記事の概要

  • オーストラリア政府は輸出銀行と提携して国債発行を来週10月2日に実施へ。総額13億ドルの大規模な発行にイーサリアムブロックチェーンを使用。
  • 今回のオーストラリアの例にあるように、国単位での暗号資産(仮想通貨)技術を発行するためには銀行との親和性が必要。

 ​オーストラリア政府はイーサリアムブロックチェーンを利用

オーストラリア政府はイーサリアムブロックチェーンを利用して約13億ドル相当の国債発行を行うようです。

今週火曜日、同国外務省は連邦政府財務局が大手銀行のオーストラリア輸出銀行(OeKB)と提携を交わしたと発表しました。この背景にはオーストラリア政府は来週10月2日に債券発行を行おうとする意図があります。そして同銀行は正式な取引データを認証するために公証サービスを導入し、データの保存をブロックチェーン上に行うようであり、既にテストは実施済みとのことです。現地の報道機関Kleine Zeitung​が報道したニュースによれば、OeKBはパブリックネットワーク上のハッシュ値などのデータを保存するためにイーサリアムのブロックチェーン利用し、データの監督は内部のITリソースを活用すると報道しました。OeKBの管理委員会メンバーである​Angelika Sommer-Hemetsberger​氏はブロックチェーン利用について次のように述べています。

ブロックチェーン技術は銀行業務の効率性と質を飛躍的に向上させるポテンシャルを秘めている。そのため、我々はこの技術を利用しようと積極的に動いており、いくつかのプロトタイプも既にテスト済みである。この度はオーストラリア財務局(OeBFA)の代わりにブロックチェーン実装を実施することができて喜びを感じており、次のステップへむけての重要な一歩であると感じています。​

OeBFA​​はさらに、今回の実装が国内金融取引における初のブロックチェーン導入であることを強調しており、この新技術を「経済政策の焦点」としていることを追記しました。OeBFAのMarkus Stix​氏は「ブロックチェーンによって安全性が高まることで、オーストラリア政府が行う国際入札の信頼性を高め、市場に置けるオーストラリアの地位が向上します。そして、そのことが間接的なコスト削減に繋がることになるのです。」とブロックチェーン技術に対して高い期待を抱いています。

また、今回のオーストラリア政府以外にも国債発行のためにブロックチェーンが利用されているケースがあります。

ちょうど先月、世界銀行グループはオーストラリアの連邦銀行によって作られたプライベートブロックチェーンネットワークを使って、ランドマーク債券発行中に8100万ドルを調達したと発表しました。​そして今年7月にはMercedes-Benz​を販売する自動車会社のDaimler AG​がイーサリアムブロックチェーンを用いて1億ユーロ分のブロックチェーン国債を発行したと報道されています。

銀行との親和性が今後の鍵に​

​それではなぜ国の政策とも言える国債発行にブロックチェーンが採用されたのでしょうか。理由としては二つのことが考えられます。

一つ目は取引情報の保管についての安全性。様々な金融事業で使われているケースと同様に、ブロックチェーンの改ざん不可能性は不正取引を防止するという目的にて絶大な役割を果たしており、今後も様々な場面でブロックチェーンが活躍することでしょう。

それだけではなく、今回国がブロックチェーンを採用した大きな動機としては銀行との親和性も挙げられると考えています。ブロックチェーン技術は、それまで銀行がになっていた業務を民間の手で、自動で運営できるようにする可能性を秘めています。そのため銀行にとってはブロックチェーン技術は目の敵とも言える存在であり、その結果インド中央銀行のように暗号資産(仮想通貨)を含めて全面的に禁止措置を行う国が出てきてしまっているのが現状です。

そんな中で、今回のオーストラリアのケースでは国債発行の中心を担っているのはオーストラリア輸出銀行です。その他にも国単位での暗号資産(仮想通貨)の運用に積極的な韓国では、銀行がID認証システムをブロックベースで構築するなどしています。

このように、今後暗号資産(仮想通貨)やブロックチェーンが国の政策として普及していくためには銀行との親和性が重要な鍵になってくると考えています。