スペインの中央銀行であるスペイン銀行(​Banco de España、以下BDEと表記​)は暗号資産(仮想通貨)が既存の金融インフラを発させ、財政政策の管理をサポートすることに役立つ可能性を秘めているとの報告書をリリースしました。

BDEの経済長官であるGalo Nuño​氏は報告書の中で、銀行間取引に暗号資産(仮想通貨)を使用することはスペイン経済にとってプラスの影響になるかもしれないと述べています。しかし、この報告書には中央銀行が独自のデジタル通貨(CBDC)を発行した場合にのみ金融政策の管理に効果が出ると書いてあります。

中央銀行はCBDC導入の潜在的可能性を探る

特筆すべきは、Nuño​氏が​暗号資産(仮想通貨)を導入することによる潜在的な可能性を各国の中央銀行が調査している根本的な動機を検証しているということです。そしてNuño​氏が作成していることも踏まえると、今回のBDE文書は暗号資産(仮想通貨)に関する包括的な概要であったり暗号資産(仮想通貨)のスペイン経済への影響をまとめたものではなく、財政の安定性を維持するためのCBDCの潜在的な可能性銀行準備金や金融政策の管理にどのように役立つかに主眼を置いて言及した報告書になっています。

報告書の調査結果によれば、暗号資産(仮想通貨)は法定通貨と比較して、国の通貨供給をより効果的に管理することができるようです。実際、Nuño​氏はBDEは現在流通しているフィアット通貨全てを正確に追跡できていないと指摘しています。

ブロックチェーンの利用は金利の管理をより適切に行える

BDE文書ではさらに、中央銀行が新しい紙幣を発行することで継続的にマネーサプライを増やすと記述していますが、それを制限する政策についてはほぼ言及していません。その一方で、ブロックチェーン技術を利用することで銀行は金利をより適切に管理できるようになると同報告書では説明しています。

しかし、このようにブロックチェーンベースの通貨が潜在的には大きな利益を生む可能性があることを認めつつも、Nuño​氏は​暗号資産(仮想通貨)は従来の銀行が完璧には理解していない全く新しい金融概念であり、導入するにはさらなる調査が必要になるだろうと提案しています。

また、今年5月には、スペイン銀行総裁のLuis Maria Linde​は暗号資産(仮想通貨)には「利益よりもリスクの方が大きい」とし、暗号資産(仮想通貨)に関する問題について言及しています。

暗号資産(仮想通貨)は支払い手段としての認知率が低く、ボラタリティーが極端に大きい上にサーバーの脆弱性にも問題があり、様々な不正取引に使用されてきています。​

しかし、Linde氏は同時に世界最大の会計事務所Deloitteが運営しているイベントでは運用コストを削減できる可能性があることから、金融システムの効率性が向上する可能性があると述べており、完全に否定的であるというわけではなさそうです。

さらに6月下旬には、スペイン国会の議員がブロックチェーンを利用して行政部門の改善を推奨するための新しい法案を提出するなど実用化に向けて着々と進んでいます。

コインパートナーの見解

​韓国をはじめとして各国の中央銀行でCBDC導入の動きを見せていますが、これには以下のようなメリットがあります。

紙幣発行のコスト削減

​透明性を利用した不正行為の防止

中央銀行が民間企業との直接取引ができるようになる可能性がある

​以上あげたようにCBDCには従来の金融システムから効率性を飛躍的に向上させる可能性があり、その基盤となっているブロックチェーンの有用性に大きな注目が集まっています。特に今回スペイン中央銀行がポジティブな見解を示した調査報告書を発表したことで、ユーロ圏での認識の普及が期待できます。

今はまだ実用化に向けて本格的に動き出す国が少ないCBDCですが、注目の暗号資産(仮想通貨)ニュースとして今のうちからそのメリットや仕組みについては把握しておくべきでしょう。