記事の概要

  • IBMは先週水曜日IoTとブロックチェーンアーキテクチャに関する報告書を発表。PoWにおけるエネルギー消費には効率化の余地があるとの見解を述べる。
  • 同社はノードをグループ化し、消費電力量とセキュリティに応じてマイニングを行うノードを決めるアルゴリズムを組み込むことでエネルギー効率化を図る解決策を提示。
  • IBMは今後ブロックチェーンをIoTに融合させ、自動化された確実性の高いビジネスモデルの提供を目標としている。

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IBMはPoWがより効率化されるという見解を持つ

​ビットコインや他の主要な仮想通貨を支えるコンセンサスアルゴリズムであるProof Of Workは大量のエネルギーを消費することが指摘されており、現在の大方の意見としてPoWに伴ったマイニング作業による消費電力量は小国一カ国分にもなるという認識が広まっています。しかし、IBMの研究部門の科学者はPoWを含めたブロックチェーンアーキテクチャを改善し、効率化を図る方法はあると考えているようです。

このようなニュースが広まったきっかけはIBMが先週水曜日ブロックチェーンアーキテクチャに関する報告書を発表したことにあります。報告書の中で、IBMはPoWを様々なユースケースに適用することで改善の余地を発見したことを発表し、今後はチェーンに接続されたデバイスをブロックチェーンノードとして実行していく事業計画を明らかにしました。

現在IBMが直面している問題はASICsやGPUsのようなPoWマイニングに特化したハードウェアと比べて自社のIoTデバイスはコンピューティング能力とエネルギーリソースが大きく異なっている点であり、結局のところIoTというのは自動化できるものならばなんでも製品化することのできる、非常に幅広い分野にまたがったものであることがネックになっていました。つまりはIoTネットワークに接続した全てのデバイスはPoWに必要なハッシュ関数の計算が出来るだけの性能を兼ね備えることはないだろうということが問題になっていたのです。

それ故にPoWの際の消費エネルギーを節約するための研究が行われるようになったとIBM研究員の報告書には記されています。

IoTにおける効率性というのは「ハードウェアリソースとエネルギーの最適利用」と定義できる。故に、効率性を兼ね備えるために、ブロックチェーン上のIoTデバイスはブロックチェーンの維持促進のためにリソースとエネルギーを最適に利用しないといけない。​

​そして、同社はネットワーク上の全てのノードをマイニングに費やす必要はないという考えを基盤にして解決策を提案しました。

IBM研究員はブロックチェーンプラットフォームをシミュレートした環境にてノードを250から1000の小さなグループに分け、消費電力の量に応じて各グループがこなさなければならないマイニングの量の比率を決定するアルゴリズムを組み込むようです。これにより、セキュリティを維持しながら消費エネルギーを節約できると研究員が述べています。今現在私たちはブロックチェーンが完全にフラットなP2Pシステム、つまり全てのノードが性能の面で全く対等なものであり、同じ性能を持ったノード同士がマイニングによって競い合うものだと思い込んでいます。しかし、IBM研究部門のテックリードである Emanuele Ragnoli​博士はCoinDeskに対して「私たちは日常生活において全員が全く同じ仕事をする必要はないだろう?」と既存の見解について異議を唱えており、ここから常識を裏返した同社の解決策の糸口が垣間見えます。

Ragnoli​博士はノードを能力に応じて階層化し、個々のノードに特定の役割を与えるアルゴリズムを実装した上でペアーによって異なる仕事を持つようになる「レイヤードエコシステム」を創り上げることが目標であると述べています。さらに同氏は「ビットコインマイニング機器のように、ノードの中にはPoWに全リソースを費やせるものもあります。というのもブロックチェーンの仕組みを分析して、ノードがその仕事をこなすのに適しているかを実際に判断して最適なノードクラスターに配置しているからです。」と追記しており、IBMがノードごとに役割の異なる、いわば適材適所の役割分担がなされるネットワークを作り上げようとしている意図が見えてきます。

こうしたノードグループによって運用される「サブブロックチェーン」はCosmosやPolkadotなどの相互運用技術を用いてネットワークに接続されるようになることが目標であると考えているようです。このようにしてノードをネットワークに寄せ集めることをIBM研究チームは“Hybrid IoT Blockchain”と名付けて、実用に向けた準備を行なっているようです。

AmazonやMicrosoftなど世界的企業がブロックチェーン事業に着手する中、IBMも例外なく「ブロックチェーンである必然性を見極め、正しい調理法で良さを引き出したい」(日本IBM株式会社高木隆、早川勝氏)と述べているように、ブロックチェーンが取引の信頼性を確保するという点に大きな可能性を見出しているようです。具体的にはIoT分野にブロックチェーンやAI、ロボテックスを融合させて「自動化によって安全性と確実な処理速度が担保されたビジネスモデル」の提供を行うことを目的としています。そのために同社は適切なロードマップ作りを第一に考えて事業を行なっています。こうしたIBM社の姿勢からも、今回提案された、新たなブロックチェーンモデルが実現する日も遠くないのではないでしょうか。