にハードフォークをすることで盗まれた時の履歴を消去して盗まれた資産を盗まれたもともとのところに戻してあげるというものです。

対応策3の対応策2に対するメリットは、被害を受けた人達の被害が帳消しにされるという点。

デメリットは、もともとのチェーンと互換性がなくなる上、特定の人のため仕様変更という意味合いがもっと強くなってしまうというところです。これをすると分散型プロトコルの原則を完全に破ってしまうことになります。


The DAO事件の結末とEthereum Classic(イーサリアムクラシック)の誕生

最終的に実行された対応策は対応策3の「ソフトフォークした後にハードフォーク」でした。

ハードフォーク後に新たに出来たブロックチェーンがイーサリアムの正式なチェーンになりました。しかし、この決断はあまりにも中央集権的だったことから、全体の一割程度の人々から強い反感を受け、もともとのチェーンがEthereum Classicとしてその人達から支持を受けてそのチェーンも残るという結末に終わりました。


The DAO事件から学ぶべきこと​

この事件から、暗号資産(仮想通貨)やICOのリスクや、Ethereum運営の取った対応策の問題点など多くのことを学ばなくてはいけません。


スマートコントラクトをブロックチェーンに書くことの問題点

ブロックチェーンの長所として、過去に書き込んだものを書き換えられない、改ざん出来ないということがあります。

スマートコントラクトは、プログラミングによって書かれた契約で、バグが起きたり攻撃できる脆弱性がある可能性は多いにあります。こうなるとブロックチェーンのメリットである、「改ざん出来ない」というのが大きな問題点になってしまいます。

バグが起きたり脆弱性の攻撃を受けても対策や修正が出来ないからです。なので、The DAO事件を機に、スマートコントラクトをブロックチェーン上に書くことが本当に価値あることなのかという問題が浮き彫りになってしまいました。


Ethereumの対応と、そこから見える問題点

Ethereumは今回、ハードフォークという対抗策によって、ハッキングで奪われた資産を取り返しました。しかし、これは裏を返せば、Ethereumの運営は、運営側に不利益が降りかかるような状況になったとき、それをリセットしてハードフォークする権限を備えているということです。

これは、暗号資産(仮想通貨)の利点でもある、国家、政府といった中央機関で統制されない自由な経済活動という理想と相反するものです。現状このような「私的」とも言えるプラットフォームの利用はまだ起こっていませんが、今後暗号資産(仮想通貨)市場の規模が拡大するにつれて、同様のプロジェクトでもしかすると起こりうるかもしれません。


ちゃんと調べた上で暗号資産(仮想通貨)投資しよう

暗号資産(仮想通貨)やICOを投資対象としてみたとき、投資家が最も認識しなくてはいけないのはそのリスクです。ブロックチェーン技術自体の大きな問題はほとんどありませんが、それからスマートコントラクトによって派生した機関(まさに今回のthe DAOがそうですね)に大きな不備が存在していることは十分ありえます。

今後またこのような事件が起こることも十分ありうるわけです。もし、そういった機関の脆弱性が原因で投資家が大きな損失を出してしまったとしても、救済、保護するような法整備は現在まだ整っていません。

暗号資産(仮想通貨)のことをあまり調べずになんとなく投資している人がとても多いですが、暗号資産(仮想通貨)のリサーチを十分にした上で投資をするようにしましょう!

コインパートナーでは様々なアルトコインについての記事が書かれているので、そちらもぜひ読んでみてください!