暗号資産(仮想通貨)市場は​昨年と比較すると勢いはやや衰えた印象を持つ人が多いですが、ユースケースを見て見るとそれどころか市場の成熟に向けて着実に進んでいるように思えます。例えば世界各国の銀行ではRippleネットワークが導入され、政府を始めとした公的機関は暗号資産(仮想通貨)法案の制定に取り組むなど、普及に向けた準備段階であるという側面も垣間見えます。

そこで今回は、最近話題になっている暗号資産(仮想通貨)業界と大手金融機関の提携事業に関する情報をまとめました。

記事の概要

  • シンガポール政府直下VCがBinanceへの投資を発表。近い将来のBinance Singaporeローンチ現実性が高まる。
  • 号資産管理サービス会社Uphold​は暗号資産(仮想通貨)貸付サービスのローンチを発表。USドルに裏打ちされたステーブルコインで事業の信頼性を強調。
  • 暗号資産(仮想通貨)カード発行会社のWirexはi2cと提携してプリペイドカードを発行。アメリカでの暗号資産(仮想通貨)支払い普及を狙う。

 

Binanceはシンガポール政府直下のVCから支援を受ける

シンガポール政府投資公社Temasek Holdingsを親元にしたベンチャーキャピタルのVertex Venturesが暗号資産(仮想通貨)取引所Binanceへの戦略的投資を行うことを発表しました。発表に際して、両社がシンガポールにBinance Singaporeを共同設立する計画が明らかになっています。取引所設立の他にもVertex Venturesはシンガポールの暗号資産(仮想通貨)取引所を始めとした東南アジアでの暗号資産(仮想通貨)取引の発展を支援するために投資を行なっていくようです。両社の事業取引に関して、Binance CEOであるCZ氏は以下のように述べています。

Vertexは投資のエキスパートが集まった経験のある会社であり、多くの革新的なスタートアップに支援する実績を残してきた。我々は地方の金融システムに改革をもたらすべく、Vertexと提携を組みブロックチェーンエコシステムを構築するのを楽しみにしている。

CZ氏は今年9月にBinance Singaporeの運用テストを行なっていることをTwitterにて公表していましたが、今年末のローンチに向けて順調に進んでいるようです。顧客確認(KYC)及びマネーロンダリング対策(AML)が整えばすぐにリリースされることになるでしょう。

Upholdではステーブルコインを使った新サービスをローンチ

今年6月に米証券取引委員会からブローカーディーラーのライセンスを獲得した暗号資産管理サービス会社Uphold​は暗号資産(仮想通貨)貸付プラットフォームCredの支援を得て新プロダクトのローンチを発表しました。同社の新サービスUphold Earnでは、新しいステーブルコインのUniversal Dollarを購入することで最大5%の利子が配当されるようになります。その一方のサービスUphold Borrowでは顧客が担保として使用する暗号資産(仮想通貨)を元手に20万ドルを超える回転信用枠(注.一定の金額を払うことで顧客が自由に反復借り入れをすること)を運用するようです。さらには10月31日までに登録すると借り入れ手数料が1%オフになるなどのサービスが付きます。

同社はUniversal Dollarが米連邦準備制度理事会(FRB)によって保証されている米国銀行のドルにペッグされた通貨だと説明することで新たなステーブルコインの価値の裏付けを強調しており、Uphold CEOであるJP Thieriot氏は同社の事業について以下のように述べています。

Uphold EarnとUphold Borrowは法定通貨、ステーブルコイン及びブロックチェーンを同時に稼働させ、大衆消費者市場への利益を目的とした初のサービスとなっています。これまで暗号資産(仮想通貨)は以下の二つの理由によって市場から敬遠されてきました。一つ目はボラタリティーで、もう一つは暗号鍵を失ってしまえば資産を失ってしまうという恐怖です。Universal Dollarはこうした二つの問題に対応しています。

Wirexではアメリカでの仮想通貨支払い事業を画策

 イギリスのロンドンに本社を置く暗号資産(仮想通貨)カード発行会社のWirexは最近カナダで貨幣サービス業務の登録がおり、アメリカ市場での拡大を画策しているようです。Wirexは支払い処理プロバイダーi2cと提携し、複数の暗号資産(仮想通貨)に裏付けされたプリペイドカードのローンチを行うことを発表しました。オンラインストアを含めカード対応している場所ならばどこでも、ユーザーはカードのクレジットを暗号資産(仮想通貨)に換金して使用することができます。さらに、カードへの入金は現金でATMなからできるという高い利便性も兼ね備えています。

Wirex North AmericaCEOのVroon Modgill氏は今回のサービスローンチについて以下のように語っています。

我々の集計したデータによると、卸売業界において暗号資産(仮想通貨)の導入規模が大きくなってきています。一見驚くべきことかもしれませんが、ユーロッパ内でWirexカードの使用数が一番高い店舗はマクドナルドです。i2cとの提携によってWirexはアメリカ国内で最初に普及する暗号資産(仮想通貨)支払いプラットフォームになると考えています。