「スケーラビリティ問題って何?」
こう思ってはいませんか?
たしかにスケーラビリティ問題は仮想通貨特有なものな為、どのような問題なのかを理解するのが難しいと思います。
この記事ではコインパートナー編集部が、スケーラビリティ問題とはどんな問題なのか解説した上で、4つの技術的な解決策について紹介しています!
さらに、スケーラビリティ問題に対処したアルトコインも3つ紹介しています。
早速この記事を読んでスケーラビリティ問題についてしっかりと理解してしまいましょう!
スケーラビリティ問題のまとめ
そもそも、ビットコインのスケーラビリティ問題とは、ビットコインのブロックサイズがボトルネックになって1ブロックに書き込めるトランザクションの数が限られ、データ処理速度が遅くなり送金や取引処理に時間がかかってしまうという問題です。
参考:ブロックチェーン技術のスケーラビリティ問題への対応 - 日本銀行決済機構局
スケーラビリティ問題について理解する上では、まずはブロックチェーンとマイニングについて知る必要があります。
ここではこの2つについて紹介していきます。
ブロックチェーンとは分散型取引台帳の一つで、いくつかの取引をまとめたものをブロックといいます。それらをつなげることで台帳にするのでブロックチェーンと呼ばれます。
ブロックチェーンはネットワーク上に存在し、中央管理者がいません。そのため、誰でも過去の取引全てを確認ができますが改ざんはできません。
なぜ改ざんできないかというと、マイニングという膨大な計算量を必要とする技術(後述)によってブロックチェーンに書かれた取引は絶対正しいということが証明できるからです。
ビットコインは実際に存在するわけではなく、今までの取引が全部ブロックチェーンに書いてあって、さらにそれがマイニングによって正しいことが保証されているので、自分がどれほどのお金を持っているか確認できるという仕組みです。
参考:ブロックチェーンって何? - 全国銀行協会
じゃあマイニングとは何かという話ですが、適当な数を決められた式に代入して、ある条件を見たす数字を見つける作業です。
各ブロックに対応する数字を見つけるとそのブロックのマイニングが成功となり、新たなブロックが見つけられ、取引がブロックチェーンに書き込まれます。
なぜこんなことをする第三者が存在するのかというと、このマイニングですが、成功させた人にはマイニング報酬として新たにビットコインがもらえます。そのインセンティブによってマイニングは成り立っているわけです。
この作業が金鉱の採掘に似ているためマイニングと呼ばれます。
詳しく仕組みを知りたい方は、こちらの記事を見て下さい!
参考:Bitcoin: A Peer to Peer Electronic Cash System - Satoshi Nakamoto
スケーラビリティ問題とは一つのブロックに対して書き込めるトランザクションの数が決まっているために、取引の処理が遅延してしまう問題です。
特にビットコインについてスケーラビリティ問題はかなり大きな問題になっています。
ビットコインでは、ブロックサイズが1MBに制限されているため、データの処理速度が他の決済システムに比べてとても遅く、将来的にビットコインがさらに普及し日常決済で使われるとなったときにこれは大きな問題になります。
これをしっかり解決していないと決済における暗号資産(仮想通貨)の利便性(銀行の取引よりも送金が早い、手数料が安い)などの長所が失われてしまうため、暗号資産(仮想通貨)の今後の普及や、価格にも大きく影響してしまいます。
現在は様々な解決策が出されており、この問題に対処したアルトコイン(ビットコイン以外の暗号資産(仮想通貨))も数多く登場しています。
スケーラビリティ問題を解決する方法
ここではスケーラビリティ問題を解決する方法を4つ紹介します。
参考:ブロックチェーン技術のスケーラビリティ問題への対応 - 日本銀行決済機構局
フォークとは、簡単にいうと暗号資産(仮想通貨)のアップグレードです。
その中でもソフトフォークとハードフォークに分かれるので、以下でそれぞれについて解説していきます。
ソフトフォークとは、イメージとしては条件を厳しくするもので、今までのものに追加して新たな規則を加えるアップグレートのようなものです。
そのため通貨としては今まで使っていたものをそのまま使えます。
チェーンが永久的に分裂するのではなく、新たな検証規則に基づいて承認されたブロックを、前の古い検証規則に基づいて承認されたものにつなげることで、新しい検証規則で承認されてできたブロックと、古い検証規則で承認されたブロックが一時的にできます。
ですが、この分裂は一時的なもので、一度ソフトフォークを行うと昔の検証規則で承認されたブロックチェーンに戻す(ダウングレート)ことはできません。それをするためにはハードフォークしなければいけません。
ハードフォークはソフトフォークとは違い、昔の検証規則を完全に無視して、新たな検証規則を適用するフォークのことで、昔のブロックチェーンとの互換性がありません。
そのためブロックチェーンは永久的に分裂し、ハードフォークを行うと「アップデート前の通貨」と「アップデート後の通貨」が生まれ、それらは全く別の通貨になります。
ハードフォークでは昔の検証規則によって承認されるブロックチェーンはそのまま存在するので、新たな検証規則で承認されるブロックチェーンに不具合が生じたときに昔の検証規則を使ったブロックチェーンに戻ることができます。
ただ、単純に新たな通貨が生まれるということはマイナーがどちらの通貨をマイニングするか、によってハッシュレートが変わってくるので、一部のマイナーによって価格操作される可能性があるというのはリスクです。
segwitとはSegregated Witnessの略で、簡単にいうとブロックあたりのトランザクションの大きさを小さくすると言う解決策です。
具体的には、今はトランザクションごとに行っている電子署名を他の場所に保管することで、ブロック内にあきを作ることでブロックサイズを小さくします。
Segwitのデメリットとしては、一回導入したら以前の状態には戻れず、導入してその後になにか不具合が生じても解決できません。
現状のビットコインでは、このsegwitは既に導入されています。しかし、スケーラビリティ問題を恒久的に解決するには至っていません。
ブロックサイズがボトルネックになっているならブロックサイズをそもそも大きくすればいいというのは、自然な発想かと思います。
しかしブロックサイズを上げるというのはハードフォークで、デメリットもあります。
そもそもブロックチェーンは利用者全員で取引台帳を監視するというのがビットコインの特性でした。しかしブロックサイズを拡大すると、ブロックチェーンのデータが大きくなりすぎて普通のPCでは保存するだけの容量がなく、大容量端末が必要になります。
そのため、一部のユーザーによってのみブロックチェーンが管理され、ブロックチェーンの全員で監視するという特性がなくなってしまいます。そのため中央集権的になってしまいます。
ライトニングネットワークとは、オフチェーン上でデータ集約やトランザクション処理を行い、効率化されたトランザクションのみをブロックチェーン上で処理するものです。
これによりブロック容量に余裕を持って処理することができ、高速送金や少額送金が可能になります。
しかしメリットもある一方で、マイナー手数料が減ることでマイナーのインセンティブが下がることや、セキュリティ面の問題など課題も少なからずあります。
ライトニングネットワークについて詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてみてください!
大手マイナーは、Segwitが導入されると計算速度を上げる機械であるASIC Boostが使えなくなるかもしれないという懸念があるためSegwit導入には反対しており、ブロックサイズをあげるという解決策を推奨していました。
これに対し開発者・ユーザーはsegwit導入を支持しており、この両者間の対立もあって思うような解決策につながっていません。
対立の結果として、ハードフォークによる新しいアルトコインの誕生という形でスケーラビリティ問題に対処した例も数多くあります。
また、ビットコインのマイニング承認アルゴリズムにも問題があります。
ビットコインのマイニング承認アルゴリズムであるPoW(Poof of work)というのは、マイナーはみんな平等にマイニングを行い、初めて計算に成功したものにマイニング報酬を与えるというものです。
そのため承認作業を成功させるために膨大なエネルギーを必要とし、この負担によってスケーラビリティ問題が発生してしまうのです。
これに対する承認システムとしてPoS(Proof Of Steak)というアルゴリズムがあげられますが、これはマイナーそれぞれの暗号資産(仮想通貨)の保有量が多いほどマイニングの成功がしやすくなるシステムとなっています。
そのためPoWより効率的に承認作業を進めることができ、スケーラビリティ問題の解決にもつながっています。
スケーラビリティ問題に対処しているアルトコインの例
スケーラビリティ問題に対処しているアルトコインは数多くありますが、その中でもここでは上の3つのアルトコインについて紹介していきます。
ビットコインキャッシュ(BCH)は2017年8月にビットコインから分裂(ハードフォーク)してできた暗号資産(仮想通貨)で、誕生後から大きな人気を誇っており2020年4月時点では5位の時価総額を維持しています。
ビットコインはブロック内のトランザクション容量が1MBだったためスケーラビリティ問題を抱えていましたが、これに対しビットコインキャッシュではブロック内トランザクションを32MBまで広げ、スムーズな処理を実現しました。
そのほかにも手数料を安くするなど、ビットコインより使いやすい暗号資産(仮想通貨)を目指して日々アップデートを繰り返しています。
イーサリアムはビットコインに次ぐ人気を持つアルトコインで、時価総額は2位(2020年4月)となっています。
契約者間の契約を自動で履行するスマートコントラクトという独自技術や、管理者を必要としないDApps(分散型アプリケーション)など、革新的なシステムを実装しているイーサリアムですが、PoWを用いてこれらのシステムを駆使していたためスケーラビリティ問題を抱えていました。
そこで、今後のアップデートにおいてPoWからPoSへの移行を完了させ、よりスムーズなトランザクション処理を実現させようとしています。
PoSへの移行が完了すれば、1秒あたりのトランザクション量は現在の約7000倍以上になると想定されており、今後の動向に注目が集まっています。
イオス(EOS)は2017年に誕生した暗号資産(仮想通貨)で、イーサリアムのスマートコントラクトを利用し、最終的には独自のプラットフォーム「EOS」を構築することを目指しています。時価総額も2020年4月現在8位となっており、今後に期待がかかる暗号資産(仮想通貨)の一つです。
EOSはコンセンサスアルゴリズムに「DPoS(デリゲイテッド・プルーフ・オブ・ステーク)」と呼ばれる、PoSの発展形ともいえるしくみを利用しています。
これは、EOSの保有量が多いほどマイニングの権利を獲得する投票権が多く与えられ、その投票で選ばれた人がマイニング権を得られるという仕組みになっており、PoWとPoSのデメリットを補ったシステムになっています。
今後のアップデート次第では、将来的に1秒あたり数百万ものトランザクションを処理することが期待されています。
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ここではスケーラビリティ問題に関するQ&Aを見ていきましょう。
スケーラビリティ問題は特にビットコインで大きな問題となっています。
ビットコインは暗号資産(仮想通貨)の中でも圧倒的な人気を誇っている通貨であるだけに、将来さらに普及していった際にスケーラビリティ問題による影響が大きくなってしまうことが懸念されているのです。
スケーラビリティ問題によって引き起こされるデメリットでユーザーが一番影響を受けるのは取引速度が遅くなることでしょう。
これは従来の暗号資産(仮想通貨)のメリットである送金速度が早いといった特徴が失われてしまうことにも繋がるため、今後の価格変動にも影響を与えることになります。
現在はこのスケーラビリティ問題に対処しているアルトコインなども出ているため、解決に向けた動きはわずかながら進んでいると言えるでしょう。
スケーラビリティ問題のまとめ
スケーラビリティ問題がどれほど解決しなければいけないものなのかはわかったかと思います。
この解決策は様々出ていますが、どれもデメリットがあり永久的に解決するものではないと思います。
そのため、もしこの問題を解決できる通貨が登場したら、ビットコインに変わる存在になるのではないでしょうか。
また、ビットコインも開発が活発なので、スケーラビリティ問題を解決するようなソフトフォークを実施する可能性もあります。
今後も開発状況をチェックしていきましょう!