「2021年の暗号資産(仮想通貨)価格はどのように変化するのか?」その疑問に答えるため、2021年に注目すべきBIGファンダを8つ紹介する。

市場にポジティブな影響を与える要因を5つ、ネガティブな影響を与える要因を3つに分けて紹介していく。

ポジティブな影響を与えるであろう5つの要因

ポジティブな影響を与える
5つの要因

  1. SECによるビットコインETFの承認
  2. イーサリアムの先物取引開始
  3. イーサリアム2.0の進捗
  4. 仮想通貨の税制改革
  5. 各国の金融緩和政策による影響

1.SECによるビットコインETFの承認

ビットコインETFとは、ビットコインの価格と連動する上場投資信託のこと。

去年9月にバミューダ証券取引所で世界初の仮想通貨ETFが誕生したが、そこまで大きな話題にはならなかった。原因としてはバミューダ証券取引所の知名度の低さや、SEC(米証券取引委員会)が承認したわけではないという点がポイントだろう。

これまでSECはビットコインETFの申請をすべて否認してきた。SECはこれまでの非承認の理由として、主に相場操縦リスクや不正行為に対する対策が不十分である点を指摘している。

ビットコインは年々ネットワークの分散化が進んでいるため、このような問題点も徐々に解消されていくことが予想される。SECの承認を得て巨大な米国マーケットへ上場することができれば、機関投資家のマネーが流入してくることになり、BTC価格の上昇を後押しすることになるだろう。

2.イーサリアムの先物取引開始

2月8日よりCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)にて、イーサリアム(ETH)の先物取引が開始される予定となっている。

米国最大級の金融先物取引所への上場ということもあり、世界中の仮想通貨(暗号資産)投資家たちが注目するビッグファンダだ。

ETH先物の上場にはCFTC(米商品先物取引委員会)の承認が必要となるため、正式に取り扱われることになればイーサリアムの金融商品としての信頼性を高めることになり、機関投資家の参入を加速させるだろう。

現在ETHは日足単位で大きな上昇トレンドを形成している最中であり、去年12月下旬には700ドル(2018年5月以来の高値更新)を突破する勢いを見せた。

果たして先物取引のスタートがこの流れを後押しすることになるのか、年始早々目が離せない。

3.イーサリアム2.0の進捗

去年12月1日、ついにイーサリアム2.0(以下、ETH2.0)のブロックチェーンにあたるビーコンチェーンが起動した。

イーサリアムはこれまで約5年間にわたり「フロンティア」「ホームステッド」「メトロポリス」と3段階の大型アップデートを行ってきた。ETH2.0は別名「セレニティ」とも呼ばれ、この長きにわたる大型アップデートの最終段階となる。

ETH2.0では、コンセンサスアルゴリズムがPoWからPoSに変更するほか、シャードと呼ばれるチェーンに、グループ分けしたノードを配置することで負荷を分散させる「シャーディング」が実装される。これによりスケーラビリティを大幅に改善し、より持続可能なネットワークとすることを目指している。

元々ビーコンチェーン起動後は3段階のフェーズに分けて開発が進められていく予定だったが、去年11月のAMA(Ask Me Anything:何でも聞いてね)でイーサリアム考案者のヴィタリック・ブテリン氏は、各フェーズを並行して進めていくことでETH2.0への移行を予定より早めることができる可能性を示唆した。元々のロードマップではETH2.0への移行は2022年の予定となっていたが、進捗次第では2021年内にリリースされる可能性もあるのだろうか。

前項のCME先物の件も踏まえると、今年はイーサリアムにとって飛躍の一年となりそうだ。

4.仮想通貨の税制改革

現在日本では、仮想通貨(暗号資産)の売買で得た利益は雑所得に分類され、総合課税方式に則って最大55%の税率がかかる仕組みとなっている。

これは他国と比較しても非常に高い水準であり、日本における仮想通貨(暗号資産)およびブロックチェーン市場の活性化を阻害してしまう可能性があるとして、これまで度々議論されてきた。

去年11月には、日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)が税制改革の要望書を自由民主党に提出したことで大きな話題となった。

要望書の骨子は以下の通り↓

  1. 暗号資産のデリバティブ取引について、20%の申告分離課税とし、損失については翌 年以降3年間、デリバティブ取引に係る所得金額から繰越控除ができることを要望する。

  2. 暗号資産取引にかかる利益への課税方法は、20%の申告分離課税とし、損失について は翌年以降3年間、暗号資産に係る所得金額から繰越控除ができることとする。

  3. 暗号資産取引にかかる利益年間20万円内の少額非課税制度を導入する。

去年5月に改正された資金決済法において、仮想通貨(暗号資産)が正式に金融商品として扱われるようになった。これを受け、税制面に関しても他の金融商品と同様、一律20%の申告分離課税にすべきではないかという内容だ。

税金面での負担が軽減すれば、日本人ユーザーの取引はこれまで以上に活発化することになるだろう。

また現時点で、ビットコインの月間取引高(法定通貨建て)において、日本円(JPY)は全体の約3分の1と大部分を占めていることから、BTC価格を押し上げる要因の一つとしても機能する可能性がある。

 

5.新型コロナウイルスによる金融緩和政策の拡大

現在、新型コロナウイルスの影響を受け、各国政府が大規模な金融緩和政策を行っている。これによりダウ平均は過去最高値を更新し、日経平均は80年代のバブル景気後の水準まで回復した。しかし一方で実体経済との乖離も懸念されている。

株価の割安・割高を見る主な指標としてバフェット指数というものがある。これは株価を名目GDPで割ることで求めることができ、高ければ高いほど株価が割高であることを示す。つまり実体経済との乖離を読み取る目安として用いることができるのだ。

バフェット指数 米国

(参考:岡三証券資料より引用)

米国のバフェット指数は新型コロナの流行とともに大幅に下落。しかしその後すぐさま回復し過去最高値を更新し続けた。

株価と実体経済との乖離が拡大するとインフレを懸念した人々が資産をゴールドのような安全資産に避難させる傾向がある。近年では別名「デジタルゴールド」と呼ばれるビットコインにも資金が流れる傾向が見られるようになった。

2020年中盤〜後半にかけて、ナスダック上場企業のMicroStrategyが計1,000億円分以上のBTCを購入したことは記憶に新しいだろう。同社CEOのMichael Saylor氏は米ドルの価値低下に対するリスクヘッジの手段としてBTCの購入に至ったとしている。他にも米国大手Square社が53億円相当のBTCを購入したことも大きな話題となった。

今後もこれまでのペースと同様、もしくはそれ以上のペースで金融緩和政策が行われていけば、法定通貨に対する人々の不安が高まり、ゴールドやBTCへの資金流入が加速することが予想される。

もちろん新型コロナの感染拡大が一刻も早く収束し、世界経済が再び潤う未来を願うばかりだが、2021年に突入した現在でも感染者数には未だ歯止めがかかっていない。それどころか増加傾向にある。

しばらくの間は、安全資産としての地位を確立しつつあるビットコインにとってはプラスの影響をもたらすことになるだろう。

 

ネガティブな影響を与えるであろう3つの要因

ネガティブな影響を与える
3つの要因

  1. リップル社訴訟問題
  2. テザー社訴訟問題
  3. 各国のBSNプロジェクトの進捗

1.リップル訴訟問題

去年12月下旬、SEC(米国証券取引委員会)がリップル社に対して訴訟を起こしたことが大きな話題となった。

SECは、リップル社が2013年から約7年間の間、有価証券の登録を行っていない暗号資産(XRP)を販売して資金調達をしていたと指摘。以前よりXRPが証券に該当するのか否かは度々議論がなされてきたが、ついに今回SECが訴訟に踏み切った展開となった。

これをきっかとしてXRPは大幅な下落トレンドに突入し、前日比約45%以上の大暴落となった。

これを受け、XRPの取引を一時停止する取引所も続出してきている。国内取引所だけでなく、BitstampやCoinbaseといった海外の大手取引所でも取引が停止する事態に発展し、これが売り圧をさらに加速させたと見られる。取引再開に関しては裁判の進捗に依存すると考えられるため、しばらくの間は流動性の低い状態が続くだろう。

今年はXRPにとって非常に過酷な一年となりそうだ。

2.テザー訴訟問題

テザー ロゴ

テザー(USDT)はTether社が発行する仮想通貨(暗号資産)で、現在時価総額ランキング3位に位置づけている。

USDTは米ドル(USD)にペッグされたステーブルコインで、1USDT=1USDで価格が保たれる仕組みとなっている。この仕組みを成立させるためには、発行母体であるTether社が、発行したUSDTの枚数分だけUSDを裏付け資産として保有していなければならない。

しかし数年前から、Tether社が裏づけ資産であるUSDを十分に確保していないという疑いが浮上してきた。これが俗に言う「テザー問題」だ。

Tether社は2019年にニューヨーク司法当局(NYAG)から財務記録の提出を要求されていたが、Tether社はそれに応じていなかった。時間の経過とともに徐々に風化してしまったかとも思われたが、去年の9月、今度はニューヨーク裁判所から再び財務記録の提出命令が下される事態へと発展。痺れを切らしたNYAGが裁判所に法的申請を行った形となった。これに対してTether社の運営元であるiFinexはNYAGに協力する姿勢を見せている。

また当初は2020年末に提出期限が示されていたが、要求された資料の範囲が広く、年末までに間に合わないことから、NYAGがニューヨーク裁判所のCohen担当判事に対して2021年1月15日までの期限延長を申請した。現在はその返答待ちとなっている。(執筆時12/30時点)

果たして暗号資産(仮想通貨)界隈最大の謎が今年ついに解き明かされるのか、要注目だ。

3.各国のBSNプロジェクトの進展

BSNとは Blockchain Service Network ブロックチェーン サービス ネットワーク の略称で、DApps(分散型アプリケーション)を開発・稼働させるための中央集権プラットフォームのこと指す。主に中国をはじめとした国家で開発が進められている。

DAppsの開発プラットフォームと言えばイーサリアムやEOSなどが真っ先に思い浮かぶだろう。しかし彼らは非中央集権のプラットフォームだ。この点でBSNとイーサリアム・EOSとは異なる。

 

BSNは中央集権という特徴を生かすことで、非中央集権で足枷となっていた欠点を解消することができる。その特徴の一つとしてあげられるのが安定した手数料だ。

例えばイーサリアムネットワークを利用する際にはGASという手数料がかかる。しかしGASはETHの価格変動によって変化するため、ETH価格が高騰すればGAS代も高くなり、結果的に開発者たちに大きな負担をかけてしまっていた。

一方で各国が進めているBSNプロジェクトでは、ネットワーク手数料に法定通貨(≒ステーブルコイン)を用いるため、手数料の負担が安定している。この点が非中央集権型より優れているメリットだと言えるだろう。

さらにBSNはパブリックチェーンと統合することが可能だ。これはイーサリアムやEOSのネットワークといった既存のパブリックチェーンとデータが共有できるということを意味する。すでに中国が進めるBSNプロジェクトでは、イーサリアム・EOS・テゾス・ネオのような主要チェーンと統合が完了しており、2021年第一四半期中には計24のパブリックチェーンと統合することを予定している。2021年前半にはこれらのチェーンと相互にデータの共有が可能になるという。

各国のBSNプロジェクトが実用化されていけば、既存の非中央集権プラットフォームから開発者が流出していく可能性も否めない。

まとめ

以上、2021年の仮想通貨(暗号資産)市場に大きな影響を与えうる8つの要因を紹介した。

最後に一つ注意していただきたいのが、市場価格はたった一つのファンダ要因のみで動くわけではないということだ。

人は何か一つの要因に魅せられてしまうと、それに関連した情報しか集めなくなる傾向がある。市場価格はポジティブな要因とネガティブな要因、そして投資家心理といったありとあらゆる情報が複雑に混ざり合って決定している。価格を予想する際は、自分の中にある認知バイアスと向き合い、中立的な立場から分析することが重要だ。

今回紹介した内容も、あくまで数ある分析材料の中の一つとして活用していただきたい。