4月20日、EU議会がマネーロンダリングとテロ資金供与防止を目的として暗号資産(仮想通貨)の取り締まり強化を求める法律を可決しました。

​EUではテロが多発しているためテロ組織の資金源を断つことが大きな課題になっており、また、パナマ文書の流出でマネーロンダリングや脱税の実態が明らかになったことにより、それらの対策が急務となっていました。

​EUでのマネーロンダリング対策 ​

今回の法律​は2015年と2016年のパリ・ニース・ブリュッセルでのテロ攻撃とパナマ文書の流出を受けて制定されたEUのマネーロンダリング対策の指示を法律として制定したものと思われます。

欧州議会議員のクリスジャニス・カリンズ氏は「犯罪者の行動は変わっていない。犯罪者は違法な手段で得た資金やテロ資金を洗浄するために匿名性を利用する。この法律は会社の中の人の情報へのアクセスを拡大し暗号資産(仮想通貨)や匿名のプリペイドカードを取り締まるルールを強化することで、市民への脅威、そして金融分野への脅威に取り組むためのものだ」と述べ、この法案の意義を強調しました。

KYC(顧客確認)強化と仮想通貨取引所の登録制 

EU議会のこの新たな措置は暗号資産(仮想通貨)とプリペイドカードに付随するリスクに対処するためのものです。

デジタル通貨の匿名性をなくすために、取引所などは銀行と同様に顧客のKYC(Know Your Customer=顧客確認。銀行等で新規に口座を開設する際の一連の書類手続きのこと)が求められるようになり、さらに法定通貨の両替業者などと同様に登録制になるとのことです。​

また、今回の規制強化によって、EUの市民はEU域内で活動する企業の所有者の情報を得られるようになります。

この動きによってパナマ文書の流出で明らかになった資金洗浄・資産隠し・脱税等のためのペーパーカンパニーの撲滅が進む、とEU議会は考えているようです。

欧州議会議員のJudith Sargentini​氏は「毎年、私たちはマネーロンダリングやテロ資金供与、脱税によって何十億ユーロもの大金を失っています。このお金は病院や学校、インフラ建設のために使われるはずのものです。今回の法律によって対策は強化され、金融機関の義務が拡大されました」と述べ、今回の法律がもたらす効果に期待を寄せています。​

コインパートナーの見解​​

​今回のEUでの規制強化はマネーロンダリングや脱税等の対策に焦点をあてたものであり、決して暗号資産(仮想通貨)そのものに対する規制というわけではなさそうです。

暗号資産(仮想通貨)の悪用を厳しく取り締まれる体制が整うことで政府や人々も安心して暗号資産(仮想通貨)を活用することができるので、今後のEUでの動きに注目ですね。


(参考記事)

EU Parliament Votes to Tighten Controls on Cryptocurrencies and Require Registration of Exchanges

Anti-money laundering: MEPs vote to shed light on the true owners of companies