インド中央銀行への情報開示請求を発端に禁止令の撤廃を求める


インドの中央銀行であるReserve Bank of India​(以下RBI)は少なくとも2013年以降、暗号資産(仮想通貨)に投資するリスクを市民に対して繰り返し警告しいています。そして2017年に2度の警告を行なった後、4月に全てのインドの銀行が暗号資産(仮想通貨)業務を取り扱うことを禁止する命令を下しました。このことに関して、RBIは結論に到るまでに十分な調査を行なっていたわけではなかったということが発覚しました。地元の弁護士であるVarun Sethi​氏が提出した情報権利法(RTI)申請に対する回答で、中央銀行は禁止令を下す前に十分な調査や専門家への相談を行なっていなかったことを認めました。

いくつかの背景によって、インドの法律では全市民が政府に情報の開示を要求する権利を持っています。誰かが公的機関から情報を求める申請書を提出した場合、30日以内に回答することが義務付けられています。RBIはSenthi氏の質問に答えましたが、内容に関して詳細は述べませんでした。実際のところ回答のほとんどが「いいえ」「私たちは法律的にそれに答える必要がない」「私たちは十分な情報を持っていないのでわからない」のいずれかでした。RBIの回答の要点は以下の通りです。

・RBIは暗号資産(仮想通貨)に関連するリスクを研究する委員会をつくっていませんでした。重要な決定を下す際には銀行が専門委員会の勧告に基づくのが普通であるが、今回はその例から外れてしまっていた。

・RBIはもし最初に委員会が結成せずに禁止令を下した経緯を説明しませんでした。

・RBIの中に暗号資産(仮想通貨)を研究するために働く専門の公務員はいません。

・RBIは禁止令を下す前に他の国の中央銀行への相談や規制についての調査は行なっていなかった。

・そして特筆すべきは、RBIが禁止令を下す前に独自の調査を十分に行なっていなかったことを認めています。

このように、禁止令が降るまでにRBIが行なった調査は全く不十分で、具体的な研究や協議の内容は発表されていません。

このような態度に申請人は全く満足しておらず、Sethi氏はHard Forkに対して以下のように述べました。

このような大規模の規制は専門家の意見と研究なしでは発行し得ません。私たちはすでに次の段階に進んでおり、既存の銀行規制法を使ってRBIと個別の事件についてそれぞれ訴訟を起こします。これは公の利益に繋がるものであり、有利となるいかなる証拠をも集めている最中です。

Sethi氏はさらに、暗号資産(仮想通貨)に関する情報開示を政府機関に提出したのはこれが最初ではないとも述べています。

我々は以前、2017年10月にインド証券取引委員会(SEBI)、インド中央銀行、法人税務省、財務省、商品・サービス税務部に情報開示申請を提出しましたが、回答の多くは不明瞭で具体性にかけていました。当時は報告を公表することができなかったため、ウェブサイトを立ち上げてより多くのユーザーに調査の結果を共有するためにTwitterで精力的に活動しました。私たちのチームは引き続きこの件に関して調査を行い、政府の認識を理解するために多くの政府機関とコミュニケーションを取っていこうと思っています。


RBIが国内銀行の暗号資産(仮想通貨)取引を禁止した際、インドの暗号資産(仮想通貨)コミュニティーでは狂乱が起こり、複数の訴訟が提起されました。こうした訴訟に関与した弁護士は、今や情報開示請求を使用して中央銀行に対して訴訟ができると述べています。インド最高裁判所の事件を争う一流弁護士の一人であるRashmi Deshpande​氏は、現地の新聞社であるEconomic Timesに対して以下のように語っています。

このRBIの回答はSCの聴問会に先立って我々にとって有意なものになるはずです。私たちが嘆願書を提出したのはRBIが暗号資産(仮想通貨)ビジネスを禁止するのに十分な研究を行なっていなかったからです。

また、インド中央銀行のような姿勢を見せるケースは世界中に多く散見されています。韓国、日本、米国の当局は当初暗号資産(仮想通貨)関連の事業に全面的な禁止措置を取ろうとしましたが、後に完全禁止の代わりに規制をとることで立場を軟化させました。実際、最近の流れはインドが似たような動きの中にあることを示唆しています。五月には禁止ではなく、暗号資産(仮想通貨)取引に対してretrospective taxを導入する元で取引の許可を検討しているという報告があり、今後の動きに注目です。

コインパートナーの見解


​インドの暗号資産(仮想通貨)禁止令に対しては以前から多くの反対意見がありました。今年4月には1万7000人が禁止撤回を求める署名を行っており、今回弁護士集団が情報開示法に基づいて法的に措置の改正を求めることになっています。

現在は禁止令のせいでかえって不正な取引増加される可能性があるほか、最近はブロックチェーン技術に注目した各国が規制という形で暗号資産(仮想通貨)利用を認めようとする動きがあることから、このニュースを発端にインドの暗号資産(仮想通貨)禁止令は緩和される期待があります。