メッセージングアプリ「テレグラム」が、2023年末時点で4億ドル(約580億円)相当の仮想通貨資産を保有していると報じられている。英フィナンシャル・タイムズの報告によると、テレグラムはその収益の多くを仮想通貨関連の取引や販売活動から得ており、同社の仮想通貨エコシステムがいかに拡大しているかが浮き彫りになった。

仮想通貨ウォレットが生む収益

テレグラムが提供する「統合ウォレット」は、アプリ内で仮想通貨の保管、送受信、取引を行うことができる機能を備えている。このウォレットは、特にTONブロックチェーン上でのミニゲームやその他のアプリケーションの人気に伴い、ユーザーの間で急速に利用が広がっている。このウォレットを通じた取引や収集品の販売が、テレグラムの収益の40%以上を占めているという。

収集品とは、NFTのようなデジタル資産ではなく、ユーザー名や仮想電話番号といったブロックチェーンベースのデジタルアイテムを指している。これらのアイテムがユーザー間で取引される際、テレグラムは手数料を収益として得ている。

Toncoinとの関係と市場への影響

テレグラムはかつてToncoin(TON)の基盤であるTONブロックチェーンを開発していたが、現在ではこのプロジェクトはTON財団によって運営されている。それでもテレグラムは依然としてTONエコシステムに深く関与しており、Toncoinを売却することで昨年の価格下落前に利益を確保していたと報じられている。

テレグラムの創設者でありCEOであるパベル・ドゥーロフ氏がフランスで逮捕された事件は、Toncoinの価格に大きな影響を与え、短期間で20%以上の下落を引き起こした。この事件は、仮想通貨市場の脆弱性を改めて示すものであり、特にテレグラムのような影響力のあるプラットフォームが市場に与える影響の大きさを示している。

今後の展望と市場への影響

テレグラムが580億円相当の仮想通貨資産を保有しているという事実は、同社が仮想通貨分野において重要なプレイヤーであることを示している。特に、統合ウォレットや収集品販売を通じた収益の拡大は、テレグラムのビジネスモデルの多様化と成長を後押ししている。

今後もテレグラムが仮想通貨市場での影響力を拡大し続けると予想されるが、ドゥーロフ氏の逮捕に見られるように、規制リスクや市場の変動には注意が必要だ。特に、テレグラムが保有する仮想通貨資産が市場に放出される可能性がある場合、その影響は計り知れない。投資家としては、このようなリスク要因を考慮し、慎重な判断が求められるだろう。